表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/35

始まりと終わりの舞台 2

少しだけ卑猥な描写がありますのでご注意ください。

 リュートの意志を確認しようとしたが――。

(敵がきたよー)

――遠巻きに囲まれていた。


(魔獣が9匹……襲ってこないね?)

(たぶん結界に干渉しようとしたら、襲ってくると思うわ)

(こわしちゃう?)

(待って! 結界の様子が変なのよ……)


 とてつもなく邪悪な何かが、内側から結界に纏わり付いている。

 どこかで感じたことがある……気もするが思い出せない。


(なにこれ、気持ちわるー)

(うーん、僕には何が変なのか判らん)


ゾクリ

(((ひぃっ)))

 その一瞬、身体中の血の気が引いて――。

 悪寒。違う――絶望――絶望を想起させるどす黒い何かが辺りを覆う。

ビキッ!

 結界に亀裂が走った。


(これ……フェンリルの災厄かしら!!???)

(え? 何それ?)

(ごめん説明は後! これならいけるかも……)


 わたしは神気に意思を籠めだす。


(リュート! シェイルを止めて! ひとりで死のうとしてる!!)


 ギンが慌ててわたしの背中に瞬送してきた。


(なんでバレたのかしら!!)

(霊気じゃなくて神気がでてた、それも死の臭いがするやつ)


(シェイルさん――?)



あ、やば、目が笑ってないわ。


(はい、何でしょう、リュート君……ドキドキ)


(一緒に消滅する約束でしたよね?)

(あ、はい)



リュートはマジ切れすると敬語になるのね。

それにしても、怒った顔も素敵♪


 この状況で現実逃避していると……。


(シェイルはこの前、3人でひとつって言った。ボクの力もつかって! あと3人じゃない、4人! もうひとりシェイルの中に居る)


 そんなことを言い出すギン。


(4人? 誰かしら? 神獣の盟約は違うし……??)

(あ、僕もなんか感じた。シェイルと繋がってる先に、もうひとり居る……え? あ、キール君って言うんだ)


(キール君!!!?? リュートに話しかけてるの???)


(うん、声が遠くて聞き取りづらいけど……名前と、それと力を貸してあげるって言ってる)

(にひひひひ! まいったわ。わたしじゃなくてリュートに話しかけるなんて、キール君も侮れないかしら)

(キール君て誰??)

(神界に行ったら紹介するわ! キール君が力を貸してくれるなら、なんとかなるのよ!!! さぁ、リュート! ギン! 反撃の準備はできてるかしら?)

(お、おう!!!)

(おー!)


 わたし達の敵意を察知して、襲ってくる魔獣9体。


(じゃまー!)


 即座にギンの力で[破壊]される。


(それじゃあ、キール君お願い!!)

『我らに力を!』


 神気言霊に応じて神印が輝きだす。


(リュート! こっちに来て!!)

(分かった!)


 輝きだした神印から強烈な神気が溢れだすと同時に――。


(ごめんリュート! 先に謝っておくわ!!)


――近寄ってきたリュートを無理やり引き寄せて。


(え?)


 唇を重ねた……。


(ん゛んんんん!!!!!)


