表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リコーダーを舐められたい。  作者: 濃紺色。
【刑事 涼夜】
3/14

狂ってやがる。

「伸次……キャラ違い過ぎない? 普段とさ」


伸次は一瞬、目を丸くすると、顔を真っ赤にして、伏せた。


「いやっ、いや、あのこれはっ……」

「何? 『俺をモンスターにしたのは……奏音、あんただぜ?』って。伸次って一人称、『俺』じゃなくて『僕』じゃなかったっけ? 後さ、さっき、奏音ちゃんのこと、呼び捨てしてたよね? そもそも名前を呼んでるところ見たことないしさ」

「そ、それを言うなら、涼夜りょうや君だって、キャラ違うでしょ……。『変な動きをしてみろ……躊躇なく、撃つぞ』って何ですか? 涼夜君って普段もっとこう……眠そうな目で、気怠げなイメージがありますよ?」


そう言い返されると、何だか、恥ずかしくなる。

伸次は続けた。


「ど、どうせさっきも、心の中で奏音さんのこと、呼び捨てにしてたんじゃないですか?」

「ギ、ギクッ!」

「そんな分かり易い図星あります?」


ま、負けて堪るか!


「じゃ、じゃあ、キャラの話でもっと言わせてもらうけどさ、伸次って普段、教室の隅の方で静かに1人で読書してるキャラじゃん。クラスメイトにだって敬語使うしさ。そんな奴が……あんなに、リコーダーに激しいキッスする?」

「そ、それは、だって……」


そうだ。リコーダーだ。これは事件だ。許されない程に、卑劣で残虐な。今は容疑者を取り調べしているシーンなんだ。

だったら……。


「お前がやったんだろ!!!!!」


俺は左手で激しく机を叩いた。

驚いて、伸次は肩をビクッと震わせたが、さすが役者だ。一瞬で犯人の顔に戻った。


「はぁ? 何を言ってんだよ、涼夜」

「……刑事だ」

「は?」

「涼夜じゃなくてさ、刑事さん、でお願い」

「分かりました」

「ちなみにさ、警部補って設定で」

「けいぶほ? あの……ちょっとよく分からないです」

「あ、そう……」


気を取り直してもう1回。


「お前がやったんだろ!!!!!」


左手がヒリヒリする。


「はぁ? 何を言ってんだよ、刑事さん」

「惚けても無駄だ。俺がしっかりと見たんだからな、この目で」


伸次は、はぁ、と馬鹿にしたように溜め息を吐いた。


「……何だ」


伸次は目をカッと見開き、右手で机を何度も叩いた。


「証拠がないでしょぉがっ! 証拠がよぉ!」


……証拠? こいつ、この期に及んで、シラを切る気か?

まぁ、いい。こっちだって策ならまだある。


「あるよ、証拠なら。リコーダーに付着した……お前の唾液がな」


ふっ、と伸次は鼻で笑った。


「それで? お前はそれを俺のだって、判断出来るのか? 鑑識並みの技術がお前にあるのか?」


そうか……そう来たか。実際、俺は小学生だ。今は刑事を演じているが、ただの小学生だ。鑑識の知り合いなんていない。演技と現実を織り交ぜた、完全犯罪。


「……狂ってやがる」

「狂ってなきゃ、舐めないよ。クラスの女子のリコーダーなんて」


ごもっとも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