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晴れ!  作者: 夏みかん
第6章
29/52

Love so sweet 3

暗い部屋にパソコンの画面が青白い光を灯している。その光に照らされている顔はどこか苦しそうであり、難しそうだ。画面に表示されている2分割されたそこにはそれぞれ木戸兄妹のデータがある。それをしげしげと見つめつつ、木戸左右千きどそうせんは心の奥底でくすぶっている何かが蠢くのを感じていた。木戸百零きどびゃくれいのクローンであり、唯1つの完全な成功例というのは自覚している。プロト・ゼロこと天空は生殖機能を持ち、それでいて遺伝子を改良して身体能力を高めた個体として生まれながらもその細胞は常に不安定だった。そのせいか寿命もかなり短く、全力をつくせばすぐに細胞が崩壊して死に至るというリスクをはらんでいた。そのデータを活かして生まれたのがプロト・ワンこと下村明斗である。こちらは完全な人間であり、身体能力や知能は常人の約2倍を誇っているものの、脳によるリミッターが働いているために実際には1.25倍でしか発揮できていない。頭脳明晰、運動神経抜群の秘密はそこにあったものの、もちろん明斗の努力があってこその数値である。赤ん坊だった頃に破棄されたプロト・ワンのデータはもう閲覧できないようになっている。出来るのは管理者である桑田良介を含めた政治家5人だけとなっていた。何故か処分を免れたプロト・ゼロを経て作られた完全な人間であり、遺伝子の改ざんというドーピングの産物であるプロト・ワンを経て完成されたザ・ワンこそが自分だ。完全なる人間を超越した、文字通りの神、それが木戸左右千なのだから。なのに、どうみても自分以下でしかない木戸宗家の後継者候補を見るだけで血が騒ぐ。宗家との決着を望む、宗家の根絶を願う自身の血のせいかと思うが、それだけではないようだ。宗家の継承者を倒し、その血族との間に子をもうけることこそが木戸無双流の悲願なのだから。つまり、木戸周人、天都たち親子を抹殺し、天音との間に子をもうけることで真なる1つの木戸に還る、それが木戸無双流の願いでもあった。だが、そんなものに興味はない、はずだ。自分はただ本能の赴くままに戦うのみ。宗家も分家も関係なく、ただ敵と認識した者を殺すだけだ。なのに、どうにも心がざわついて仕方がない。それもここ数カ月で大きくなってきていると自覚していた。木戸百零、父であり、また自分自身である存在が残っているのだろうか。いや、違う。百零から木戸の技の全てを学び、それを超えた。他流派の技も会得した自分はもう木戸の枠に収まるような人間ではないのだから。


「敗れた記憶を細胞が、遺伝子が、魂が覚えているのか・・・リベンジしたいのか?」


呟く言葉の答えは出ない。だが血が騒ぐ。宗家を殺せと、血を1つにせよとの声が頭に響くような気がして、左右千はパソコンの電源を落として部屋を出た。早く次の指令が下れ、そう願いつつ。



祭の雰囲気は神社の遥か手前からも十分に伝わっていた。浴衣姿の女性が行き交う様もそうだし、浮かれている若者やはしゃぐ子供たちからもその雰囲気がにじみ出ていた。待ち合わせ場所は神社に続く参道の入り口であり、既に半分のメンバーがそこに揃っている状態だ。天都、天音、七星、明斗が一緒に待ち合わせをし、そこに天音の友達である谷口野乃花が中原南と笠松紅葉を伴ってやって来ていた。女性は皆浴衣姿であり、お互いの浴衣を褒め合ったりしている。


「やっぱみんな浴衣なんだな」


そう呟く天都を明斗が少し顔を動かしてそっちを見る。天都はおそらく私服で来るであろう三葉のフォローをしようと考えていた。そうしていると肩をポンポンと叩かれた。振り向けば、浴衣姿のカップルがニヤニヤした顔でそこにいる。


