第24話 鍛冶屋の女
お久しぶりです。何となく、中途半端だったので、切りの良いところまで続けようと思います。
楽しく読んで頂けたら幸いです。
マヤ魔術書店を後にし、パルムの町で宿屋を探しながら歩いている。
「ジャン! 何やら二人組に付けられてます」
アリスが小声で、話し掛けて来る。
「あぁ、気付いている。二人組の他にもう一人いる。二人組の右後ろだ! 」
アリスが集中している。
「確かに、黒服を着た奴が一人いますね。先日の奴らですかね? 」
「それも考えられるが、町中で襲って来ることも無かろう。取り敢えず、宿を探すのが先だ」
しばらく行くと、新綺麗な宿を発見する。アリスとエルサが良さそうだと言うので、宿に飛び込むと、
「いらっしゃいませ・・・ 」
そこには見慣れた男が、宿の支配人として立っている。そう、ガビルだ!
「なぜ? ここにいるのだ? 」
ガビルが驚いている。それは、こちらとしても同じだ。
「ガビルこそ、何故ここにいるのだ? 」
すると、ガビルは自慢げな顔をして、
「本日は、国境の町パルムに一号店を開店いたしました。そして、アリスが第一号のお客様です」
ガビルは、何故か嬉しそうではあるが、
「取り敢えず、他の宿を探そう。ガビル、お騒がせしたな! 」
宿を出ようとする。するとガビルが、
「本日は、開店祝いを行います。最初の一組目は、お祝いとして宿泊費が無料となります。さらに今夜は、世界各国より取り揃えた料理が用意されますが、それでも他の宿になさいますか? 」
アリスとエルサの目の色が変わる。そう、無料の言葉に女性陣が喰らい付く。
「ジャン様! 宿泊費が無料のうえに、世界各国の豪華料理が食べられるなど、もはや、断る理由が見当たりません」
アリスが熱い眼差しで見詰めてくる。エルサも同様に、
「こんなチャンスは滅多に有りません。今夜は、こちらの宿に致しましょう」
こいつ等、タダより高いものは無いと知らないのか? それに、この旅を始めて以来、貴様らは、お金を払ったこと無いだろうが・・・ 無料で無くても、ガビル直営以外の宿に泊まってみたいとは思わないのか?
「それでは、アリス。今夜は、こちらでよろしいですね」
「そうね! 宿泊することにするわ! ガビル。後はよろしくね」
もはや、俺様に決定権などは無い。アリスに頼まれたガビルは、嬉しそうだ。ま、金の問題ではないが致し方あるまい。
「ところで、ガビル。町に着いてから後を付けられているようだ」
「ジャンなら問題なく処分出来たのではないか? 」
「それはそうなのだが、複数の相手に追われている。逃げられても困るので、取り敢えず、相手の出方を見て見ようと思う。それと、ガビル! お前は、俺様の闇の部下だということを忘れるなよ! あと、呼ぶ時は、様を付けろ! 」
ガビルが渋い顔をする。
「ジャン様! 承知致しました。宿の外の監視をしておきます」
分れば良いのだ。
「よろしく、頼む! 」
部屋を二部屋借り、ハルとエルサを残し鍛冶屋へと向かう。鍛練用の剣を戦闘用の剣に変更するためである。取り敢えず、町一番の鍛冶屋を訪ねる。
「この剣を、鍛えて欲しいのだが」
持っていた剣を差し出す。職人が剣を吟味している。
「この剣は鍛えるまでも無く、名刀だ。ここでは、これ以上鍛えることは出来ない」
この剣が名刀なのは百も承知しているのだが、魔剣が使えない以上は、この剣を鍛えねば、強敵と戦うことは出来ない。問題なのは、強度が足りない。全力で戦えば一発で折れてしまいそうだ。仕方なく外に出ようとすると、鍛冶屋の奥から爺さんが声を掛けてきた。
「ほう? 珍しいな。これほどの名刀をさらに鍛えるとな。本気か? 」
爺さんがまじまじと剣を眺めている。
「そうだ。200年は鍛えていないし、訳有ってどうしても鍛えねばならなくなったのだ」
すると爺さんが、
「ここでは、息子が言ったように鍛えることは出来ぬ。儂にも無理じゃ。じゃが、町外れのスミスなら可能かもしれん。ただし、変り者なので余りおすすめはせんがのう! 」
