14
「おはよう、もう平気なの?」
めったに休まない私が休んだため、周りは想像以上に心配してくれた。
適当に言葉を濁す。
具合悪くなることあんまりないから、ホントに適当だけど……。
昨日私の分まで仕事を片づけてくれた愛衣に、感謝!
休んだけど、仕事が増えてるなんてこともなかったし、とくに問題もなく一日終了。
「由夏、身体大丈夫なら一緒にご飯食べて帰らない?」
愛衣が人懐っこい笑顔でスマホのクーポンを見せてきた。
オムライス専門のお店。
昨日散財しちゃったけど、クーポンあるしこれぐらいなら……。
一人になるの、ちょっと嫌だし……。
「いいよ、行こう!珍しいね、愛衣が新しいお店開拓するなんて」
「たまには、ね!」
クスクスと笑いながら帰り支度をして会社をでる。
ああ、今日も一日終わったぁ。
仕事は嫌いじゃない。
職場には愛衣もいるし、社内の人もすごくいい人ばっかり。
新卒からずっと同じ会社だから、仕事も慣れている、後輩もいるからそれなりの緊張感に責任感。サボるなんて、考えたことも無かったのは、きっとこの会社だから。
でも、やっぱり終わるとホッとするのは、私が怠け者だから、かな?
「いろいろ、あるねぇ」
オムライスって家で作れば一種類なのに、なんでお店だとこんなに種類多いんだろう?
定番のケチャップか、ホワイトソースか、デミグラスか。
どれもおいしそうだし、困った。
迷っていれば愛衣が笑う。
「私ホワイトソースにする。由夏は違うの頼んでね!」
結局、定番のチキンライスをくるんだオムライス。
定番なのに、今まで食べたことないぐらいにすっごく美味しい。
感動しながら食べていれば、愛衣が笑う。
「ここね、徹さんに勧められたんだ」
「え?」
「お店知ってたのは正樹さんらしいんだけど。
徹さんが私に教えてくれたの。由夏がオムライス好きだからって」
「そう、なんだぁ」
覚えてたんだなぁ。
小学生のとき、お互いの親が残業だとよく徹の家にご飯を食べに行った。
その頃よく作ってくれたオムライス。
懐かしいなぁ。
こんな風に、誰かに好きな食べ物を進められたことなんて、いつからないんだろう。
嫌いなものが少ない私は、いつも誰かの食べたいものに合わせている。
彼氏だって、私の好きな食べ物なんて、知らないかもしれない。
それに不満があるわけじゃないけど、やっぱり誰かが私の事を考えてお店を選んでくれることは、すごく嬉しい。
徹は、私にとって何なんだろう?
「昨日さぁ、実は、徹と買い物に行ったんだ」
昨日の寝坊の理由、遠出した買い物。
言ってしまった言葉、言えなかった気持ち。
止まらない言葉を愛衣は黙って聞いてくれた。
「もう、徹さんとは会わないの?」
「……たぶん。」
「もう会わないなら、最後にちゃんと話してみない?
聞きたいことも、言いたいことも、全部」
「……」




