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戦乙女養成学園=初等部= 2

 初等部から高等部までの授業形態は "講義" 、 "実技" 、 "演習" を基本として、単位制になっている。

 演習だけはクラス単位で実施するが、演習も含め全ての授業は予約制。

 予約した授業の実施日が決まると、神核の記憶領域に記録され、英霊石の共通恩恵[自己管理]から利用できる。

 スケジュール表、タスク一覧、成績表、所持品/所持金、メモ、各種お知らせなどが[自己管理]で確認可能。

 ちなみに、確認中の個人情報は、他人からは見えない。



神界って、天国をイメージしてたけど……、なんか、未来っぽいな。


 なんて思いながら所持金を確認していた。

〔所持金:10万オド〕


「オド?」

「んっ、お金の単位なのよ。レートはおおよそ……1オドが1円かしら」

 脱衣所からシェイルがドア越しに応える。


「「なるほどー」」

 ギンをわしゃわしゃしながら、ふと思った。


「あれ? 10万円入ってる?」

「お母さまから頂いた支度金ね」

「も、貰っていいの?」

「当然なのよ」


 支払いは[自己管理]を使うので、硬貨や紙幣は存在しないらしい。

 所持金を確認していると──。

〔スケジュール表〕

──の文字が明滅しながら視界の右下に現れた。


「初演習の実施日が決まったみたい」

「えっと、クラスのみんなとやる実技だっけ?」

「そうそう、まずは簡単な戦闘訓練ね」


 〔スケジュール表〕を確認する。

 実施日が決まった授業が自動的に管理されていた。

 実際に受けるかどうかは、自由で、受けなければ次の機会へ回される。

 かなり緩いけど、時間は半永久的にあるので困らないのだろう。


「あれ、導入の次の、性別って何?」

「あー、説明するより受けてみるほうが早いかしら。男女別の授業だけど移動大丈夫?」

「うん、もう平気」

「んっ、あとは慣れね。何かあったら、わたしに[遠話]か、[瞬送]すればいいのよ」

「解った!」


バンッ!

