例題.4
取り合えず出きる発動機周りの小改造を行なった。
改造を行なうには事前の図面提出を求められたので随分と苦労した。
液冷コンデンサーの増設と。(燃え残った自動化車から獲った。)
予備冷却水入れ(一斗缶蛇口付き。飲料水として使われることが多い。)
水温計と油温計。(自動車から外した。)
動力取り出し装置(壊れたトラクターから外した駆動プーリーが何故か填まった。)
それに、平ベルトで繋がった排水ポンプ。(2吋ポンプでホースを繋いで手動で水垢を排水する。)
排水ポンプは元は電動機の物だと思うが。
手動ポンプとバケツで垢水を排水するのに随分と苦労していた為、兵に感謝された。
後々、漏水量が増えたので随分と楽になったハズだ。
特に船体を洗うのによく使われた。
あと…、芋。
定期的にフネを出すが毎回帰着予定が大幅にズレる。
潮の流れに逆らえるほどの馬力が無いので仕方が無い。
何度か怒られたが。
潮位表と天気図を見せて貰えるコトになり大まかな計画を立てるコトに成功した。
何度も川を往復した。
驚いたことは、川を登る時に同じフネを見たのだ。
川を下る後部外輪船。
兵達が帽子を振っている。
「あれは…。」
「ああ、たぶん、六号艇だな。」
「六号…。」
他にも有るのか?このフネ。
「そうだな…。俺が見たのは14号艇まで有った。材料が有ったら未だ作っているのかもな。アレはパレンバンの所属だ。まあ、我々は最近、昼に付くから何時もすれ違いだからな。」
「「おーい!」」
コチラも手を振っている。
「おめえさんが書いた整備手順書と改良図面で随分と助かっていると言われた。」
「はあ?」
「ま、ウチの分隊も鼻が高いってヤツだ。こんなボロ舟渡されてどうしようかと思ったら何とかモノに成ったんだからな。」
「はい…。」
「現地改修はご法度だがコイツは元から員数外だ、気が楽だろ。ハハハ。」
気軽にいう軍曹、ボクがこのフネ動かすのにどれだけ苦労していると…。
そのままパレンバン指令部で荷を受け取りバンカ島へと向かい改修を受けた。
船底の漏水が酷くなったので修理と改造だ。
図面は作って許可を貰ったので現地の工兵と改修の話で連日大忙しであった。
船首に波きり構造にして、船底と両舷、全面にバルジの角材を付けた。
かなり自重は重たくなったが浮力は増大と直進安定性は向上するはずだ。
難点は直に腐る事だが、ココには木が沢山ある。
腐ったら交換するコトに成るが…。
幾ら何でもそんなに長く使わないよね?このフネ。
工兵隊に木工大工が居たので随分と複雑な木組みになってしまった。
特に船底は乗揚げ、離岸がしやすい様に突起を無くすコトを強くお願いしたので妙に凝った作りに成ってしまった。
外観からは解からないのだが…。
手間が掛かったのは船体の穴だった。
何故か造船所に有るのが独逸式の溶接機だったのだ。
非常に使いにくい。
学校から、娑婆でも仏式しか使った事が無いのだ。
試行錯誤の上に何とか穴を塞いだが。
何分、船底のコトだ後々まで心配の残る仕事になった。
なお。軍曹達は連日、町に出撃して酒臭い息を吐きながら帰って来た。
ちゃっかり休暇申請を出していたらしい。
くそっ。