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第22話 ギルドカード

 本日、2話目です。厳しい評価になりそうですが、宜しくお願いします。

 宿のチェックアウトを済ませ、ラスカルに体調の悪いアリスを載せて出発の準備をしていると、


「ジャン様! 」


 マリーが抱き着いて来た。


「どうした? これから出発か? 」


「はい! ダリの町に戻ります。昨夜の件も兄に報告しなければなりませんし」


「そうか、よろしく頼む」


「ここから先は、マリエル国の領地ではなくなりますので、しばらくお会いできませんが、くれぐれも浮気などなさいませんように! 」


 おいおい、何を言っている。


「ただの、旅だ。何を考えている・・・ 」


「まいいわ! それより、おばさまはどうなされたのですか? 」


 ラスカルの上でぐったりしているアリスがマリーを睨み付け、倒れた。


「そろそろ行きますね! 気負付けて下さいね! 」


 言うと、ぎゅっと抱きしめて来てマリーが頬にキスをした。エルサはこの光景をみて、驚いているが、幸いなことにアリスは気付いていない。


「ジャン様! ダリで待ってます! 」


 名残惜しいが、マリーが先に出発した。


 そして少し遅れて、出発する。すると、集落の外れでサラが待っていた。


「ジャンさん。この度は、ありがとうございました。強い方を探す必要は、もうなさそうですね。なにせ強い方は、目の前に居ます。これから、私も頑張って見ようと思います。今度はマリエル軍と集落の皆で、撃退します。それでも駄目だった時は、助けに来て下さいね! 」


「あぁ! 今のサラなら大丈夫だろう。何か有れば、直ぐにでも飛んで来よう! 」


 すると、


「サラさんでしたっけ? 何が《直ぐにでも飛んで来る》ですか? 格好を付けてもジャンは飛べないから、期待しない方が良いですよ」


 ラスカルの上で倒れているアリスが絡んで来る。


「いえいえ、お気持ちだけでも嬉しいです。ただ、必ず近くに来たら立ち寄って下さいね。お待ちしています! 」


 と言いサラが抱き付いて来た。本日、2度目である。そして、又もや頬にキスをされる。が、今度はアリスが見ている。


「必ず、戻って来て下さいね! 」


 とサラが言い見えなくなるまで手を振っていた。


 しばらくして、


「若い子にキスされて、デレデレしちゃって最悪ね! 」


 アリスが嫌味を言って来る。


「そうだなぁ? 惜しかったなぁ? 」


「そうですね! 今日は何回目でしたっけ? 」


 エルサが絡んでくる。サラの件はともかくマリーの件は不味い。


「いやー。天気がいいなぁ? 今日も旅日和だなぁ! 」


「誤魔化そうとしているな! だが、昨夜の件もあるのだろう。今回は大目に見てやる! 」


 体調が悪いからなのか、今日はやけにおとなしい。


「ジャン! 良かったじゃないですか? マリーの件も許してもらって・・・ 」


 エルサが余計な事を言う。


「マリー! 何だそれは? 」


 アリスがこちらを睨む。


「何も無いよなぁ? エルサ! 」


「そうでしたっけ? 」


「何もない! 」


 アリスが怪しそうな顔をしている。


「そうですね! 何もなっかたですね! 」


エルサがそれを言うと近くに寄ってくる。


「貸し、一つ! 」


 と囁いた。下僕がご主人様に貸し一つとは、おかしくねぇ? ま、何にしても平和が一番。国境の町パルムを目指す。


 二日後、国境の町パルムの入口の前に立っていた。この世界は魔族と人間によって、それぞれ治められている。お互いの国と国との間には、パルム山脈があり、この山脈によってお互いの国が隔てられている。その山脈は、飛竜をもってしても越えられない霊峰である。だが、唯一の交通路としてナグラス渓谷街道が山脈を貫いている。魔王討伐の際にも、勇者が通った街道である。


 その街道の中間地点に魔族と人間が共存する中核都市【国境の町パルム】がある。その中心には、人間のみなず、魔族も崇拝するルナ神殿がある。そして毎日のように世界中から多くの信者がルナ神殿の巡礼に訪れている。その信者数は、この世界の半分を超えると言われている。そのルナ神殿の脇には、ルナ教会総本部があり、世界中の情報がもたらされている。そのため、この都市の表の顔は平和を装い、裏では常に黒い噂が絶えない。また、この【国境の町パルム】は、人間及び魔族のどちらにも属さない中立の町である。過去には、支配しようとした国家が信者によって滅ぼされた事があった。それ以来、この町は中立の町として存在している。

