第16話 戦後の後始末
目標の10人に、到達しました。ありがとうございます。
今日も、よろしくお願いします。
ドアをノックする音で目が覚める。やはり、二度寝は起きるときには辛さ倍増である。ドアを開けると、エルサが朝食に迎えに来ていた。食堂にに行くと、アリスの横にハルが座っている。どうやら、ハルも飯を食うらしい。
「ところで、ハルは食堂で食べて良いのか? 子供の飛竜の持ち込みはいけないのではないのか? 」
「昨夜のヨーク軍との活躍が認められ、特別に許可してもらいました」
「そうなのか? それなら良いが? 」
食事が並べられ、食べ始める。ハルは、食器を使い手馴れた手付きで、朝食を食べている。飛竜なのに、器用なものだ。食べた後は、すぐに出発した方が良さそうだ。何となくだが、やな予感がする。
「アリス! アリス! 」
どこからか聞き覚えのある声がする。そう、ガビルだ。
「アリスとジャンに話がある」
「何のようだ? 昨夜の続きか? 今は、それどころでは無いのじゃないか? 」
やっぱり、朝早くに出発していれば良かった。二度寝は、何も生まない。苦しみと悲しみしか生まない。
「昨夜のヨーク軍の大将と副将に、魔法契約をしたのは貴様か? 」
そうだった。したけど忘れてたわ!
「そうだが、何か問題でもあるのか? 」
「尋問をしたいのだが、魔法契約が邪魔をしていて出来んのだ。なので、一緒に来てはくれないだろうか? ヨーク軍の様子も知りたい! 」
しまった! 魔法契約などしなければ良かった。下僕にしてしまった以上、下僕の躾は、俺様の役目か。仕方なく、ガビルに付いて行く。
マリエル軍の駐屯地の地下牢に、ヨーク軍の捕虜が入れられている。どの牢も捕虜でいっぱいのようである。奥の牢にヨーク軍の大将と副将が同じ部屋に入れられていた。
「こいつ等に、魔法契約をしましたね? 」
ガビルが指さす。
「確かに、魔法契約を行ったが、何か問題でも有るのか? 」
「困ったことに、尋問用の魔法を受け付けないのです」
「ところで、こいつらは何のために、攻めて来たのだ? 」
「それが分れば、申し分ないのですが・・・ 」
ガビルもそれが知りたいらしい。
「ところで、お前らは誰だっけ? 」
周りの空気が固まる。
「私は副将のセル。こちらにいらっしゃるのがヨーク軍大将のダラン様です」
副将のセルが毅然として答える。囚われの身でも、動揺してる素振りは無い。
「ところで、貴様らはなぜこのダリを攻めて来たのだ? 」
すると、ダランが
「その理由については、お答えできません」
ま、大将としては言えないはずですよね。しかし・・・
「言いたくないのは分るが、魔法契約を俺様としてる以上、秘密にするのは無理だぞ! 」
「旅人風情の貴様がわれらに魔法契約したと言うのか? 」
「そうだ! 夜に暴れられても困るので、俺様の下僕としてやった。ありがたいだろう? 」
それを聞いた2人が黙り込む。
ガビルが話に割り込んでくる。
「このダランに魔法契約を掛けるとなると、相当な力の差が必要に成りますが・・・ 」
ま、元魔王だし。この程度の輩ならば当然だろう。ガビルでも出来るはずだ。
「しょうがないだろう。俺様から見ればおぬし等は、赤子も当然じゃ。ガビル! おぬしも例外では無いぞ! 」
ガビルが驚いている。その横で、アリスは楽しそうである。
「ガビル! 私を賭けてのジャンとの決闘はどうしますか? この後、やりますか? 」
アリスも性質が悪い。今の状況で、ガビルが受けないのを知っているだろうに・・
「今日は止めておく。いろいろと忙しくてなぁ。それどころでは無いのだ」
「あら? 私と仕事、どちらが大事なのかしら? 」
アリスがガビルを困らせて楽しんでいる。敵に回すと恐ろしい。
「その話は、今することでも無いだろう」
アリスがこちらを睨み付け、詰まらなさそうにしだした。
話を元に戻す。
「ダラン! 貴様は俺様の下僕だ。何しに来たのか話せ! 」
すると、ダランが重い口を開く。
「4日前の事になりますが、ヨーク国首都セントピアから子供の飛竜の捜索指令が出たのです。。捜索の結果、昨日この町の手前でトロルが発見し捕えようとしましたが、何者かに邪魔されて取り逃がしてしましました。その後聞き込みをし、この町に逃げ込んだのを確認したのです。本国に報告したところ、マリエルとの戦争もやもえないとの判断に至り、この度の事態となった次第です」
「それならば、身柄の引き渡し要求で良かったではないか? 」
「予定では、町を包囲し交渉する作戦でしたが、トロルの部隊が攻撃され北側に侵攻した本隊も攻撃され仕方なく戦闘することになったのです」
「では、戦闘を行う気は無かったと言うことなのだな? 」
「その通りです」
そこにいる皆のものが、ガビルを見る。
「何か? 俺の早とちりだと言いたいのか? 」
するとアリスが、
「他に、誰がいると言うのですか? ガビルがもう少し考えていれば、このような事態にはならなかったのです。町の人達も危険な目に合わなくて済んだのに。少しは、反省したらいかがですか? 」
アリスが手厳しい。ガビルがうな垂れる。
「ガビルの件はともかく、捜索の指令が出されている子供の飛竜には何かあるのか? 」
「それは、私にも分りません。本国からの指令を全うするのが、軍人の定めであります。それ以上のことは・・・ 」
なるほど、これ以上は聞いても無駄だろう。この二人も戦闘をしたくて来たわけでもなかろう。
「ところで、貴様らには魔法契約をしている。その意味は分かるな? 」
「分りますが・・・ 」
「では、貴様らには旧魔王城の修復を命じる。そこにはゴブリン達もいるので、仲良くするように」
「しかし、私たちはヨーク軍所属です。無理があるのでは・・・ 」
「大丈夫だろう。貴様らは、マリエル軍に敗れ囚われの身だ。当然捕虜となる。しかし、魔法契約をしている以上、囚われていることには変わりない。それに、旧魔王城の有る領地は、マリエル国が治めている。ちょうど良いではないか? 」
「それはそうなのですが」
「ガビル! ダランとセルは俺様の下僕とする。この戦闘の当事者としての責任はガビルにもある。あと、この者達に生活資金を与えるように。異議はないな? 」
ガビルが不満そうだ。しかし、これ以上は新しい情報は無いだろう。早いとこ、国境の町パルムを目指さなければ・・・
読んで頂きありがとうございます。もっと読んでもらえるよう、頑張ります。