第5話 魔王の服装
昨日は、台風で大変でしたね。少し、サボってしまいましたが、宜しくお願いします。
ゴブリンに呼ばれた食堂には、心配とは裏腹に豪華な料理がテーブルを埋め尽くすように並んでいる。そこには、野菜や果物から厚切りの肉まで用意されている。さらに、その肉からは溢れんばかりの肉汁が、所狭しと皿全体を占領している。そこから漂う香りは、食堂全体を包み訪れた者の食欲を駆り立ててくれる。
席に付き、エルサを隣に座らせ食事を始める。この料理は見た目のみならず、味も期待以上である。さらに、驚かされたのが、淡白なのにジューシーな肉である。厚切りなのに、何枚でも食べれそうだ。エルサも、黙々と肉を食べている。ナイフとホークの作法はしっかりと身に付けられている。育ちは良いのだろう。
ひと通り食事を終え、キングゴブリンと名乗っていたゴブリンが、食後のコーヒーを持って来た。
「なかなかの料理であるが、誰が作っているのか? お前ら、ゴブリンではなかろう? 」
「はい。そちらの料理は、エルフに作らせております 」
「エルフか? そのエルフは、お前らの奴隷か何かか? 」
すると、キングゴブリンが悩み、
「いえ、奴隷などではなく我らと意気投合した仲間です。たぶん・・・ 」
なんとも歯切れの悪い答えだが、嘘では無いようだ。しかし、これからの旅の事を考えると、料理人も必要となるだろう。ここに残して措くには惜しい人材だ。だが、エルフとなると何か遭ったような気がするが・・・
「取り敢えず、そのエルフを連れて来てくれ! 」
すると、キングゴブリンが渋い顔をし、
「エルフに、お会いになりますか? あまり、お進め致しませんが? 」
何故そこまで合わせたくないのだ? ますます、会ってみたくなるではないか。
「構わん。連れて来い! 」
「承知致しました 」
キングゴブリンが下がり、部屋から出て行った。エルサは食後のコーヒーを美味しそうに飲んでいる。
「エルサ! 食事はどうだった? 美味しかったとは、思わないか? 」
「・・・ 」
黙っている。ま、しばらくは仕方は無いが、こうも露骨に態度で示されると、今後の旅に支障が出ないとも限らん。
「とにかく今日は遅くなったので、明日にでも引退後の旅に出ようと思うのだが? 」
アリスがこちらを向き、面倒臭そうに、
「私には関係ありません。勝手になさったらいかがでしょう? 」
ピク!! ここは、辛抱! 辛抱! 大人の対応だ。
「勝手にさせてもらうとして、あの魔術書は何処で手に入れた物だ? 」
まずは、魔術書の出所を確認しなくてはいけない。
「あの魔術書でしたら、【国境の町パルム】の術商人から買い求めた品物です。かなり値が張る魔術書では有りましたが、結果は何ともしがたく、どうしようもない品物でしたが...... 」
エルサが、不満そうな顔をしている。
「そうか【国境の町パルム】か? 旅に出るなら好都合かもしれない。いろんな情報も【国境の町パルム】なら集められるだろう。それに、魔術書に記載されていた内容も気になる処ではあるし、まずは、【国境の町パルム】向かうのは最善の選択かもしれない 」
それを聞き、エルサが悩む。確かに【国境の町パルム】でありば、人間界にも近い。それはそれで好都合かもしれない。納得したのか、
「【国境の町パルム】ですか? 確かに、種族間の交流も多いいですし、この状況を把握するには最適な場所では有るのは間違い無いと思います。それに、魔術書も気になりますし・・・ 取り敢えずは、【国境の町パルム】を目指すとして、その後の目的地とか有るのですか? 」
少し悩むが、
「今のところは何もないが、行ってみたい場所としては、人間界には行ってみたいと思っている。幸いな事に俺様は人型に近いので、そんなに問題は無いと思う 」
するとエルサが俺様を上から下までなめるように目線を動かし、苦笑しながら、
「確かに、見た目では解りませんが、その装いでは何とも・・・ 」
エルサが困った顔をしている。魔王の見た目は、薄い紫の髪に青い目は鋭く、顔立ちは整っている。体系は、筋肉質ではなく背の高いすらりとした美男子である。とても、500歳を越えているようには見えず、普通の人から見れば20歳前後にしか見えない。だが、服装だけが、かなりヤバい。上から下までフリフリが付いていてダサく、さらに、肩に何の角かも分からない得体のしれない物が取り付けられている。まずは、服装さえどうにかなれば、元々美男子なので問題のない筈なのだが・・・
「この装いに、不満が有ると言っているのか? 俺様は、最高のファンションセンスの持ち主だぞ! これまで一度だって、この装いにケチを付けた奴など、誰もいない」
そりゃ! 魔王にケチを付けるなど、命知らずも良いところだからでしょうが!
「特にこのユニコーンの角とかは超カッコイイだろう。ま、人間には所詮理解できないだろうがな。何があろうと、このままの装いで旅に出るつもりだ! 」
聞いているだけで頭が痛い。こいつは、何処から来る自信なのかは解らないが、どうにかしなければならないと、エルサは真剣に考え始めた。とにかく、その装いで一緒に歩かれるのは、まっぴら御免だ。こちらが恥ずかしくなって死んでしまう。確実に貴様のセンスは最高で無く最悪だ。何か良い手立ては無いものだろうか。最悪の場合には、最高だと思い込んでいるそのユニコーンの角をもぎ取って、頭に刺してやりたい。
腕組みをし、思案をしてみる。
ただ、人間界に行きたいので有れば、それは好都合だ。人間界に行けば、そこで息の根を止める事が出来る。そうすれば、こんなバカともおさらばだ。
そこまでは、辛抱! 辛抱! 拳を握り絞める。
「ただ、周りとのセンスの違いに、魔王と気づかれてしまいますよ。それでも、よろしいのですか? 」
魔王が、少し考えているが、
「大丈夫じゃないか? 時間も経っていることだし 」
目立つんだよ。早く気付けよ!
「いやいや、無理が有ると思いますよ・・・ 」
どうだったでょうか? 楽しく読んで頂けたらと思います。
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