「トキオも浴衣とは・・・・坊主頭にそれじゃ坊さんみたいじゃん」


腕組みした天音の言葉にも得意げな顔をした陣内時雄の横では、その時雄にくっつくようして腕を組んでいる山下里奈がいた。こちらは白を基調とした花柄の浴衣であり、暗い色を基調とした2年生女子軍団とはまた違った雰囲気が出ている。


「里奈に合わせて俺も買ったんだぞ!どうだよ、お似合いの2人だろ?」


そう言う時雄にはにかんだ笑みを見せる里奈が時雄の頬を指で突っついた。その行動の意味が分からないという風な顔をする明斗の横で天都がとりあえず頷いている。


「ってか、あんたらまだ続いてたんだ?」

「天音・・・俺はこう見えて尽くす男だ。そして里奈も尽くす女。お似合いでベストな俺たちが別れるはずないだろ?」

「・・・・・・あっそ」


もう何かを言い返すことを拒否する脳の働きに従う。いちゃいちゃしまくる2人をじっと見つめていた紅葉が鼻の頭までズリ落ちた眼鏡を直しつつ、そそくさと天都の横に立った。


「木戸君、どうかな?私、似合ってるかな?」


もじもじした感じが気持ち悪いが、とりあえず笑顔は作った。苦手というか、嫌いな部類に入る紅葉のこの行動にはもう引くしかない。あれほど自分を嫌っていた紅葉がこうなった理由もわからず、とにかく今は最低限の接触にとどめておきたかった。


「うん、似合ってる」


感情のない声でそう言うが、言われた紅葉は頬を染めて両手をその頬に添える。まさに恋する乙女のポーズだ。


「キモ・・・」


小声でそう言う天音に苦笑する野乃花もまた同意見だ。


「七星の浴衣は新しいよね?」

「うん。去年までのは帯が傷んじゃって」

「それで買い直しかぁ・・・さすがお嬢様だよね」


南の言葉に苦笑し、それから目だけで明斗を見やる。袖のないTシャツにジーパン、サンダルというスタイルがどこかワイルドだ。振られたとはいえまだ未練があるせいか、ドキドキしてしまった七星は神社の方へと顔を向ける。それでも視線はチラチラと明斗に向いていた。明斗は誰の浴衣も褒めていない。興味がないのか、参道に並んだ出店に目を向けている状態だ。それでも七星は知っている。明斗の視線が時折天音に向いていることを。そしてその視線を受けてバツが悪そうに、それでいてどこか照れたような表情を隠そうとする天音を。


「でも、山下さんの明るめの浴衣もいいよね」


そう言う野乃花の言葉を発端にまた浴衣談義が始まった。やれやれといった顔をする天都が1年生組を待ちながらもどこかきょろきょろしているのを見やった明斗がそっとその横にたたずむ。


「瀬尾の浴衣姿を期待しているのか?」

「え?いや、違うけど。瀬尾さんは私服だよ。浴衣を持っていないそうだから」

「そうか」


なんだかんだでそういうやりとりはしているらしい2人に自然な笑みが漏れたがすぐにそれは消える。時雄が近づいてきたせいだ。


「よぉ、天都・・・久しぶりに会った俺、なんか大人になったろ?」


ふふんと鼻を鳴らす時雄を下から上まで見上げるが、変わったところなどない。紺色の浴衣がイマイチ似合っていないぐらいだ。


「別に」


その言葉に明斗も頷くが、そんな2人を見た時雄はやれやれといったポーズをとりながらわざとらしい大きなため息をついた。


「俺はもう大人なわけよ・・・もう子供じゃない。経験して、大人になった」


自慢げにそう言いながら浴衣の襟を直す。そんな時雄の仕草を見て、それから顔を見合わせる。里奈とそういう関係になったことを自慢したいのだろうが、果てしなくどうでもいいし羨ましいとも思わない。


