表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/18

17 2人の過去

「私たちは邪魔なようなので、どこかへ行きますね。」

 お母さんらしき人が歩きながら言った。

「あっ!待ってください!……えーっと……。」

まずい……。引き止めたのはいいけど、次に言う言葉が思い浮かばない……。

「あの……ここは寒いですし、私たちが泊まっている宿であったまりませんか?お菓子も用意しますよ?……いい?和馬さん……。」

ルル、ナイス!俺の言いたい事を全部言ってくれた!

「もちろんいいよ。俺も同じ事を言おうと思ってたし。」

「えっ、でも……。」

お母さんらしき人は、どうやら乗り気じゃないらしい。

「お姉ちゃん、お菓子あるの?」

「うん、あるよ。」

「やったー!お母さん、行っていい?」

あっ、やっぱりお母さんだった。

「うーん……。じゃあ、すみません、お邪魔させていただきます。」

「はい!では、早速行来ましょうか。」

 

 「そう言えば、お二人ってなんで路上で生活しているんですか?」

 ……あっ!これは聞いちゃダメだったかも……。

「やっぱり、なんでもな——。」

「いいですよ。あと、敬語じゃなくてもいいですか?和馬さん?も、敬語じゃなくても。」

「じゃあ、タメ口で。」

実は俺も敬語って話しにくいなって思ってたんだよなー。こっちに来てからは、ずっとタメ口だったし……。

「それで、なぜ私たちが路上で生活しているかと言うと……。」

今更だけど、本当に聞いていいんだろうか……。

「私たちは、元々は、ちゃんと家で暮らしていた。そのときは、幸せだった。でも、ある日、夫が多額の借金を抱えて帰ってきた。しかも、仕事をやめて……。」

酷い人だな……。多額の借金を抱えて帰って来るだけではなく、仕事をやめて帰ってくるなんて……。

「それから夫は、家で私に暴力を振るってきた。」

え?

「そのときは、まだ良かった。でも、それはだんだんエスカレートしていって、ついには娘にまて暴力を振るうようになった。」

そこまで聞いた時、猛烈な怒りが込み上げてきた。

「それが耐えられなくなった私たちは、家をでた。どこか暮らせそうな所を探していたら、ここに着いた。」

「ありがとう、話してくれて……。辛かったのに……。」

「いいんですよ。もう昔の事ですし……。」

本人はそう言ってはいるけど、俺には、まだ引きずっているような気がした。気のせいかなぁ。気のせいだったら良いんだけど……。

 俺はその事がずっと気になった。

 

       ◆   ◆   ◆


 ふふって、なんだか笑みがこぼれちゃいそう……。

 私は、それをずっと我慢していた。

 だって、好きな人が、「自分といる時間は少しだったけど、楽しかった」ってだけで私を連れ戻そうとするなんて……。

「お姉ちゃん、あの男の人、好きなの?」

女の子がコソッと聞いてきた。

え?そうな風に見えるのかなぁ。

「うん、そうだよ。」

「やっぱり!ノアもお母さんも、そう思ってたんだ!」

そうなんだ……。っていうか、この子ってノアっていうんだ。

「あっ、ちなみに、私はルルだよ。ノアって呼んでいいかな?私の事もルルって呼んで。」

「うん!ルルお姉ちゃん!」

ノアは笑顔で言った。

可愛い!守ってあげたい!

 私はつい、抱きしめそうになった。

 あっ!ダメダメ。急に抱きしめたら。……そういえば、前一緒に暮らしてた子たちは、よく抱きしめてたなぁ。……あの子たち、今はどうしているんだろう……。また、会いたいな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