1、キミじゃないと言われても
ご覧になって頂きありがとうございます。
この話は短期集中で中編ぐらいの予定です。
初めは2話更新したので、続けてお読み頂ければ幸いです
よくテレビでじゃない方芸人とか言われているのを見る。
芸人はいじられてもおいしいとか思っているのかもしれないけど、現実にそんなこと言われたら辛い。
「キミじゃないんだよね。俺キミの友達が好きなんだ」
じつはこれを言われるのは、初めてではない。
何回か言われている。
でも何回言われても慣れない。
友達は可愛い。
私の自慢の友達だ。
「そうですか。それじゃあ私は帰ります」
ロッカーに入っていた手紙に呼び出され、わざわざ来たのに時間を無駄にしたなと踵をかえした。
別に振られた訳じゃないのに、腹が立って仕方がなかった。
*********
私の名前は森尾美玖。
最近高校3年生になったばかりだ。
「用事は終わった?」
と話しかけてきたのが、さっきのキミじゃないと言われた原因の林川令華。
「うん。待たせてごめんね」
「大丈夫~」
と笑顔の令華。
ぱっちりとした目、ぽてっとした唇に艶のある綺麗なストレートヘア。
顔も仕草も声までかわいい。
私と違って人見知りもしなければ、愛想もいい。誰にでも笑顔ですぐ友達が出来る。
確かに普通の私と令華なら月とスッポン。
私は人見知りが激しいせいか友達も少ないし、どちらかといえば無愛想だ。
わかってはいるけど、常に笑顔になったりできない。
愛想良くうまくやれればいいけど、私には無理だ。
それにしても、あの告白してきた男子は、隣にいる私は目に入らなかったのだろうか?
まあ、キミじゃないと言われてもわかる。
私なんて令華の金魚のフン、引き立て役って思われても仕方ない。
私は『令華じゃない方』そう認識されているんだろう。
キミじゃないは呪いの言葉だ。
さりげなく言っているかもしれないけど、私の心をえぐる。
令華の彼氏は私が高校に入って出来た一番仲がいい男友達の細貝俊哉だ。
「美玖ちゃんか~。俺の妹と同じ名前だ。可愛い名前だよね」
と細貝くんが話しかけてきたのがきっかけで、私と細貝くんは仲良くなった。
最初は人見知りが発動して返事も一言二言だったのに、そんな私を見限ることなく細貝くんは何度も何度も話しかけてくれた。
普通の人は、愛想のない私と話すことを諦めるのに。
気付いたら、仲良くなっていた。
異性でこんなに仲良くなるのは初めてだった。
隣の席だったから休み時間毎に話していた。
話も合うし、これはいい感じかもと思っていたら、彼女が出来たと紹介されたのが令華だった。
勘違いしてうぬぼれていた私の頭を鈍器で殴られたような衝撃だった。
ショックだった。
恥ずかしかった。
悲しかった。
泣きたくなった。
色々な感情がごちゃ混ぜになって、消えたくなった。
でも消えることなんて出来なくて、不思議なものでいつの間にか令華と友達になっていた。
細貝くんと話が合っていたから、細貝くんと付き合っていた令華とも話は合って、すぐに仲良くなった。
令華のことは好き。
細貝くんは今でも一番仲がいい異性の友達。
だけど、男友達の細貝くんに私は選ばれなかったんだなと心にしこりみたいなものは誰にも言ったことはないけど、ずっとあるのだったのだ。