「高校生でパパにならないようにな」


そう言う天都に頷く明斗を見て、時雄はまたも鼻で笑った。


「まぁ、そうなったら父としてきっぱりとけじめを取る!」


かっこいいと思っているのかドヤ顔でそう言う時雄にため息しか出なかった。酔いしれている、そうとしか思えない。そうしていると1年生組がやって来て、全員がそっちを向いた。そしてまた全員の目が点になる。三葉とその親友である小野メロディが浴衣だったからではない。その三葉の横に立つ金髪の美女に目が行ったからであった。いや、天都だけは三葉を見つめていた。藍色を基調とした花火の絵柄の浴衣に身を包んでいたせいだ。そんな天都の視線に気づいたのか、三葉は恥ずかしそうにしながらも小さく微笑んでいた。


「・・・この美女は誰?」


時雄が指を差しながらそう言うが、表情は緩み倒している。髪をアップにした黒に朝顔の模様をした浴衣姿の金髪美女、ウラヌスに釘付けだ。


「私はウラヌス。祭に行く」


外人だとわかるその日本語は流暢ながらどこか単語だらけの片言だった。


「え、と・・・こちらウラヌスさん。私の知り合いで、どうしても参加したいって・・・その、いいですか?」


いいですかも何も来ちゃったものは仕方がない。勿論帰れという者もおらず、ウラヌスは受け入れられた。そう、これは2人の作戦だった。本当に来るのかどうかもわからない、しかも2人がよく知らないウラヌスが来る許可をみんなに得るのも説明が難しいとし、当日に急遽こうなったという風にしたのだ。この作戦が成功し、天都も三葉もホッと胸を撫で下ろしていた。ウラヌスに見とれる時雄の頬をつねる里奈をよそに、天音たちがウラヌスを取り囲む。それを見ていた天都の前に三葉が立った。


「お母さんのなんですけど・・・・その、変ですか?」


恥ずかしそうにそう言う三葉に笑顔を返し、天都はうんうんと頷いて見せる。


「似合ってるよ。でも良かったね、浴衣着られて」

「思ったよりも早く先輩に見せることができました」


そう言って嬉しそうに微笑む三葉を見た天都に微笑が浮かんだ。本当に嬉しそうな三葉を見て自然と出たその微笑を横目で見ていた明斗の口元にも笑みが浮かぶほどに。


「お母さんに祭に行くって言ったら出してくれたんです。クリーニングに出していたみたいで。去年も準備したかったんだけど、お店が忙しくて出来なかったって」

「そっか。よかったね」

「はい!」


そう言い、話に花を咲かせる2人を見ていた明斗が自分への視線を感じてそちらを向く。いや、実際には自分ではなく、すぐ横にいる天都への視線だ。その視線の主はウラヌスである。ただじっと天都を見つめるその視線には殺気もなにもない。それなのに何故か背筋が寒くなるような感じがしているのは何故か。そんなウラヌスは天都から明斗に視線を変えるが、興味がないために表情も変えずにすぐ神社の方へと頭を巡らせた。やがて天音の合図で神社の方に移動を開始する。時雄と里奈のカップルに絡む天音と紅葉が意外なコンビネーションを発揮して南を驚かせ、野乃花とメロディがかなり仲良くなっているなど、プール以降での変化も見て取れた。ウラヌスを従えた天都は三葉と話を弾ませ、その後ろから明斗と七星が黙ったまま歩いていた。気まずいと思うものの、まだ未練が残る明斗の隣にいられるだけで気持ちが高まる。気まずいとは思うものの、それでも隣にいたかった。


「浴衣、似合ってる。その髪形も」


珍しく明斗からそう言われ、七星はハッとした顔を向ける。明斗は相変わらず前を向いたままだったが、それでも七星にすれば物凄く嬉しくなる。その反面、振られてしまった時の記憶が辛さも与えてきていた。