 両手の神印から溢れ出た神気を絡めて、リュートの霊体(からだ)の自由を奪い、口移しで神気をリュートの霊体へ流し込む。

 舌を絡めながら念入りに……すると練乳のような甘い味と匂いが口一杯に広がった。


 ふたりの霊体(からだ)を痺れるような快感が迸り、脱力する。


 絡まった神気は、リュートの霊気と混ざり合い、新たな神気へと変質し始めた。


――快感に圧倒されて力が入らないまま3秒ほど動けずにいると、リュートの霊気全てが神気への変質を完了する。


 次に、わたしは変質したリュートの神気を舌から吸い出して飲み干し、わたしの神霊体の中を循環させ――。


――再び神印からリュートの神霊体へ戻す。


 この繰り返しを数秒続けるあいだ、ギンは敵の攻撃からふたりを護っていた。


 そして――。


『神印[インクリース(増強)]発動!』

 わたしの増強の神印による追加効果で、爆発的に神気が膨む。


 爆発的に膨らんだ神気の波動で、魔獣も英雄達も怯みあがり動きが止まった。


 ある程度膨らんだ神気は、一瞬でリュートの神霊体に高密度圧縮され安定する。


――疑似エインヘリヤル(仮初めの依り代)の完成である。


 痺れるような快感は落ち着きながら、疑似エインヘリヤル(仮初めの依り代)に溶け込み触感へと変わった。



んっ。もう動くかしら。


 名残惜しそうに唇を離し、リュートに向かってハニカミながら言う。


「ごちそうさまでした♡」


「んんんんんーーーーーっ!!!!!」


 疑似エインヘリヤル(仮初めの依り代)でも顔は真っ赤だ。


「ダメよ! 戦闘中なのよ! 確りして!!」

「はあ!!??? 戦闘中にキ、キスして何言ってんの!!!!!」


 恥ずかしさ半分、怒り半分といったところか。



あ……リュートもやっぱり男の子なのね。

安心したわ♪

でも、おふざけはなしね。


 部屋で寛いでいた恰好のまま来たので、ふたりともお揃いで色違いの上下ジャージ姿だが。

 リュートの下半身が見事に変化している。

 チラ見したが、見なかったことにした。

 

「もう!! クレハを助けたいんでしょ!!?」

「うぐっ」

「ありがとうキール君!! 助かったわ♪ 受肉したから次いくかしら!!!」

「またキス!!??」

「ぐへへへへ」

「あぁ……嫌な予感しかしない……」


「ギン! 力を貸して!!」

(おっけー!)


 ギンが神威武装を解除する。

 だが解除された神威武装は、青白銀の神気となってわたしの神印に吸収された。


「いくわリュート……」

「あ、まだ、心のじゅんbg――」


『神獣の導きを以って執成し賜え――クロスオーバー(神憑り)


 わたしとリュートの身体が、ギンの青白銀の神気に包まれ。

 一瞬で憑依融合する。


 空色の軌跡を描きながら揺れる可視化するほどの神気を、薄っすら纏い。

 白銀色の髪に、碧眼。

 まるで姉のクレハのような姿に変貌したリュートが佇む。


(わかるかしら?)

『「うん、僕の中にシェイルの気持ちが流れてくる」』

(わたしの中にもリュートの気持ちが流れてくるわ……胸が高鳴るわね♡)

『「んんん――!!」』

(ダメよ、精神を乱しちゃ。クロスオーバー(神憑り)が解けるのよ)

『「すーはー、すーはー、うん、大丈夫」』


(ふふふ。じゃあ、リュート、反撃と行きましょうか?)

『「そうだね、シェイル」』


 ゆっくりと目を開けて結界の亀裂を状態を確かめる。


『「ギン!」』

 わたしとリュートの声が重なって発声された。


(うん、やるよー!)


 亀裂の深い箇所に右手をかざし、意識を集中して――。

『『「我に破壊を!!!!!」』』

――3人で言霊を紡ぐ。


 亀裂の周りの色あせた景色が灰色に変わり、亀裂の中心から、ヒビが広がる。


 ある程度ヒビが広がった瞬間――ガラスが砕け散るように結界が割れ、漆黒の穴が出現した。


 結界を護ろうと攻撃をしかけてきた魔獣や敵の英雄が、3重の[破壊]の余波だけで消滅する。


(ギンは先に行って、クレハを助けるのよ!!)

『「僕らもすぐ行くから、頼んだギン!!!」』


(まかせてー!)


 ギンが漆黒の穴に飛び込んで消えた。


(んっ、世界内検索実行――魔獣の司令塔補足。あいつの疑似霊核を砕けば残りの魔獣は消滅するかしら。それと神気を圧縮して纏ってるから、あの程度の魔獣なら素手て貫けるのよ)

『「了解!!」』


 瞬送と勘違いするほどの速さで司令塔に接敵。

 わたしの誘導に従って、リュートが疑似霊核の位置を確認。

 魔獣の背中から左腕を突き刺すと正確に疑似霊核の中心を貫いた。


『GiGyaAAAAA!!!!!』

 何とも言えない咆哮を上げて霧散する。

 残りの魔獣もそのまま消失した。


――敵味方含めて英雄達は絶句していた。


『「パウリさん!! 後はお願いします!!!」』


 そのまま高速飛翔で結界の穴へ飛び込む――。


「あらあらまぁまぁ」

「なんだよアレ、ありえねぇだろ」

「負けていられませんね。パウリ! ヨシュア! 今は敵の捕縛に集中しましょう!!」


 魔獣を失い、足止めすら忘れてしまうほど動揺していた敵部隊は為す術もなく捕縛されていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