鍛冶屋の爺さんに場所を聞き、町外れのスミスの鍛冶屋に行く。先程の繁盛店とは違い、ボロだ。魔術書店と何ら変わらない。今日は、ボロの店に縁が有るのかなどと考えつつ店に入る。
「何しに来た? 」
カウンターには、鍛冶屋にはにつかない可愛い女性がいる。
「これを、鍛えて欲しいのだが? 」
女性に剣を差し出す。すると、透き通るような白い腕で持ち上げ吟味している。
「この剣を鍛えるのか? これで、十分だろう。かなりの名刀だ。強度、切れ味、研き具合も申し分ない。これ以上に何を求める? 」
「強度が足りない。今の三倍は強度が欲しい」
鍛冶屋の女性がジャンの剣を再度吟味し、
「それは、無理だ。どんなに鍛えてもこの剣は、今の二倍の強度が限界だ。それに、この剣でも十分戦えるだろう? 」
「いや、練習用としては良いが、戦闘用としてはもの足りない」
すると女性が何を思い付いたのか、
「なら、あそこに立て掛けてある剣を、持って来た剣で切り抜いてみな。多分、どちらも折れることはない。もし折れなければ、そこにいる巨乳の姉ちゃんを一晩置いて行け! どうだ? やるか? 」
おいおい、お前さんは女性だろ? いきなりアリスをどうする気だ? だが、
「あら、何だか分からないけど、賭けの対象になってる。何だか、ドキドキしちゃう! 」
アリスが一人で盛り上がっている。
面倒な事にならなければ良いが・・・ 俺が困ってもしょうがないが、少しは自分の立場も真剣に考えて欲しい。
「チャンスは二回! どうだ? やるか? 」
「仕方ない。やるとしよう。ただし、折れてしまった場合はどうするのだ? 」
「心配するな。替わりのご希望の剣を出してやる」
「良いのだな? 」
「問題無い」
交渉成立だ。持って来た剣を構える事なく、立て掛けてある剣を片手で切り抜く。すると、ジャンの振り抜いた剣が、簡単に折れてしまった。それを見ていた女性が、
「なるほど。一撃とは、恐れいる。これほどの男は、そうそういないだろう。どうだ? この私、エマと結婚しないか? 」
いきなり、何を言い出すのだ! アリスも驚いているが、俺様も驚いている。
「冗談にも程がある。何はともあれ、約束通り折れてしまった。替わりの剣を戴きたい」
アリスが鍛冶屋のエマを睨んでいる。ここは、穏便にお願いしたいのだが。エマがカウンターから出てくる。近寄って来るが、アリスが割って入る。
「邪魔だ。お前には用はない」
「ジャンに近寄るな! 」
アリスが退こうとしない。するとエマは、アリスの巨乳をいきなり鷲掴みする。不意を突かれたアリスの動きが止まり、
「揉み後妙のある巨乳だ! 」
と言い、エマはアリスの巨乳を、さらに激しく揉んでいる。なかなかの絵面だ。しばらく、その光景を脳裏に焼き付ける。が、時間の止まったアリスが我に返り、鍛冶屋の女性を突飛ばし、持っていた剣を抜く。
「貴様! 女と思い油断した。私の・・・を揉むなど言語道断、今ここで切り刻んでやる。自分の行った行為を反省しつつ死ね! 」
おいおい。穏やかでないこと。もう少し、見ていたかったのだが、止めに入らなければ、エマが殺されかねない。しかし、
「待て! その剣を見せてくれ! 」
エマが、慌て出す。
「巨乳を揉んだ件は謝る。すまなかった。なので、その剣を見せてくれ! 」
どういう訳か、アリスの剣に興味津々のようだ。しかし、アリスが警戒している。
「頼む。一生のお願いだ! 」
エマが頭を深々と下げ、アリスにお願いをしている。ま、それで事が収まるのなら、
「アリス! エマに貸してやれ! 」
「でも? 」
やはり、警戒しているようである。しかし、エマは頭を下げたまま動かない。
読んで頂き、ありがとうございます。しばらく、冷却期間が必要でした。続けて読んで頂いていた方には、申し訳ありません。
切りの良いところまで、宜しくお願いします。