第7話 ラスカル
今日も、宜しくお願いします。
「とりあえず馬の件は仕方がないので諦めるとして、何か代替えの乗り物は無いのか? 」
するとアリスが、
「ロバが一頭いますが 」
「ロバか? 」
「はい。ロバです 」
「何だか、情けない気もするがこの場は致し方ないか? 」
アリスの表情が険しくなり、
「今、ロバを馬鹿にしましね! 私の愛ロバの【ラスカル】を・・・ 」
今度の地雷はそこですか?
「いや、そんな事はない。そうだ! 【ラスカル】なら優秀だし馬より良いと思うぞ! 荷物も運べるだろう」
そーと、アリスの顔を覗き込むが、
「嘘ばっかり。一回も見たこともないくせに! 2年ぐらい前に、引き取ったロバですよ。なぜ、優秀だと判るのです。可笑しくないですか? 」
はやりばれるか。アリスのやつ、俺が居ない間に、知恵を付けやがったな!
ここは、笑って誤魔化すしかない。
「そんな事は決してないぞ! 」
「また、適当な事を言って誤魔化す気ですね! 」
やばい。アリスに心を読まれるとは、何たる不覚。
「ま、魔王様は何も考えていらっしゃらないようなので、これぐらいで許して上げますが、今後【ラスカル】を馬鹿にした場合には、許しませんからね! 」
「はい。判りました。今後は【ラスカル】を大事に致します」
「判れば、よろしい」
アリスがドヤ顔をしている。ま、これも致し方ないか。
「では、とりあえず出発の準備をする事にしよう。出発は明日の朝とする。アリスとゴブリン達は、食料の準備を頼む。あと、アリスはエルサの面倒も見てやってくれ! 」
「やです。何で私が見なくてはならないのですか? 」
「じゃ。俺が見ていいのか? 貧乳だが、女だぞ! 」
「そう言うわけでは・・・ 」
「良いのだな! 」
すると、
「私と魔王が一緒とか有り得ません! ここは、アリスさんだけが頼りなんです。どうか一緒に、お願いします 」
エルサがアリスに頭を深々と下げ、お願いしている。俺には、したことのない美しいお辞儀だ。これはこれで、腹立だしいのだが。なんとなく、アリスに渡すのがしゃくになってきた。
「大丈夫だ。貧乳に手出しはしない。逆らえば罰として全裸だし、俺と一緒で良いんじゃないか? 」
するとアリスが、期待とは裏腹に、
「そうですね。魔王と一緒で良いんじゃないですか? 」
えー。そのリアクションは求めていないのですが・・・ すると、
「アリスさんが駄目とおっしゃられるのであれば、致し方有りません。魔王様、申し訳ありませんが一緒の部屋でお願いします。さあ、行きましょう」
と言うと、アリスに向かってエルサが笑みを浮かべる。
それを見た、アリスが焦り出し、
「いや、エルサは私が見よう! 」
と言い出したが、
「いえ、アリスさんにご迷惑を掛けては申し訳有りません。私が魔王様と一緒に寝ます」
「い、い、一緒に寝るだと! 」
アリスが、怒り出した。
「アリスさんと一緒にいた方が良かったのですが、嫌だとおっしゃられるのであれば、致し方有りませんよね! さあ、魔王様、行きましょう! 」
エルサが俺の手を取る。
それを見たアリスが、激昂する。
「エルサ! 魔王様から、その汚い手を放しなさい! さもないと、ミンチにして殺るぞ! 」
今にも襲い掛かりそうだ。いや、エルサに向かって一直線に襲い掛かって来た。すかさず割って入るが、
「アリス、落ち着け。だから、エルサを頼むと言ったじゃないか? 」
「いや、そんな事はもう、どうでも良い。今、始末する。すぐ、始末する! 」
「あら、やだ、みっともない! 焼き餅かしら? 」
エルサがアリスに向かって、ニヤリと笑う。やめろー!煽ってどうする。
「殺す! 殺す! 今、殺す! 」
収集が付かなくなるじゃないか?
「早く、お部屋に参りましょう! 」
エルサはアリスをからかっている。楽しそうだ。また、アリスは反応し過ぎである。さて、どうしたら良いものか? 魔術書に記載された内容の確認も出来ていない内は、エルサを始末されても困る。もう、エルサをアリスに預けるのは難しいだろう。かと言って、俺様が連れて行けばもっと面倒になる。
「魔王様、早く! 」
何としても、エルサを黙らせなければ! 致し方ないが、
「判った。エルサは、ゴブリンに預けるとしよう! 」
すると、
「ちょっと、待って下さい。なぜ、ゴブリンなんですか? 」
「心当たりが有るのではないか? 」
エルサが黙り込む。ま、自覚は有るようだ。
「アリス! それでいいな!」
アリスも、驚いたらしく、
「魔王様が、それで良ろしければ・・・ 」
「魔王様、どうか、それだけはご勘弁願えませんでしょうか? 」
エルサが、懇願してくる。しかし、もう許す訳には行かない。
「駄目だ。アリスを煽ってしまった以上、俺様はお前と一緒の部屋で過ごす事は出来ない。何故なら、俺様が殺されるからだ。さらに、アリスと一緒になれば、今度はお前が殺されかねない。どちらにしても、選択の余地はない。残念だ! 」
突き放すが、
「ゴブリンだけは、何とかなりませんか? 」
こちらとしても何とかしてやりたいのだが、無理なものは無理。最悪の事態だけは、避けなければならない。
「駄目だ。もう決めたことだ。ゴブリン達には変なことをしないよう言い聞かせておこう。あと、逃げようと思うなよ。逆らえば、全裸だからな! ま、ゴブリンには丁度良いかもしれないがな! 」
すると、エルサも観念したのか、大人しくなった。
何はともあれ、明日の出発に向けて、各人が準備を始ることとなった。
読んで頂き、ありがとうございます。
タイトルが、迷走中です(^_^;)
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