表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リコーダーを舐められたい。  作者: 濃紺色。
【被害者 奏音】
9/14

ノート。

「次は……」


困っていると、涼夜君が動き出した。私から見て、私の席の左隣にある机の上に置かれた水色の袋を手に取った。


「……これ、食べる? まずはさ、ガム食べて……落ち着こう。な?」


ガム? 学校にお菓子なんて持ってきては……まさか、このガムを私に食べさせて共犯にし、リーコダーを舐めようとしたことを口封じしようという魂胆?


「い、いらない。いらないよ、私」

「……そうか、そうだよな」


涼夜君は水色の袋を元あった場所に置いた。

よく聞いたら、涼夜君と伸次君の口からくちゃくちゃとガムを噛む音が……。


「ぐへへへ、奏音様ぁぁっ、奏音様ぁぁああぁぁ……もっと、もっと僕をいたぶってくださぁい。へへへ、あぁ、はい。そうです。僕は醜い豚です!」

「おい! 伸次! しっかりしろ!」


ガムを分け合ったり、リコーダーを一緒に舐めようとしたり、この2人、そんなに仲がよかったのか……。


「豚が可哀想ですね。はい、そうです。世界中の豚さんすみません。どゅひゅひゅ、塵です。塵でございます。あ、そうですよね。塵が可哀想ですね。はい、そうです。世界中の塵さんすみません」

「伸次!?」


何だろう……何……この気持ち……。


「そ、そう言えば、どうして、奏音ちゃんは教室に?」


そうだ。私は忘れ物を取りに来た。そしたら、伸次君と涼夜君が私のリコーダーを舐めようとしていた。私は被害者なのだ。未遂とは言え、2人は許されないことをした。

なのに……なのに……。


「忘れ物。忘れ物を取りに来たの」


責めるべきなの? 先生に言うべきなの? どうすればいいのか全く分からないから、取り敢えず、涼夜君の会話に合わせるしかない。


「……忘れ物?」


涼夜君は首を傾けた。すると、何かを見付けたように「あ!」という声を上げ、


「忘れ物って、これかな」


私の机の引き出しの下に、無理矢理押し込んであったノートを抜き取った。

それは、駄目!


「触らないで!」


私は急いで涼夜君の元に駆け寄り、そのノートを奪い取った。

次の瞬間、ノートが私の手から離れた。

しまった、と思う暇さえなかった。

勢いを付け過ぎたのだ。

全てがスローモーションに見えた。

ノートは宙を舞い、ページがヒラヒラと靡く。涼夜君の驚いた顔、伸次君の救いようのない顔が鮮明に見えた。

パサリ。

涼夜君の目の前にノートが落ちた。最悪なことに表紙を裏側にして、ノートが開いた状態で。


「だ、大丈夫? ごめん、勝手に引き抜いて」


涼夜君は屈んで、それを両手で拾い、


「……何、これ」


そのまま動かなくなった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