また明日。
物語は、終わらない。
あと少し。もう少しだけ。
「お前達……何をしている?」
思わず、強い口調になってしまった。
抑えないと。早まるな。
いつもの優しくて、爽やかな……。
「どうしたの? まだ残ってたの? 3人共」
午後5時半。下校時刻をとっくに過ぎている。
暗くなりかけた教室に3人の生徒がいた。
僕が担任を受け持つ、6年1組の生徒達。
クラスの女子の中心的存在、奏音。騒がしいおふざけ男子グループの1人、涼夜。いつも教室で静かに小説を読んでいる、伸次。
ほぼ接点のない彼等がそこにいた。
「浅川先生、ごめんなさい。私達、教室に忘れ物しちゃったんです」
潤んだ目で奏音が言った。
はぁ、と僕は溜め息を吐いた。
「もう暗くなって危ないから、気を付けて帰るんだよ」
「はぁーい」
「うぃーす」
「分かりました」
3人共、元気よく挨拶をすると、教室から出て行こうとした。
怒るのは好きじゃない。体力も使うし、嫌われてしまう。だから、優しく注意だけはしておこう。
「今度、甘い匂いがしたら、没収だからね?」
3人全員が一斉に口を押さえた。
子供は分かり易い。素直で可愛い。こういうのを見ると、本当に怒れなくなる。
「今日は見なかったことにするけど、次は駄目だからね?」
俯き、反省した素振りを見せる3人。
これ以上怖がらせないように笑顔を作る。なるべく、高い声を意識して。
「ほら、もう遅いから、気を付けて帰ってね。奏音、涼夜、伸次。また明日」
元気よく頷くと、3人は仲よく暗い廊下を歩いて行った。




