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情景
『 題名:飛翔
中学まで同じだったあなたが、私の手の届かない、遠いところに行ってしまいました。高い高い、あなたが望んでいた、最高の舞台に。あなたの努力をずっと見ていました。ずっとずっと、見てきました。あなたの願いが、少しでも叶うことを、遠くから祈っています。
活躍を期待しています。 飛翔、桐山学院!』
とある大きな高校野球ファンサイトの個人応援メッセージ欄に投稿された文章。
差出人の名はない。この文章を打ち終えた少女の指先は、震えていた。そのせいで、名前を打つことができぬまま投稿した。
それでもいい。名前など、重要なことではない。
ーーー少しでも、少しでもいいから、届くように。
握った拳は、堅く、優しい。
ある夏、日射しがとても強い日の話だった。