「ありがと」


小さな声でそう言うのが精一杯の中、まだ好きでいてもいいと思う。いや、まだ希望はあるのかもしれないとも思っていた。天音が明斗を振る展開になれば。そんなことを考えている自分が嫌になる。振られた自分がこうして引きずっている事実、そして変な期待をしているという本心、それに嫌悪感を抱いてしまった。いっそのこと距離を置ければ、そう考えるがその勇気も出ないのだ。そうしているとたこ焼き屋の前で先頭が止まる。どうやらウラヌスにたこ焼きを食べさそうというメロディの意見が通ったようだ。そしてこれをきっかけに屋台漁りが開始された。片っ端から屋台で買い物をし、そのまま神社の境内付近へと移動する。金髪の、それこそ柄の悪そうな輩も多いものの、こちらには無敵の天音もいるし、戦力にはなる天都もいる。だからか、皆が皆祭だけを楽しんでいた。そうしてあまり人のいない境内の片隅に腰かけて屋台で買ったものを食べていく。熱いたこ焼きを顔色1つ変えずに無造作に食べていくウラヌスに全員がポカーンとなり、1つの焼きとうもろこしを食べあう時雄と里奈のカップルにドン引きしたりと騒がしい。天都はいちごのかき氷を食べながら隣に座ってメロンのかき氷を食べている三葉を見やった。冷たいせいか少しずつしか食べられない三葉を可愛いと思う。


「メロン、味わってみますか?」

「瀬尾さんがよければ」

「だからの提案ですよ」


そう言い、メロンのシロップが多めにかかった部分をすくい、そのまま天都の口元に持っていく。天都はためらうことなくそれを口の中に入れ、同時にたかれたフラッシュの閃光にハッとなった。そのフラッシュの主はメロディと天音だった。スマホで決定的な写真を撮られた羞恥からか、顔を真っ赤にしつつ睨む。


「なんだよ!」

「あーん、だって・・・しかも関節チューだし、キモーイ!」

「そうかそうか、うんうん、青春だねぇ」


畳み掛けるようにそう言われた三葉は顔を真っ赤にし、天都はそんな2人を蹴散らしにかかる。ウラヌスはイカ焼きを頬張りながら横目でそのやりとりを見つめている。そんな面々から少し離れた場所にいる明斗は天都に追い回されている天音を見て苦笑していた。そんな明斗を見つめる七星は近くに居づらくなって少し奥の方に移動して腰かける。明斗はいつも天音を見ている。そして時々天音も明斗を探すような素振りを見せていることも知っていた。お互いに意識し合っている、それがわかるだけに辛い。ただ座って俯く七星に気付いた明斗が立ち上がり、七星の脇に立った。そんな七星はただ明斗を見上げることしかできない。だが明斗と目が合った瞬間、無意識的にその腕をそっと掴んでいた。


「やっぱり、私は・・・・」


そう言いかけた時、天都がやって来るのを見て手を離し、境内を降りて奥に歩き出す。気まずい、ただその意識が体を動かしていた。


「あまり奥に行くと危ないぞ」


七星ではなく天都にそう告げて天都に追うよう指示する。素直にそれに従う天都はまだ奥に進もうとする七星に声をかけた。


「七星ちゃん!奥に行くと危ないよ!」


そう言った傍から普段履きなれない草履が災いしてか、大きく前につんのめる。あわてて駆け寄る天都が七星の体を支えるようにした時だった。


「私はやっぱり・・・下村君が好き・・・・振られたけど、好きなのぉ・・・」


みるみる涙声に変化していくその言葉が天都の胸に突き刺さる。まだ振られて間もないのだ、その気持ちは理解できた。だが相手はあの明斗なのだ。万に一つも七星を好きになる可能性はないと思える。元々明斗は七星など眼中になかった。いや、異性に対する想いなど微塵も持ち合わせていないようだった。どんなにちやほやされても決してなびかない鉄の意志、それこそ同性愛者ではないかと噂されるほどの徹底ぶりだ。そんな明斗が好きになったのはとても女の子とは思えない性格をした天音なのだ。ぽろぽろと涙を流し、よろけるような七星を抱きしめたのは必然か、偶然か。されるがままの七星が泣いているのが伝わってくる。小刻みに揺れる体を止めようとするように、天都は七星の体を抱く力を少し増すようにしてみせた。