 脱衣所のドアが勢いよく開かれ──。

「ふふふんっ」

──変な鼻声を出しながらゆっくり一回転して、貫頭衣の端を摘みカーテシーする。


「「おー」、ちょっとセクシー!」


 いつもと髪型が違う……結び目が後頭部に隠れて見えないタイプのツインテールだが、くるくるウェーブがかっていて、可愛くも少しだけ大人びた印象を与えた。


「じゃあ、少し早いけど、導入の講義室へ行くかしら」

「はーい♪」


 今日はシェイルとお揃いの薄翠色の貫頭衣。

 下着の上から貫頭衣は、スカートをはいているようで落ち着かないので、いつものジャージの上から着ていた。



◇◇◇◇◇


「なにこれ……」


 講義室へ向かう途中の廊下でシェイルが唖然とする。


「どうしたの?」

「……なんでみんなジャージなのよ!」


 そう言われてみると、廊下を行き交う候補生の多くがジャージ姿だ。


「あれ、学園指定のジャージじゃないの?」

「ここ神界! 神様の候補生がジャージって!」

「「あー」、まさか……自意識過剰かもしれないけど──」


 と言いかけたところで、声をかけられる。


「「リュートー!」」


 コロナリアクラスのヴァルキュリオ(戦男神・いくさおがみ)達が手を振りながら近づいてきた。


「ルッツ、セロー、おはよ? ……なんて挨拶したらいいんだこれ」

「「おはよー!」、[自動翻訳]されるから挨拶は適当でいいよ!」

「そっか!」

「それより、見て! リュートとお揃い♪」

 二人とも色違いの、いや、よく見るとデザインも少しづつ違うジャージを着ている。


「セロー……そのジャージはどこで手に入れたのかしら?」


 シェイルは同氏族のセローに問いかけた。


「購買で売ってるよ」

「そんなの知らないのよ!」

「コロ先生に問い合わせが殺到したらしくて、学園長様に相談したらデザインパターンを販売することになったんだって」

「「お母さま!」」


 デザインパターンを[心霊制御]で自分自身に設定すると、服を着替えることができる。

 色や、ちょっとしたデザインの変更は自由なので、かなり便利。

 もしデザインパターンなしで服を変更しようとすると大変で、成功してもほぼ貫頭衣に近い形状になるようだ。

 僕の場合は、服を変更しようとしても、ほぼジャージになる。どんだけジャージ好きなんだろう。

 ちなみに、裸になりたい場合は普通に服を脱ぐ……神霊体(からだ)から離れた衣服は数秒後、神気に戻って本体に吸収される。


「あ、授業に遅れるから行くよ! またねリュート、シェイル」

「「「またねー」」」


 二人を見送りながら呟いた。


「これでいいのかしら……」

「が、学園長様が決めたのなら、いいんじゃない?」


 どうにも納得がいかない様子のシェイルを押しながら、導入の講義室へ向かった──。



◇◇◇◇◇


  "導入" は、必ず最初に受ける講義。

 様々なルールが説明される "導入" を受講しないと、他の授業は受けられない決まり。

 そして、導入の次の講義、 "性別" は男女別で受けた……。


  "性別" の講義が終わって寮に戻り、部屋に入った瞬間──。


「どうだった?♪」


──ニヤニヤしながら感想を求めるシェイル。


「セクハラ親父か!」

「にひひひひ♪」


「シェイルさん……表情が本当にセクハラ親父っぽい」

「ぐへへへへ♪」

 悪ノリする。


「てか、あんな具体的に教えるんだ……」


 思い出しただけで、身体が反応しそうになった。


「大事だからね♪」

「あ、あのー」

「何かしら?」

「えっと……」

 顔を真っ赤にしながら、あわあわする。


「大丈夫、 ”性別" の実技はないかしら。そこはね、さすがにプライバシーが尊重されるのよ」

「よかった~」


 心底安堵する。

 いくらなんでも、みんなの前で初エッチとか……。

 僕は、そんな高度な趣味は持ち合わせていないのだ。


 そう、 "性別" とは、性別のエッチ指南講座である──それも極めて実践的な……。



◇◇◇◇◇


──授業を消化しながら100日ほどが過ぎた。


 僕が初等部を卒業するためには、ふたつの条件をクリアしなくてはいけない。

 ひとつ、卒業に必要な単位数を取る。

 ふたつ、コロ先生から終了認可を貰う。

 候補生達は、これに "一定の個人成績ポイントを稼ぐ" が追加される。


 シェイルの懲罰期限は、僕が初等部を卒業するまで。

 なので初等部卒業と同時にふたりで中等部入学という流れになるそうだ。


 そんなこんなで、単位数が揃う頃。


 僕とシェイルは、ヴァルハラ(英雄達の寝宮)の深層にいた。


「ここって重要施設だよね? 入って大丈夫なの?」


 心配をよそにエレベーターはどんどん下降していく。


「やっと許可が下りたのよ。不法侵入ならとっくに牢獄へ強制召喚されてるかしら」

「そうなんだ」


 何層降りたか判らないほどの時間、下降した気がする。

 静かに停止して、無音でエレベータの扉が開いた先には、小さな部屋と祭壇があった。


(ようこそリュート! それに久しぶりシェイル、ギン)


 いきなり[念話]が飛んで来たが、この声は忘れもしない。


「キール君!?」

(憶えてくれてて嬉しい♪)


 祭壇の横の棚に、深翠色した髪の僕よりずっとボーイッシュで、かっこいい女の子が据わっていた。

 [遠話]で話していなかったら、男の子と勘違いしていただろう。


「あれ? キール君、どこかで見たことある気が……」

(くすくす──この姿は、シェイルが好きなアニメのキャラクター。 "キール君" って名前もそう。もともと英霊石に名前なんてない)


 ジト目でシェイルを睨みつける。


「わ、解り易くていいでしょ!」

(うん、ボクも気に入っている♪)

「ならいいか……キール君、改めてお礼を言わせて! 助けてくれてありがとう!!」

 ニッポン式最敬礼する。


(いいよ、ボクとリュートの仲じゃないか。いつでもいつまでもボクはリュートのもの。気にしなくていい)

「うん……ありがと……」

「いやいやいや! キール君と盟約を交わしてるのは、わたしですー。あとリュートは、わ・た・し・()、契約者ですー」

(そこは、()()()()、だよね?)

「うー」

 時折、凄く子供っぽくなるシェイル。

 甘えられる相手だと素が出るのかもしれない。


「あの……キール君、身体は大丈夫なの?」

(出力が下ってること?)

「うん」

(何の問題もないよ。エイルちゃんから、怒られた?)

「うん、クロスオーバーは使うなって」

(……そうだね、本契約までは、使わないほうが無難かな)

 そう言いながらキール君が手招きする。


 何故か、この子は僕が嫌うことは絶対しないという確信がある。

 なので、全く警戒せずキール君の傍まで近づいた。


(ありがとう。ボクはここから動けないから)

 横に置いてある形が整っていない水晶を、ぽんぽんと叩く。


「何をするつもりかしら?」

 シェイルは少し警戒しているようだ。


(おまじないを掛けるだけ。リュート、英霊石に手を置いて)


 指示されるまま手を置くと、キール君が左手を重ねてきた。


(動かないで)

「わかった」


「「──!?」 これ何したのよ!?」


 見た目には何も起こっていない。

 けれど、僕らの魂が別の()()と繋がる感覚がした。


(おまじない)

「それじゃあ説明になってないかしら」

(詳しいことを話すと、おっちゃんに怒られる)

「キール君に親戚がいるなんて初耳ね」

(くすくす──)

 楽しそうに笑う。


(──あまりしつこいと……折角、ボクがエイルちゃんに頼んで軽くした懲罰を、シェイルにだけ追加するように上申しちゃうかもなー)

「な!? キ、キール君がそんな子だったなんて!」

(腹黒さなら、シェイルさんには負けますよー)

「……」

 シェイルが、ぷるぷる震えだした。


「ストップ! 喧嘩ダメ! 絶対!」

 口論になる前に止めたほうがいいと判断したけど、キール君は両手を軽く広げて肩を竦めた。


(候補生の時は、いつもこんな感じだったから大丈夫)

「あれ、そうなの?」

(うん、シェイルも解ってて挑発してる)

「……キール君。ひとつだけ教えて」

 久しぶりに見る真面目な表情。


(何?)

「リュートにとって利益になることだよね?」

(もちろん。シェイルにとってもメリットしかない)

「なら追求しない」

(ありがと。それじゃあ残念だけど、ボクはそろそろ眠る)

 キール君の目が閉じると同時に、一瞬で姿が消えた。


「こっちこそありがと!」

(あ、そうそう。[自己管理]にボクらのグループチャットを追加したから、何かあったら遠慮なく連絡して)

「わ、分かった……」


 [自己管理]もキール君(英霊石)から貰った恩恵なので、ちょっとした機能ならすぐ追加できるようだ。



便利すぎる……。


 眠りについたキール君に小声でおやすみの挨拶をした後、まだご機嫌斜めのシェイルと、終始無言のギンを連れて寮へ戻った──。

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