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 表面的に異常が見られないとはいえ、気を失って倒れているうえ、あの高さから落ちたのだ。保健室に運ぶのが適切だろう。

「大丈夫か?聞こえてるか?」

「う・・ん・・・?」

 意識が若干戻りつつあるが、会話は無理だろう。

 ここから保健室までは道が入り組んでいて50メートルないくらいだ。おぶって行くとして、だいたい1分かかる。

「よいしょっと」

 立川を背中に乗っけて、腕を固定する。立川の意識が薄いので、とても重たい。おぶせられる側の意識のあるなしでも、運ぶ側の負担というものは変わってくるのだ。

 

 コンコン。とノックする。

「どーぞー」

 中から声がかかる。本当は緊急事態もいいところなのでこんな悠長な事している場合ではないのだが。

 ドアを開けて中に入る。

「あれ、どうしたのその子!あぁっと、こっち来て。そうそう、ゆっくりおろして」

 養護教諭に保健室のベッドに誘導され、そのまま寝かす。

「君はそこのソファに座ってて!あとはこっちでやるから」

 養護教諭の命令というか助言に従い、ソファーでくつろがせていただく。

「大丈夫ですかー?聞こえますかー?」

 などと立川に尋ね、立川はそれに

「うー」

 と返している。ある程度緊迫した雰囲気が続く。


「気を失っているだけみたいね。何があったの?」

 一通り終わらせた養護教諭が机に座り、ペンとメモを手に取っている。

「すみませんその前に、あの子の体に痣とか残ってませんでしたか」

「そんなのなかったね。身体のほうに異常は見られなかったよ」

 やはりか。服の下など、確認するのがはばかられるような部位は深くまで確認していないが、おそらく何もないだろうと予想していた。

「そうですか、実は」

 なんて説明しよう。講堂の2階から落ちたんですなんて言って信じてもらえるとは思えないが、しかし、見えないところでの異常が起こっているかもしれない。万が一を考えると、やはり起こったことをありのままに話す方が良いのだろうか。

 そこまで考えて、言った。

 言ったら、怒られた。

「そんなことがあったらまず周りの人に助けを求めなさいよ!無理に動かしたら変な障害が残るかもしれないんだよ!」

 まったくもってその通りだった。反省。

「でも、そうするとおかしいね」

 どうやら、信じてもらえたようだ。

「はい。あれだけの高さから落ちたのに、打撲痕の1つもないなんて」

「まぁ、その辺は考えても答えは出ないだろうから、考えても無駄ね」

「ですね」

 と、立川のほうを見ると、体を起き上がらせていた。

「うーん・・・」

「大丈夫か、立川」

「ふぇ?」

「僕の名前、わかるか?」

「にったけいすけくん」

「ここがどこだかわかるか?」

「えっと、保健室?」

「今朝の朝ご飯は?」

「ベーコンエッグにパン」

「スリーサイズは?」

「えっと・・・」

 バシッと先生に叩かれた。

「頭のほうは大丈夫みたいですね」

「きみの頭以外はね」


 この日、立川は早退し、病院で検査を受けたが、どこにも異常は見受けられなかったという。そのとき、周囲へは「階段で転んで落っこちた」と説明している。

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