フォックスフォール04
「お帰り、新田君」
説教を受けてから1時間後、僕はようやく仕事場に戻ってきた。企画実行部と言っても、担当場所のあらゆる作業を行うので、内部装飾も仕事に入る。講堂内の飾り、張り紙、その他もろもろを作る手芸的な要素が多い。
苦手な作業を乗り越え、放課後。帰り道。
「ねぇ、新田君」
立川がいつになく深刻な表情で話してきた。まだ出会って2日目だけれど、この人の表情の変化が激しい上わかりやすいので、手に取るようにわかる。単純というか純粋というか。
コン、コンと足音がなる。
「私ってさ」
こういう時の対処は慣れている。ただ、聞いてやればいいのだ。反論や口を挟むようなことをしてはいけない。
不安を、どうにかしたいのではなく、とりあえず共有してほしいのが一番の心情だろう。
「うん」
相槌くらいは打つけど。
「人間じゃないのかな」
声が震えている。
「4,5メートルもの高さから落ちて、なんともないなんて、普通じゃないよね」
怖いよ。
そう言って、立川はうずくまった。
「ねぇ、私って、なんなの?」
そして、泣き始めた。
通学路で泣かれるのはまずい。
「どっからどう見ても人間だろ。寝言は寝て言え」
そう言って、自販機の近くまで誘導した。
「何飲む?」
「ポカリ」
130円の150mlペットボトル。安い。
ガラゴンッ、と重々しい音を立ててスポーツドリンクが出てくる。
「はい」
キャップを開けて渡す。少し歩いて呼吸も落ち着いてきたようだからむせることはないだろう。
「ありがと・・・ゲホゲホッ」
むせてしまった。
「ねぇ新田君、私をこんなところに連れ込んでどうするつもりなの」
コン、コン、とコンクリに足音を響かせながら立川は言う。
「そのセリフだけ聞くとなんだか僕がイケナイ雰囲気を出している見たくなってしまうからやめなさい」
なんとか立川を泣き止ませた僕は、近くの神社まで来ていた。もちろん、立川を連れて、だ。
幽霊だとか、そんなものがいるかと言われれば、僕には肯定しがたいことである。正直、思い込みの副産物の様なものだと考えている。
しかし、今回幽霊なんてものがいるかいないかなんていうのは僕にとってはあまり重要ではない。
「その変な体質を治すんだよ」
「やんっ」
「なんだその顔は」
「この流れでほんとに怖いんだけど。まじで」
「うっせーjk」
さっきまで泣いていた女子とは思えない。気まぐれさんかな。
「先輩は猫だ、と予想を立ててたけど、たぶん違うね」
「へ?」
「君にとり憑いているのは、狐だ」