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隣にいるのは、君がいい。  作者: ゆめおい しん
第1章 日常から
3/5

親しき友

「はるちゃーん!やった!また同じクラスー!」

教室に向かう最中、晴の背中に飛びついてきたのは『武石たけいし かえで』だ。同じテニス部所属であり、通称は『かっつん』。

「今年もよろしく〜、かっつん」

「俺だけじゃないよ〜。さとっちも一緒!」

楓を背負ったまま晴が振り返ると、そこには『峰山みねやま さとる』の姿があった。通称は『さとっち』。

「部活も同じだし、3年間同じクラスって縁感じる!」

「……かっつん…首…ぐるじぃ…」

嬉しそうに笑う楓の腕がグッと首元に入り、苦しそうな声で晴は離れるように促した。

「あ、ごめんごめん。つい嬉しくて」

「楓は新学期早々落ち着きなさすぎ」

「さとっちが異常なんだって!どんな時も冷静!」

「まぁまぁ2人とも、早く荷物教室に置いて体育館行こ。始業式始まるし」

朝から忙しない会話は1年の頃と変わらず。親しき友と再び同じクラスになれたことに喜びを感じた。


「そういえば、空ちゃんも同じクラスだったよね。教室まで別行動なの? いつも一緒に登校してるのに。」

「空はクラスが離れた友達と今も掲示板の前で話してるよ。」

(一緒にいた坂木も謎にその場に残って女子と楽しそうに話してたけど…)

前のクラスの友人とは前のクラスの友人ならではの絡み、付き合いがある。それを察した晴は静かに1人で歩いていたところに楓のバックハグに襲われた。

「晴、良かったね。島崎さんと教室でも一緒で」

「この勢いで告っちゃう?」

「……俺のヘタレさ知っててそれ言う? っていうか、2人はどうなのさ? 好きな人とか…」

横目で隣にいる2人の方向をチラ見する。思春期真っ只中、青春真っ盛りな男子高校生。恋の一つや二つ、楓や悟も経験しているだろうと予想した晴は問いかけた。

「俺、あんまり恋とかわからないんだよね」

「さとっちの色恋沙汰、一切話聞かないから薄々感じてた」

「モテなくはないのに変なの〜」

ケタケタ陽気な笑みを浮かべ、楓は教室の建て付けの悪いドアを開ける。

「そう言う…かっつんは?」

「あー、えっとー…」

「?」

「ナイショ」

「えー!ケチー!」

「ミステリアスな男ってかっこよくない?」

いつもこんなテンションでこの手の話は避けられてきた。それなのにも関わらず…

「はるちゃん、昨日も空ちゃんと一緒に寝たの?」

予想の斜め上から射撃された気分に陥る話題。

「いや、寝てないし!この年頃の男女が幼馴染とは言え一緒に寝るわけないの知ってて訊いてる?」

「島崎さんがこの前、晴の寝顔は幼くて可愛いって部活の休憩時間に言ってたからてっきり添い寝してるもんかと」

「え…ちょ…待って…。なにそれ…恥ずいんだけど…」

「ふっ!はるちゃん乙女〜!」

「晴って中世的な顔立ちだから、そういう乙女キャラで推すのもありかもね」

「いや!男だし!!」

やんややんや、わいわい、ぎゃーぎゃー。

朝から元気な声が教室に響く。

弄られることが多い晴だが、退屈しなそうなこれからの学校生活に期待が渦巻いていた。



『只今より、陸里高校1学期始業式を…』


体育館に全校生徒が集まり、始まったのは新年度の幕開けを告げる式だった。欠伸が止まらずに出てしまう何とも面倒な時間。話す内容が長ければ、座っている晴の腰や尻が硬い床との相性の悪さに痛くなってくる。

(早く終わらないかなぁ)

欠伸のしすぎで涙が目尻に溜まると同時に、隣から見知った顔の女子が話しかけてきた。

「晴くん、寝不足? すごく眠そう」

「つまんないだけだよー。」

同じ中学出身、空の大親友『井上いのうえ 玲奈れいな』は前を見つつ、晴と会話を交わす。ザ・優等生、学級委員長という言葉がとても似合う彼女の姿勢の良さを感心しながらも、気怠げに更に大きな欠伸を重ねた。

「そっかぁ」

「うん」

短い会話は退屈凌ぎになる。だが、これ以上言葉のキャッチボールを続ければ新年度早々担任に叱られると思った晴は黙ったまま考え事を始めた。

(空と同じクラスは嬉しいけど…坂木もかぁ…)

「………」

(坂木、朝倉も好きな人と同じクラスだといいねぇ的なこと言って………空にめちゃくちゃ追求されるし…)

静かに一人項垂れた。

「空のこと考えてる?」

「っ! なっ…いや…」

「晴くんって本当にわかりやすい」

クスクスと笑みを溢す玲奈の表情を直視したまま、人差し指で頬を掻く。

(玲奈には敵わないなぁ…)

彼女は千里眼を持っているのではないか。などと有り得ないことを想像しては消し去るのを繰り返す。それほど玲奈の察し能力や気遣いは優れていた。

「玲奈って本当、お母さんみたい」

「え?」

「中学の時から俺と空のこと気遣ってばっか」

「余計なお世話だった?」

「ううん。そういう優しいところ好き。」

「…っ……晴くんって天然たらし? …それは空に言いなよ…」

「そんな勇気が湧けばいいのにね…」

玲奈とのコソコソ話は周囲にバレることなく時間は過ぎる。

気づけば始業式は終わっていた。

〜ここまでの登場人物②〜


武石 楓

テニス部2年。元気が取り柄のやんちゃ男。晴、悟と1年生の頃同じクラス。


峰山 悟

テニス部2年。冷静。あまり表情を面に出さないが優しい性格。


井上 玲奈

写真部2年。母親のような包容力を持つ空の大親友。晴と空とは中学からの仲。



〜どうでもいい作者の独り言〜

『楓』を間違えて『替え玉』、『悟』を間違えて『サドル』と打ってしまうことが多々あります(笑)


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