 また、ルナ教会運営のギルド本部もある。このギルド本部には、全世界のクエストが紹介されており、併設されている酒場は冒険者の溜まり場となっている。


「何とか、ここまで来ましたね! 」


 エルサが嬉しそうだ。それもそのはず、この国境を越えれば人間界だ。気持ちは分からいでもない。


「意外と遠かったですね? 」


 アリスは疲れたようだ。長い間、旧魔王城から外に出ていなかったのだから、仕方ないだろう。


「しかし、これだけの大きな町なのに、警備が薄いですね? 町の衛兵も入口に二人した立ってい。おまけに、町にはスルーで入れます。町の治安は、大丈夫なのかしら? 」


 アリスが不思議そうな顔をしている。するとエルサが、


「この町は、二重構造になっています。外側のエリアには自由に入れます。これは、魔族と人間が交流する町ですので、それぞれを制限するのが難しいと言う問題があります。しかし、自由に商売が出来ることもあり、自由貿易の拠点の役割も兼ねています。その収入の一部は、お布施としてルナ教会に納められるシステムです。さらに、中心部の神殿がある教会エリアは、城壁で囲まれており、厳重な警備が引かれています。巡礼者は身分証を提示して、巡礼を行います。これが、国境の町パルムの概要です」


 何を思ったのかアリスが、


「すると、パルム最大の観光スポット、ルナ神殿を観るには身分証が必要なのですね? 」


「簡単に言うとそうなる。うちらには身分証なるものが無い。残念だが、観光は出来ないが仕方あるまい」


 それを聞いたアリスが考え込んでいる。


「そうするとこの先、色々な場面で身分証を求められる事が多くなりますよね? その度に、観光出来ないのは、何のために旅をしているのか、判らないじゃないですか? 」


 確かに、アリスの言うことには一理ある。このパルムの町でまずやらなければいけない事は、魔術書の調査と身分証の取得が可能かどうか、最優先事項となりそうだ。


 するとエルサが、


「情報集めも兼ねて、ギルドに登録するのはどうでしょう? 確か、ギルドカードは身分証としても、使えたはずです」


「その事なんだが、実はギルドカードは過去に作ったような記憶がある。かなり前の事だが・・・ 」


 アリスも考え込んでいる。


「そう言われてみれば、竜仙峡で飛竜(アルテミス)と契約した時に、ギルドで作りましたね。100年以上前の話になりますが? 」


「それは、お前だけだろう。俺はもっと前だ。多分、魔王になる前だと思う。それに、いま持って無いし」


「確かに、私も持ってません」


 するとエルサがポケットからカードを取り出し、


「私は、持ってます。勇者パーティーに入ってからは必要不可欠なカードでしたので・・・ それに、色々な場面で役立つ便利なカードですよ! まさか、旅に出るのにギルドカードを忘れるとか、考えられません」


 そうなのか? 前回訪れた時は、魔王だったので事務処理はバーンがやってくれたが・・・ 多分、俺のギルドカードは、バーンが持っていた筈である。


「どちらにしても、新しく作ってもらおう! 俺は元魔王だったので、前のギルドカードでは旅をするのに不便だしな。アリスは、再発行でもいいんじゃないか?」


「やだ、新しいのが良い! 」


 アリスが拗ねている。ま、どっちでも良いだろう。


「エルサは、新しいのにするか? 勇者パーティーのメンバーだったし、何かと面倒にならないか? 」


「いえ! 今のギルドカードでも問題ないと思います」


 いや! 勇者パーティーのメンバーだと言うことが知れ渡った方が都合が良い。これから、人間界に行くのだ。必ず、チャンスはある筈だと、エルサが思案しているとも知らず、


「エルサは、そのままで良いのだな。では、ギルド本部に行くことにしよう! 」


 ルナ教会運営のギルド本部は、パルムの町の外側のエリアにある。周囲の建物とは比べ物にならないくらい立派な建物である。ギルドの登録からクエストの紹介、さらには、酒場も併設されている。


 ギルドの中に入り受付をし、新規登録の手続きを行う。アリスとジャンの書類を提出し、待ち合いのソファーに皆で座っているが、落ち着かない。ハルが、目立っているのだ! やはり、子供とはいえ、飛竜は目立つ。


「ジャン! 皆、ハルを見て行きますね? そんなに、可愛いのかしら? 」


 アリスが自慢気にしている。いやいや、そもそも、珍しいだけじゃ無いと思うがな!


