第15話 飛竜が目覚める
今日も、よろしくお願いします。
知らぬ間に、寝てしまったようである。隣では、子供の飛竜が起き上がっている。どうやら回復したらしい。子供の飛竜は、俺様の顔を見るなり、
「なぜ、お前がそこにいる? 巨乳の姉ちゃんは何処に行った? 」
エー! しゃべれる事にも驚くが、なぜ巨乳に興味がある?
「隣の部屋にいると思うぞ! ただし、今は寝てるのではないか? 」
「そうなのか。苦しい時に看病をしてもらったので、お礼が言いたかったのだが・・・ 」
「そんな事より、子供の飛竜がなぜ喋れるのだ。大人の飛竜ならば喋れるものも少しはいることは知っているが、子供の飛竜となると珍しいような・・・ 」
「それはその通りだ。こう見えて、500年は生きているからな! 」
「500年? それにしては、見た目は子供のままじゃないか? 」
飛竜は、大人になるまで100年ほど掛かると言われている。そして大人の飛竜の大きさは、魔人が5人ほど乗れる程に大きくなる。しかし、目の前にいるのは、500歳だというのに見た目は子供の飛竜だ。
「不思議がるのも無理はない。儂は竜王の化身だ。それゆえ長生きであり、特殊な能力も備えているはずである。魔人ごときの若造には判らんであろうがな! 」
普通はそうであろうが、俺様も500歳を優に超えている。500歳程度の貴様の方が小童だ。しかし、今はそれは問題ではない。
「なぜ、トロルに追われていたのだ? そもそも竜泉峡以外で子供の飛竜を見るのは初めてなのだが・・・ 」
「それについては、色々と事情があるのです。・・・それに、説明しても無駄だと思いますけど・・・ 」
「それが、命の恩人に対する対応か? 」
少し声が大きくなる。夜は明けているとはいえ、まだ朝は早い。
すると、誰かがドアをノックする音が聞こえる。恐る恐る開けてみると、エルサが不機嫌そうに立っている。
「何時だと思っているのですか? うるさくて眠れやしないじゃないですか? どういう神経をなさっているのですか? アリスさんが、怒っていますよ」
そうだろうな! しかし、こちらとしても寝ていたいのはやまやまだが、子供の飛竜が起きてしまった以上、相手をしなければならないという、特殊事情も考慮してほしい。何はともかく、エルサに子供の飛竜が回復したことを告げる。するとエルサの顔から笑みがこぼれ、部屋の中に入ってくる。
「本当ですね。一時はどうなるかと思ったのですが、元気になって良かったです」
「お前が看病してくれたのか? いや、巨乳じゃないな? あれは夢だったのか? 」
しゃべりだした子供の飛竜に、エルサが驚く。しかしそれよりも、
「この子供の飛竜は、失礼ですね。助けてやったのに、巨乳、巨乳、うるさいのですが・・・ 」
すると、
「確かに、巨乳だったはずなのだが・・・ 」
と首を、傾げている。
「そんなに、巨乳が好きか? 」
エルサの語尾が強くなる。
「そんなの、決まっているじゃないですか? 何を今更? 」
子供の飛竜が当たり前の如く、答える。それを聞いたエルサが、我慢の限界を超えたのか、
「焼き鳥にでもして食ってしまいますかね? 」
と言うと、子供の飛竜の首根っこを掴み、上下に激しく揺する。病み明けの飛竜が、
「いきなり何なんですか? 止めてください! 」
と叫んでいるが、更に激しく揺すっている。
容赦ねぇなぁ!
