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 きつねつき。狐憑き。日本全国に渡りその名を知らしめる、古典的な話。

 死んだ狐や、妖怪の化けた狐、あとは狐火とか、狐に関しては様々な話があるが、人にとり憑く話というのはとてもポピュラーだったりする。

 しかし、ポピュラーな故に、狐憑きがしでかした伝説には限りがない。ポピュラー中のポピュラー、王道といえば稲荷様だろうか。しかし、伝説の中のたった一行でしかあらわされないような現象だって、きちんとあったそうな。

 埼玉は秩父。きつねつき。娘が「コン、コン」と言いながら崖から落ちたが、傷一つ負うことはなかったという。

 また、別の話では、狐つきになった女を稲荷様の分身の前に連れていくと、気を失ったかと思うとその後正気に戻ったという。

 こちらは有名な話ではない故に本で見つけることはできなかったが、ある程度の絞りができたので、ネットで検索を掛けることで見つけることができた。


「それで、この神社なの?」

「うん。県内だと、あとは秩父まで行かなきゃなさそうだし」

 立川に憑いている狐を祓うには、稲荷様の信仰をしている神社やその類の施設に向かう必要があった。最悪狐のお人形でも儀式を行うことはできるのだが、やはり心もとないだろう。

「なんで、」

「うん?」

「どうして、猫じゃなくて、狐なの?」

「猫はあまり憑かないんだ。大抵は化ける。化け猫が老婆を食べる話とかあった気がするし」

「あれ?化け猫は老婆に化けるんじゃないの?」

 どっちだったっけ、と2人で悶々と。

「それで、その稲荷様はどこ?」

「えーっと、神社の目立つところにあると思うけど・・・」

 あった。

 神社の境内の割と中心に、石像が2つ。あったにはあったのだが、

「これって狐、なの?」

「のはずだね。稲荷様信仰だったし」

 石像の顔面と思しき場所がほとんど削れている。偶像崇拝を行うならむしろ狐のぬいぐるみのほうがいいような気がするが、神社のパワーかなんかでうまくいくだろう、という結論に至ったのはこれから5分後。


「こういうのって、素人がやって大丈夫なのかな」

「へんな魔法陣とか引くわけじゃないし大丈夫でしょ。神様にお願いするときも自分でお賽銭入れるじゃん。あぁ、でも一応二礼二拍手一礼とか今回はいらないよ」

 稲荷様が神様かどうかはわからないけど。

「じゃ、始めよう」

「うん」


 立川は、石像の前に立ち、ひざまついた。そして、両手を合わせ、祈る。


 今回、狐憑きを祓う方法に、小難しいことはしていない。ただ、自分の体から出ていって欲しいと狐にお祈りすればいいだけだ。

 こんなオカルトチックなことをするのは正直業腹だが、やはりやるべきことはするべきだろう。

 そう言えばあの伝説の一説、狐を祓ったときの話。あれには続きがある。

 稲荷様の前で気絶した女の口に、煮干しが詰まっていたという。


 ちょうど目の前で倒れた立川のように。

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