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異世界に転生したけどもう帰りたい件

作者: カモミール

ふと思い付いたので書きました。

すぐ読めるのショートストーリーなので気が向いたら読んでいただけると嬉しいです。



*この小説はアルファポリスにも掲載しています。



「帰りたい」

それが鴨川大輔の口癖になっていた。


鴨川は神、と呼ばれる存在から

異世界へと召喚された転生者だ。


その時、神からチート能力

“過剰魔力”を授けられた。


名前通り過剰なほどに、異常な量の魔力を

持たされて転生したのだ。


その能力のおかげで、鴨川は何

不自由なくモンスターを倒し、勇者としての

生活を送る事ができていた。


「おう、ダイスケ。今日も大量だな」

「おう、そっちもやるじゃん」

その日の勇者としてのモンスター駆逐数を語り合った。

こんなふうに気軽に話し合える友達も増えた。


「す、すごいですね、ダイスケさん。その今度は一緒について行ってもいいですか」

女の子にこんなふうに誘われたこともあった。


まさに絵にかいたような幸せな異世界ライフ。

羨ましがるものだっているだろう。




なのになぜ帰りたいかって?


まずトイレだ。

この世界は日本と比べての文明レベルは低い。


ウォシュレットはないし、汚い。

毎日トイレをするには、清潔感がないといちいちストレスが溜まる。


ごはんだってお世辞にもおいしいとは言えない。

何よりバリエーションがないのだ。

僕が食べられそうなのはペンネみたいな小麦の食べ物や

べチャッとしたチャーハンのなりそこないみたいな料理。


よくわからない肉。


だが、その質の悪い料理でもましな方なのだ。


他はゲテモノ料理ばかりで、

それくらいしか僕の口に合わず、それらを一日三食の中で回して食べる。

そんな生活にうんざりしていた。



まあ、たしかに生活が僕に合わないことも大きいが、

何より大きいのは帰巣本能というやつだろう。


これまでつらつらと語ってきたが、

そんな不自由な生活でも、冒険や未知の世界にはやはり心が躍る。


だが、結局のところ僕は、

友達や彼女と遊んで、3食美味しいご飯があって、ぐっすりベットで

寝られる元の世界がたまらなく恋しく感じてしまうのだった


そんな日々を送っていたある日。


「魔王を討伐してくれたら元の世界に帰してあげるよ」

神が話しかけてきた。


「本当か?」

「魔王さえいなくなれば世界は平和になるからね」


願ってもない話だ。

早速僕はこれまで異世界で手に入れたすべてを駆使して魔王討伐に向かう。


「ここは任せて先に行け!」

「ダイスケさん。世界の平和を頼みます」

事情を知った冒険者仲間たちが魔王の部下の相手を引き受けてくれる。


異世界の人たちはなんていい人たちなんだ。

助太刀に感謝しつつ進む。


「よくここまでたどり着いたな。勇者よ。褒美に死をくれてやろう」

「悪いな。そっちこそ平和の礎になってもらうぜ」


「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

俺は魔法の爆裂弾を考えなしに投げて投げて投げまくった。


「ふん、やけくそか。くだらん」

魔王は呆れたような顔をして、魔法障壁を展開し爆発をすべて防ぐ。


「かかったな」

「なに!?」

俺は手を休める事なく魔法弾を放ち続ける。

1000、2000、3000…10000と

「こ、こんな、ばかなぁぁぁぁぁぁぁあ。こ、この私が」

魔王も障壁に力を籠め続けるが、

ついに限界がきて魔法の爆弾の餌食となった。

そのまま断末魔と共に魔王は死の淵へと落ちていった。


「これで、帰れる」

異世界での思い出を振り返る。

確かに嫌なこともあったけど、友達もできたし

楽しかったし、成長もできた。


ありがとう。異世界。じゃあな。


そうして、僕、鴨川大輔は現実の世界へと帰ったのだった。






******


「世界中に新型コロナウイルスが蔓延しました。感染者は…」

ウイルス怖い。

「皆さん不要不急の外出は控えてください」

遊べない。

「大輔!今年は受験でしょ。勉強しなさい」

めっちゃ大変やんか!




「あーあ。異世界に帰りたい」





おしまい





読んでいただきありがとうございました。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界には異世界の、現実世界には現実世界の苦労があるんですね。いっそのこと、行き来できたらいいのに、と思ってしまいました。
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