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キミじゃないと言われても  作者: 明瀬 うらび
11/13

9、近くて遠い

「・・・」


頭を下げる諏訪野くんを見て、言葉が出なかった。


なんでこんなに諏訪野くんは私に必死になってくれるんだろう。

友達の好きでも、恋愛の好きって錯覚してしまいそうだ。


諏訪野くんだって、毎回片手で数えられるぐらいの順位のはずだけど、1位を取るのは簡単じゃないはずなのに。


それに一緒に出掛けるのは、私にとって嬉しいことで、チャンスがほしいとか私がお願いされる側じゃなくて、お願いする側でもおかしくないのに。


「・・・やっぱり、駄目?かな」

返事がないことに不安になったのか、頭を下げたまま上目づかいで私を見る諏訪野くん。


「駄目じゃないよ」

本当は毎週出掛けたいけど、それは言わなかった。


今はそんな時期じゃない。

お互いのためにもそんなに会わない方がいい。


もちろん、順位が1位じゃなくても出掛けようって思っていた。

お互い頑張ったねとご褒美に出掛けたい。


だけど、諏訪野くんだけ頑張るのはフェアじゃない。

私も頑張るつもりだ。


「ありがとう。じゃあ、頑張るね」

と笑顔になった諏訪野くんを見て、またときめいてしまった。

私の心臓は、諏訪野くんといるとずっと騒がしい。


*******


3週間後。

そして、期末テストの順位が張り出された。


諏訪野くんは宣言通りに1位を取っていた。

有言実行って格好いいなとしみじみ思いながら、自分の順位を見る。


私の成績はいつも真ん中ぐらいだけど、30位ぐらい上がって真ん中より少し上になった。

諏訪野くんには敵わないけど、過去3年間でもわたしの中で一番いい成績だった。


向こうから、きゃあ~とか、諏訪野くーんと歓声が聞こえる。

諏訪野くんが順位を確認に来たようだった。


「1位だったよ」

「凄いね~」

「やったじゃん」

と次々に声が掛かって、諏訪野くんの周りには沢山の人が集まっていた。


諏訪野くんとは、学校であまり会わないで学校外で会っているから、身近に感じていたけど、人気者なんだなと改めて感じる。

なんだか違う世界の人のように感じてしまった。


そして改めて思う。

諏訪野くんと私は違う世界の人間だなと。


沢山の人に囲まれて、笑顔でいる諏訪野くんは輝いて見える。


私も少しでも早くおめでとうって言いたかったけど、あの人波を掻き分けて声をかける勇気なんてない。

諦めて別に後でもいいかなと、自分のクラスに帰ろうと反対方向に進んだのだった。


お昼休み。


「森尾さん、林川さん、見て見て。俺頑張ったよ」

順位表を持って無邪気に喜びながらやってきた諏訪野くん。


「見たよ~。諏訪野くん頑張ったね。おめでとう。1位なんて凄いね。偉い偉い」

と令華がかわいく諏訪野くんを褒めて、頭を撫でた。


おめでとうも、頑張ったねも、凄いねも、言われちゃった。


この令華の言葉の後になんて言ったらいいか迷って固まった。


令華の言葉と被ちゃったら、言葉が手抜きな感じがして。


違う台詞はないのかなと考えても考えても思い浮かばない。

マジ語彙力低くて凹む。


「・・・。・・・。・・・おめでとう」

結局無難な一言しか言えなかったのに、諏訪野くんはありがとうと笑顔になった。


「その・・・約束のお出かけなんだけどさ、よかったら、学校祭一緒にまわらない?・・・細貝と林川さんももちろん一緒で」


学校祭は2週間後にある。

テストが終わっても、学校祭準備で忙しくなるし、すぐに出掛けるのは難しいかもしれない。


さすが諏訪野くん。色々考えてくれたのかな。


「うん。いいよ」

私は即答した。


少し前の私なら、周りから私と諏訪野くんが似合わないだとか言われるのが怖いし、目立つのが嫌で断っただろう。


不釣り合いなのはわかっているけど、目の前で言われたりしたら流石に凹む。


だけど、今高校3年だから最後の学校祭になる。


前に諏訪野くんが細貝くんと令華と遊園地に出かけるときに令華との思い出が欲しいと言っていた。


今ならその気持ちがよくわかる。

私も諏訪野くんとの思い出が少しでも多く欲しい。


周りからどうみられたっていい。


学校祭は2週間先だけど、今から楽しみで、夜もそのことばかり考えて中々眠れなかった。

























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