願いごとは
冷たい空気が満ちる季節。
今日は流れ星が見える日。
沢山の流れ星が見えるのは夜遅くになってから。
夜は冷えるから暖かい格好で観ましょうって小学校の先生が言ってたっけ。
厚いコートを着てマフラーをして、毛糸の帽子に耳当てもした。あったかいブーツも履いたし、手袋だってつけた。
これで大丈夫!
私は意気込んでベランダに出て、用意していた椅子に座った。
夜の空気は冷たくて、ちょっと風が吹くと首が縮んじゃう。
でも、いつ流れ星が見えるかわからないから見逃さないようにしなきゃ。
空にはいくつもの星が輝いてる。寒いから雪みたいにキラキラしてる。
でも流れ星はまだ見えない。
まだかなぁ?
お腹に抱えた湯たんぽがぽちゃんと音をたてた。
お母さんが作ってくれたけどちょっと重い。
そういえば、
流れ星に願いごとをすると願いが叶うんだって!
って学校でユミちゃんが言ってたっけ。
もし願いごとをするなら何をお願いしよう?
なかなかいいのが思いつかないなぁ。
考え事をしていたら湯たんぽがまた、ぽちゃんと音をたてた。
じんわりと温かい湯たんぽを抱え直すと、何処かでピカリと何かが光った気がした。
急いで空を見上げると白い光の筋が、一つ、二つ。
流れ星だ!
息を大きく吸い込んで見守っているとまた、一つ、二つ。
光の筋は現れてはすぐに消えてしまう。
それでも流れ星は暗い空に、一つ、二つと途切れることなく現れては消えていく。
すごい!こんなに沢山見えた!
マイちゃんも見えたかな?
そう思った途端、ふわふわした気持ちがしゅんと小さくなった気がした。
本当はマイちゃんと一緒に見たかったな。
マイちゃんとは今日ケンカをしたばかり。
だって、私にはそれが全然良い物に見えなかったから。
でもマイちゃんはそれが良いって言ってケンカになっちゃった。
もうちょっとしっかり、マイちゃんが言ってた物を見れば良かったかな。
お互いに別の物にしたら、どっちも楽しめたのかもしれない。
ケンカをしなければお家が近いから、一緒に流れ星を見られたかもしれないのに…
見上げた暗い夜空には、流れ星が光っては消えていく。
明日、マイちゃんにごめんねって言おう。
酷いこと言ってごめんねって。
そうすれば、仲直りできるかな…
そうだ、流れ星に願いごとしよう!
明日、マイちゃんと仲直りできますように。
輝いては消えていく流れ星が、応援してくれているような気がした。