「エルサ、落ち着け! 所詮、子供の飛竜だ。大目に見てやれ! 」
エルサが手を離すと子供の飛竜が、ベッドでぐったりしている。しかし、エルサの気持ちもわからないではない。
すると、不機嫌な顔をしたアリスも遅ればせながら部屋にやって来た。子供の飛竜を確認するなり、
「うるさいから来てみれば、何ですかこれは? ちっとも良くなっていないじゃないですか? ジャン! もしかして、寝ていたんじゃないですかね? 」
アリスが睨んでくる。
「いやいや、そんな事はない。つい先程まで、元気だったのだが・・・ 」
「元気だったのだが・・・ 何ですか? 歯に物が挟まったような言い方をして! 」
アリスが怪しんでいる。
「決して、俺はなにもしていない! 」
「何を自慢しているのですか? 何もしてないじゃないでしょ! 看病をすると約束してたはずですよね? 」
「いやいや、そう言う意味では・・・ 」
すると、子供の飛竜がむせながら起き上がり、
「イヤー! 河の向こう岸に、母親を見えましてよ。危うく、渡りそうになってしまいましたが・・・ 」
それを聞いたアリスが、修羅の形相をしている。するとエルサが、
「ジャンさんが・・・ 」
と泣き出した。
「ジャン! 何か言い残した事はないか? 」
アリスの殺気は、限界を超えそうである。
おーい! 俺じゃないぞ! この状況は、俺が悪いのか?
すると、子供の飛竜がアリスに気付き、
「あ! 巨乳のお姉さんじゃないですか? 私は、竜王の化身『ハル』と申します。色々ありまして、竜泉峡に戻る途中に病になり、トロルに襲われているところを助けて頂きありがとうございます。私の命の恩人です」
ナイス! 良いタイミングだ!
「そんなに、褒めなくても良いぞ。照れるではないか? 」
「いえ、感謝してもしきれません」
「ま、その話はそれぐらいにして、体調の方は大丈夫なのか? 」
「姉御から頂きました秘薬が効いたのか、病の方は良くなっていると思います」
「ところで、ハルはあのような場所で何をしていたのだ? 」
ハルが、少し悩んでいる。
「話したくなければ、それで良い。無理には聞きはしない」
何だろう。アリスの男気が増している。
「ありがとうございます。それより、姉御とその仲間たちは、どちらへ行かれるのですか? お見かけしたところ、旅の途中のようですが? 」
「私達は、婚前旅行中で国境の町パルムに行く途中なの。竜峡谷に帰るのなら途中まで、一緒に行く? 」
すると、ハルは悩んでいる。
「一緒に旅をして頂けるのはありがたいのですが、姉御にご迷惑をお掛けすることになると思います。一人で大丈夫ですので、気になさらないで下さい」
アリスが微笑みながら、
「その心配は要らんだろう!何せ、うちらはメチャクチャ強いからなぁ! 何かあっても問題ない。それより、ハルの体の方が心配だ。秘薬が効いているとはいえ、また悪くなるとも限らない。取り敢えず、国境の町パルムまでは一緒に行こう! 」
「本当に、良いのですか? また、襲われますよ! 」
「大丈夫だ。昨夜は、ヨークの軍勢を壊滅状態にしてやったしな! 他の軍勢に出くわしたとしても同じだ! 」
尻尾を立ててハルが驚いている。なんとも、可愛らしい。
「ヨーク軍が来たのですか? 」
「来てたなぁ! 誰だか知らないが決闘を申し込まれたが、ジャンが一撃で倒してたぞ! 」
「それは、本当ですか? もしそれが本当なら、姉御の部下はメチャクチャ強いじゃないですか? 姉御はそれ以上と言うことになるのですか? 」
「安心しろ! そこにいる者は私の夫になる男だ。この魔界で、いやこの世界で最強の男だ! 」
「そうなんですか? 姉御の夫に成れるとは羨ましい限りです」
「そうだろう! ハルはよく話が判るな! 」
いや? お前ら二人は大丈夫か? 何、意気投合をしているのだ。
それとエルサは先ほどから何をしている?相手にされないからといって、拗ねている場合でもなかろう。
「では、ハルと一緒に国境の町パルムを目指すことで良いのだな! 」
するとアリスが、当然といった顔している。エルサは、どうでも良いらしい。
ま、エルサも看病はしていたが、やはり巨乳は偉大だ!まだ朝早いこともあり、エルサとアリス、それにハルが隣の部屋へと帰っていった。さて、ひと眠りしてから出発することとなった。
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