3 アモール
ゴオオオオオッ
俺は冒険者になるために、アントの背中に乗ってスラム街の冒険者ギルドに向かっている。そういえば、スラム街って聞いたけど、街の名前ってなんなんだろう?
「アントー、今俺たちが向かっているスラム街の名前って、なんなんだ?」
「アモールという街だ。」
「へー。」
…………
暇だ。だって何にもすることないんだから。
「なあ、アントー。なんかしてー。」
まあ、アントに言っても無駄だろうけど。
「むー。我は何もできないぞ?」
やっぱりかー。
「でも、ビーストテイマーの事については話せるぞ。」
「じゃあ、話してくれ。」
それからアントはビーストテイマーの事について教えてくれたことは、
魔物をテイムすることができる
テイムした魔物からは攻撃は受けない
テイムした魔物が使える技が使える
テイムした魔物のもつ魔力量が増える
テイムした魔物に命令をすることができる
だった。アントが知っていないだけで、他にも色々できることはあるらしい。
それからは、特に何事もなく、話すこともなかった。
「和馬、アモールについたぞ。」
「ああ、そうだな。」
そこは、俺が思っていたよりも状況が酷かった。家はほとんど無く、外で暮らしている人がほとんどだった。人はそれほど多く無く、見た感じ五十人くらいだ。
「我が前に来た時とは、状況が酷くなっているぞ。まあ、我が前に来た時からは、ずいぶん経っているが……。」
「まじか。まあ、とりあえず冒険者ギルドに行ってみよう。」
それから俺たちは冒険者ギルドに向かって歩いて行った。
「ファ、ファイアンとドラゴン様だ!みんなー!あの英雄、ファイアントドラゴン様が帰ってきて来られたぞ!」
「あの、ファイアンとドラゴン様が⁉︎」
「やったー!ファイアンとドラゴン様バンザーイ!」
みんな、何故かアントを崇めている……。
「アント、お前、なんかみんなから崇められてるな……。」
「ああ、それは、この街が魔物に襲われていたところを我の気まぐれで助けたら、いつのまにか崇められるようになった。」
アント……気まぐれで助けるって……。アントに罪悪感はないのだろうか。そんなどうでもいいことを考えてしまう。
まあ、そんな意外な事実が発覚したが、無事冒険者ギルドについた。
「アント、お前は入れないから外で待ってろ。」
アントを外に待たせてギルドの中に入ると、みんなが目を丸くしてこっちを見ていた。え?俺、なんかしたっけ?こっちを見ているのは気のせいだろうか……?
「あのー、冒険者登録をしたいんだけど……。」
「……あ、そうなんですね。じゃあ、今から手続きをお願いします。」
そう言って渡された紙には、自分の名前、年齢、職業などを書き込む欄があった。
「これでいいか?」
「……はい!和馬さんって、変わった名前ですね。」
「そうなのか?」
「はい。」
どうやら俺の名前は変わった名前らしい。普通の名前だと思うんだけどなぁ。
「これで冒険者登録をは完了です!ギルドカードをお渡ししますね。」
そう言って渡されたのは、白いカードだった。そこには大きくFと書いてあって、名前、年齢、職業などが書いてあった。
「では、説明をしますね。ランクはFからSまであって、依頼を達成したり、試験を受けたりするとランクがあります。依頼はそこに貼ってあるものから受けられます。一度に受けられる量は決まっていません。依頼は薬草採取や魔物討伐があります。依頼を受けるときは、その紙を持ってきて下さい。詳しい内容を説明します。依頼を失敗すると、失敗料が発生してお金を払わないといけません。くれぐれも注意して下さい。何か、質問はありませんか?」
「ない。」
「ではこれで説明は終わりです。これから頑張ってください!」
これを毎回言っているのか……。しかも、スラスラと言っていた……。受付嬢も大変なんだなぁ。それはそれとして、
「なんかさっきから妙に視線を感じるんだが……何か理由を知らないか?」
「はあー。」
なんかため息をつかれた。俺、呆れられてる?
「それは、和馬さんがあの英雄、ファイアンとドラゴン様を連れているからじゃないですか。しかも、命令までしてるし……。はあー。」
あー。なるほどね。そりゃあみんな見てくるわけだ。まあそれはおいといて、まずは依頼を受けよう!えーと、ワイバーンの討伐……魔物大量発生の原因調査……。どれも難しいやつばっかりじゃね?あ、そういえば、受付嬢が薬草採取があるって言ってたよな?えーと……あ、あった!内容は、アモール草原にある薬草採取。よし、これにしよう!
「この依頼を受けたいんだが……。」
「はい。これは、薬草採取ですね。では、詳しい内容を説明します。アモール草原にある薬草を、なんでもいいので取ってきてください。制限はありません。報酬は、百グラムで一銀貨です。でも、種類によっては異なることがあります。」
一銀貨?聞いたことないな……。
「一銀貨って、どのくらいなんだ?田舎から出てきたから、あんまり知らないんだ。」
まあ、これは嘘なんだけどな。転生したって言ったら、絶対怪しまれるしな。
「そうなんですか。まあ、田舎はお金を使わないですしね。一銀貨あれば、串を一本変えるぐらいですかねー?」
じゃあ、一銀貨は日本円で百円ぐらいかな?
「ついでに他のも紹介しますね。銅貨は百枚で一銀貨になります。金貨は銀貨百枚分です。白銀貨は金貨十枚分です。」
えーと……つまり、銅貨は十円で、金貨は千円で、白銀貨は一万円かな?
「分かった。ありがとう。」
「では、薬草採取、頑張ってください。」
これから、俺の冒険者生活が始まる!