第2話 最弱魔王
今日も、宜しくお願いします。
くそ!目をやられた。他はどうだ・・・ 体に痛みは無く、指、腕、足、異常なく動く。外傷は無いようだ。しかし、何だったんだ?? あの女は何をしたんだ?しばらくすると、視界が戻ってきた。
やれやれだ。
エルサに目を向けると、魔力を使い果たしたのか倒れている。もう一度良く見てみるが、本人が言うように女では有るようだが貧乳だ。何はともあれ、戦闘は終わったようだ。
しかし、何やら違和感を覚える。その違和感が最初は何なのか解らなかったが、周囲を見渡してみるとその違和感が、現実のものとなる。ここは、俺様の部屋に間違いは無いが、窓ガラスや壁一面にクモの巣が張り巡らされ、装飾品はすべて剥がされている。お気に入りの、絵画【魔界のビーナス】も玉座も無いのである。
ここは、何処だ? 見覚えはある。どう考えを巡らしてみても、魔王の部屋、いや、俺様の部屋であることに間違い無い。
何はともあれ、エルサに駆け寄り声を掛けてみる。
「おい! 大丈夫か? 」
小刻みに揺すってみるが、胸も揺れず動く気配も無い。それはそれで、いろんな意味で困った事なのだが、傍らに詠唱の時に使っていた魔術書が落ちている。それを拾い上げて読んで見ると、その魔術書には驚愕の事実が記載されている。その事実をどう解釈するべきか思案していると、
「ここか?」
何処からともなく、騒がしい声が近づいてくる。三人、四人。いや、どんどん増え十人以上の足音と話し声が迫ってくる。そして、正面の扉が開きぞろぞろと入って来るなり此方の存在に気付いたらしい。
「ここで、何をしている? 」
先頭で入って来た者が、問い掛けて来た。
「お前らこそ何者だ? 」
問うてみたが、魔界なら何処にでもいるゴブリンだ。
「我らこそは、キングゴブリン。ゴブリンの頂点に立つ存在だ! そして、ここは我らの寝床だ! 勝手に侵入しておいて、何者だとは失礼この上ない」
こりゃまた、自分にキング付けちゃってるよ。痛々しい。
「ところで、そこに倒れているのは・・・ 女か? 」
「あぁ! 胸は無いが、女だ! 」
「胸は無いのかぁ! 」
ゴブリンも残念そうだ。
「無いのは仕方ないが、女であれば置いて行け。そうすれば、見逃してやっても構わないぞ! 」
ゴブリンですら、胸は重要だとみえる。だが、
「この女を置いて行く気はない。それに、何を勘違いしてるのか判らないが、誰にものを言っている? 」
ゴブリン達が、こちらを見て呆れた顔をしている。
「不法侵入者に決まっているじゃないか? なぁ? 」
取り巻きのゴブリン達が一斉に笑い出す。さすがにカチンと来るが、今の状況が全く掴めない。ここは、込み上げてくる怒りをこらえ我慢する。
「不法侵入者であるかどうかは別にして、いつ頃からゴブリンキング様は此方に住まわれていらっしゃるのですか? 」
「ゴブリンキングじゃない! キングゴブリンだ! 」
どうでもいい。
「申し訳ない。キングゴブリン様は、いつ頃から住まわれていらっしゃるのですか? 」
「申し訳ないじゃないだろう! 申し訳有りませんだろ! これだから、魔族風情は頭が悪い」
取り巻き達が頷き笑っている。ヤバイ。早くも、限界だ。ゴブリン相手に、下手に出たのが間違いだった。もはや、武力にて完全制圧するしかない!
「お前ら、少し調子に乗り過ぎじゃないか? 俺様を誰だと思っている? 」
「あいつバカだぜ! 不法侵入者だって言っているじゃないかなぁ? 」
笑いが、木霊する。
「まだ分からないのか? 今、貴様らが目の前にしている俺様は、魔王ハーデスだぞ! なめて・・・ 」
この緊迫した空気中、俺様が話しているというのに、ゴブリン達から笑いが起こる。
「ワハァ! ハッハ!! 痛すぎる。最初のバトルで勇者に殺られた、最弱の魔王だって! 」
何だって? そして、貴様も話を聞かんのかい。
「名乗るにしても、最弱の魔王を名乗るとは面白い。少しは、考えた方が良いぞ! それと、今日のところは笑わせて貰ったので、見逃してやる。ワハァ! ハッハ!! 腹がよじれて死にそうだ! こんなアホとは・・・ それと、貧乳かもしれないがその女は置いて行けよ! 」
部屋中に笑い声が響く。それにしても、舐められたものだ!
「ほう! そんなに面白いか? 何故だか判らぬが、どうやら俺様が勇者に殺られた事になっているのか? 面白い。貴様! 今なら俺様の部下にしてやる。死にたくなければ膝まづけ! 」
キングゴブリンが両腕を広げ、馬鹿にした顔をし、
「頭は大丈夫か? 自分の立場が判っていらっしゃらないようだ。残念だが、交渉決裂だな! では、自分の愚かさをあの世で後悔しな! 」
「後悔するのは・・・ 」
「ギガ・ファイヤー!!! 」
だから、どいつもこいつも話を最後まで聞け! キングゴブリンの放った炎の塊が迫って来る。だが、所詮はゴブリンごときが放った物をなど、相手に向かって片手で払い除ける。
「ヤベー! 避けろー! 」
放ったはずの炎の塊が戻って来たためキングゴブリンとその仲間達が、必死に避ける。
「ばーか。当たらないようにしてやってるわ! 」
小声で呟く。
ゴブリン達の頭上を超え、後方の壁に当たり、爆発音を立て消滅した。
「俺様を馬鹿にしておいて、これが貴様らの限界か? 最弱とバカにするからには、もっと期待していたのだか、歯応えがないの? では、こちらからも攻撃させてもらおう」
ゴブリン達がざわめく。
「ストップ! 」
その呪文の詠唱と同時に、ゴブリン達が動かなくなった。
「何をした? 体が動かない? 」
同様の声が、ゴブリン達から挙がっている。
「落ち着け! これからが良いところなのだから、良く聞いておけよ。ところで貴様は、キングゴブリンだったな。これから、貴様と俺様との力の差を見せてやろう。喜んで良いぞ、貴様らには古代魔術という有難い魔法を掛けてやろう! その名も【ケロタン】だ。この魔法を掛けられた者は、俺様に逆らったり悪口を言ったりしただけで、その者をカエルに変えてしまう魔法だ。逆に言えば、逆らわなければ、問題ない、素晴らしい魔法だろ! 久しぶりなので、俺様もゾクゾクする! 」
ゴブリン達がざわめきたつ。
「何を言っている。やめろ! 」
キングゴブリンが威嚇をしているが、
「騒ぐな! もはや、俺様に楯突いた事を後悔し、死よりも辛い下僕として一生を、俺様のために生きろ! では、【ケロタン】!! 」
すると、ゴブリン達の回りを緑色の光が包み、そして弾け散った。
「おめでとう。忠実なる下僕の誕生だ。何とも喜ばしい。そうだろう! あと、動いていいぞ」
ゴブリン達に沈黙が走る。お互いに顔を見舞わせなが、様子を伺っているようである。
今日も読んで頂きありがとうございます。
なかなか、PVが増えませんが、凹まないように、頑張ります。
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