「僕じゃ明斗の替わりにならない、かなぁ?」


一瞬だけ七星の動きが止まる。だが、しゃくりあげるのは止められないのか、また一定の動きを繰り返し始めるのを感じていた。


「ずっと、好きだった・・・中学の頃から、ずっと好きで・・・・・僕は・・・・」

「・・・・して?」

「え?」


かすれるような声のせいか上手く聞き取ることが出来なかった。


「どうしてそんなこと、言うの?」


今度ははっきりと聞き取れた。それは否定の言葉だ。ぐっと両手を突っ張るようにして自分と天都との間に空間を作っていく。それは拒絶のポーズだ。されるがままに七星を解放した天都は涙目で自分を睨む七星から目が離せなかった。壊れそうなほど華奢な身体とは裏腹に、その目に宿る光は力強い。そう、力強い拒絶の光であった。


「どうして、私を混乱させるの?」

「こ、混乱って・・・」

「天都君は瀬尾さんと仲良くして、私とも・・・・で、私が好きって、そんなのっ!」


口にしている言葉の意味が自分でも理解できていない。ただ言いようのない憤りだけを吐き出している。最低だと理解していながらもそれを止める手段を持ち合わせていなかった。


「好きになんてならないでっ!私の、私を、もう・・・・」


言葉が終わらないうちに七星は駆け出していた。天都はそれを追うことも出来ずにただ立ち尽くすのみ。七星の言葉を何度も何度も頭の中で繰り返すことしか出来ない。結局、自分は何がしたかったのだろう。七星が好きで、それでいて三葉とも仲良くしていた。それが気に入らなかったのだろうか。いや、それは七星も同じはずだ。明斗が好きで、それでも自分とも打ち解けあっていた。何が違うのかがわからない。自分への恋愛感情はなく、自分は三葉に好意を感じているのが違うのか。いや、そもそも自分は何故、今、ここで告白をしてしまったのだろう。涙も出ず、ただ乾いた笑いが込み上げてくる。これが失恋かと、納得していた。恋は甘酸っぱいなどというが、それは嘘だ。ただ苦いだけ。それとも両想いになれば味が変わるのか。天都は雲で星も見えない空を見上げた。自分の恋は終わった。この夏は苦すぎる。ただそういう気持ちでいっぱいのまま歩き出す。そうしてみんなの元に戻った天都は七星が急用で帰ったと告げ、そのまま境内に腰かける。いつもと明らかに違う雰囲気の天都に気付きながらも、どこか近寄りがたい三葉はそれ以降天都の傍に近づくことはなかった。本能的に悟っていたのかもしれない、天都が失恋したことを。だから、月曜日の長野行きは自分1人で行くことになるだろうと予測していた。ただ、もしも一緒に行ってくれるのなら、その時はいつもの自分でいようと思う。決して近づかず、そして離れない距離を保つ。いつかきっと自分も天都に振られるのだから。それがわかっていても好きな気持ちは止まらない。だから自分は普段の自分でいよう。それが瀬尾三葉の恋なのだから。



天都は空元気を振り絞って普段の自分を演じ続けた。はしゃぐこともせず、かといって寡黙にもならず。違和感はあれど、誰も何も気づいていない。いや、気付いていたのは4人か。明斗と、天音と、三葉と、そしてウラヌスだ。ウラヌスは常に天都と天音の動向に目を光らせていた。確かに天音は強い。その覇気は感じられるし、強さというレベルも高いと本能が告げている。だが、強さのランクはAでしかない。強いとは思うが怖いとは思えないのだから。そして天都からは何も感じない。強さの覇気も恐怖も。昨日感じたあの圧倒的な恐怖、潜在的な強さも何もない。凡人、そう評価するしかない状態だ。そういう意味では天空の下した判定は正しいのだろう。だが、凡人すぎるところが怖い。どの天都が本物かといわれれば、間違いなく昨日の天都だ。彼の中の異形なる存在は確かに存在している。勘だが、それは正しいと思っていた。凡人すぎる故に怖い、それがウラヌスの下した今日の天都の評価であった。

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