「そうだな! ところで、ハルは身分証とかは要らないのか? 」


「飛竜には、身分証は必要ない。もともと、《神の使い》だしな! 」


 ハルがドヤ顔をしている。いやいや、お前はマスコット的な扱いのお荷物だし、それに、飛竜だから必要ないだけだと思うがな・・・


「そうだな! 《神の使い》は偉大だな! 」


 ここで何かあると面倒なので、ハルに合わせる。


 しばらくすると、俺とアリスが呼ばれる。


 まずは、アリスからだ。受付嬢が、


「手をこちらの水晶玉にかざして下さい」


 と言うのでアリスが手をかざしてみる。すると、水晶が不思議な光を放ち数秒後、


「はい、終わりました。では、確認致しますね」


 受付嬢は、水晶から照らされた石盤の文字を読んでいる。


「おかしいですねぇ? 過去にギルドカードを作ったことは有りますか? 」


 すかさずアリスが、


「いえ。初めてです」


 受付嬢は、首をひねり、


「そうですか? 119年前の8月23日に作られてますね。その後は、更新がありませんが・・・ 」


 アリスが困った顔をしている。


「そんな事はないと思いますが。まだ、22歳ですし・・・ 」


 受付嬢が思案している。すると、


「次のジャン様から、先に行いましょう。同じく、水晶に手をかざして下さい」


 今度は俺か? 手をかざしてみる。先程と同じように不思議な光を放った。石盤に文字が映し出される。それを見た受付嬢は、驚いた表情をして、ジャンの顔を覗き込んだ。


「ジャン様も、ギルドカードは初めてのお作りでよろしいのですよね? 」


 受付嬢は、戸惑っているようである。


「初めてだか、何か問題でもあるのか? 」


「いえ! その、別人のデータが登録になっているようでして・・・ 」


 そうだろうな。石盤を覗き込むと、やはりと言うべきか、元魔王のデータが表示されている。さらに、良く見てみると、死亡表示になっている。なんとも、悲しいことか・・・


 受付嬢が、思案をし、


「そちらの女性の方は、ギルドカードをお持ちですか? 」


 エルサが不思議そうな顔をして、自分のギルドカードを出す。


「ギルドカードをお持ちの方ですか。少し確認致しますね? 」


 石盤に、ギルドカードの情報が表示される。それを見た受付嬢がさらに、困った顔をして、


「こちらのカードは、エルサ様ので間違い有りませんか? 」


 とエルサに訪ねる。するとエルサが自信満々に、


「間違いまりません。そのギルドカードは、私の物です」


 エルサが、強い口調で言う。それを聞いた受付嬢は、


「エルサ様。お手数ですが、水晶玉に手をかざして頂けませんか? 」


 受付嬢がエルサにお願いをする。エルサも不思議そうな顔をして、手をかざす。また、石盤に文字が表示される。そのデータを見た受付嬢は、


「大変申し上げにくいのですが、こちらのギルドカードも他人のデータになってますね」


「それは、どういう事ですか? 」


 受付嬢が困った顔をして、


「どういう訳か、英雄エルサ様のデータが表示されています。しかし、英雄エルサ様は、19年前の魔王との戦いでお亡くなりになり、国葬扱いでヘンリの丘に埋葬されています。お見かけしたところ、エルサ様は若く見えますので、何かのトラブルでデータが書換わってしまたのかも知れません。お急ぎであれば、データが壊れていますので、新しいギルドカードとの交換となりますが、よろしいですか? 」


 驚いたエルサが何か言おうとするが、口を塞ぎアリスに渡す。


「それで、構わない。アリスと俺はどうするのだ? 」


 受付嬢が少し悩み、


「本日は、水晶玉の調子が悪いため、二人に付きましても問題無いでしょうから、新しいギルドカードの発行を行います。用紙に書いてある記載内容に間違いは有りませんか? 」


ジャン 25歳 魔族

アリス 22歳 エルフ


「間違いない」


「あと、エルサ様も新しくなりますので、この用紙に記載をお願いします」


エルサ 23歳 人間


「これで、お願いします」


 しばらくして、三枚の新しいギルドカードが出てきた。怪しまれはしたが、新しい身分証の取得が出来た。これで、旅がしやすくなるだろう。出来上がったギルドカードを、アリスとエルサに渡す。するとエルサが、


「何ですかこれは? 」


 ギルドカードに書かれている年齢を指す。


「何か変か? 」


「私は、23歳じゃありません。24歳です。これじゃ、サバ読んでいるじゃないですか? 」


 なんと!エルサは、正直だ。


「記載内容を変更しに行った方が良いかしら? それも、出生が平民になっていますし・・・ 」


 いやいや、これ以上は問題になる。


「エルサ、たかが1歳サバ読んだところで大したことない。アリスを見てみろ! あいつは160歳以上はサバ読んでる。なのに、平気な顔でギルドカードをハルに自慢しているぞ! お前のなど、サバ読んでいないのも同じだ! 」


 エルサがアリスのギルドカードを確認する。


「何ですかこれは? 私より若い事になっているじゃないですか? 」


 アリスが勝ち誇った顔で、


「そんな小さい事で、グダグダ言うものじゃない」


 エルサも渋い顔をしたが、


「そうですね! 160年もサバ読んでいるのですから、大した事無いですもんね! 」


「そうですよ。あと、このギルドカードに、スリーサイズの記載も有ったら良いのにねぇ? 」


 アリスが巨乳をわざとらしく見せびらかす。


「それは、残念ですね! 」


 アリスとエルサが、嫌悪な雰囲気になっている。どうして、毎回こうなるのやら?


読んでいただきあがとうございます。少し凹んでいますが、まだ、時間は有るので、宜しくお願いします。

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