祖父話3 魔封じの腕輪と・・・の指輪
だからといってわしがしたことが帳消しになるわけはないのだ。
セルジアスはもう一度溜め息をつくと、侍従のアロンソに私室からある物を取ってくるように言った。
アロンソからその箱を受け取ると、話し始めた。
「話し合うことはいくつかあるが、まずは、セリアが魔力を暴走させないようにしようと思う」
そう言って箱のふたを開けた。
中には凝った意匠の銀色の腕輪と指輪が入っていた。
「これはうちに伝わる魔力を封じる腕輪だ。初代の妻であるタラウアカ国の王女だったアデリーナ姫の嫁入り道具の一つだ」
「お義兄さま、おかしくありませんか。魔力を封じる腕輪が嫁入り道具だなんて」
「そうですわ。普通7歳を過ぎれば、魔力を封じる腕輪などなくてもいいぐらいに、制御できるようになりましてよ」
「そうだな。7歳を過ぎていればな」
「いくつで嫁いでいらっしゃいましたの」
「3歳だそうだ」
「「まあ!」」
「それでは、その指輪は?」
「これは腕輪と対になっていて、これをつけたものは腕輪をつけている者の魔力に干渉することができる物だ」
ためらうようにセルジアスは言葉をきった。
顔を上げるとある人物を見つめながら言葉をつづけた。
「これをセリアに使おうと思う。そして指輪を、ミルフォード。お前に託したいと思う」
ミルフォードがセルジアスのそばに近寄った。
「もちろん、今回みたいなことが起こらないように、セリアには魔法の訓練を始めようと思う。だが、万が一ということもある。これをつければセリアと離れていても、暴走しそうになるのはわかるし、干渉することで外部から制御することもできる。だが、これを使う者は精神力を試されることになる。相手の暴走に引きずられないだけの強さが必要だ。本当なら私がつけるべきだが、セリアが一番信頼しているのは、お前だと思うのだ。子供のお前には荷が重すぎるだろう。無理にとは言わないから」
「父上」
ミルフォードはセルジアスの言葉を皆まで聞かずにさえぎった。
「私に預けてください。私が様々なことからセリアを守ります」
セルジアスはミルフォードの目を見て頷くと指輪を渡した。
それから、細い鎖も渡した。
「しばらくはこれに通して首にかけているといい」
「はい」
2人のやり取りを見守っていたアーマドが聞いてきた。
「親父、この指輪って初代も使ったのか」
「ああ、アデリーナ姫が亡くなるまで互いに外さなかったと聞いている」
「でも、魔力を封じる腕輪なのでしょう。それに子供が使うものなら大人になるとつけていられなかったのではありませんか」
「これは、装着するとその人物に合わせて大きさが変わる物らしい。それと魔力を封じるといっても完全に封じるものではないそうだ」
「完全に封じないのですか」
「そうでなければ、魔力の制御など覚えられないだろう」
「確かにそうですわね」
「外すときはどうしますの」
「指輪が解除キーとなっているのだ」
「ところで、初代は何歳でしたの」
「たしか21歳だったと思う」
「政略結婚にしてももう少しどうにかなりませんでしたの」
「当時の状況がなぁ~。タラウアカ国との戦に勝利し、人質として差し出されてな」
「それは・・・」
歴史を思い出したのか、皆口をつぐんだ。
それを待っていたようにアマリアが聞いてきた。
「おかあさま、セリアおねえさまは、だいじょうぶですか」
「ええ、みんなから魔力をもらったから、もう少ししたら目を覚ますと思うわ」
その言葉を聞いたセルジアスが話しだした。
「そのことだが、皆にはセリアに魔力を分けた話をしないでほしい」
「何故だ、兄上」
「まだ、セリアには魔力が枯渇しかけたことは話したくない」
「いずれ分かるだろう」
「セリアは聡い。我々の言葉で自分がどういう状態だったか、気付いてしまうだろう。そうしたら、どうなると思う。最悪セリアの心が壊れてしまうかもしれないのだぞ」
「あなた」
皆、息をのんで固まってしまった。
ミリアリアの顔色は真っ青になっている。
「ずっと伝えないわけじゃない。落ち着いてからにするだけだ」
「ええ、そうね」
話しに集中していたわしらは気が付いていなかった。
セリアテスが目を覚ましたことに。
「あっ」
ビアンカの小さな声が聞こえた。
ビアンカの目線をたどり、起き上がるところのセリアテスが目に入った。
セリアテスはしばらくわしらを見ていたが、手で頭を押さえだした。
セルジアスがそばに行き、肩に手を置いた。
セリアテスは魔法を使ったことにより、同調現象をおこしているようだ。
叫ぶように言葉を紡ぐセリアテスの肩を、セルジアスが強く揺さぶった。
セルジアスに落ち着くように言われて、セルジアスの言葉に耳を傾けている。
身体のことを問われて、異常はないと答えている。
次に倒れる前のことをきかれて、セリアテスは震えだした。
わしらが何も言わなくても自分がどういう状況だったのかわかっておったようだ。
ミリアリアがセリアテスのそばに行き、ギュウっと抱きしめた。
96話です。
はぁ~。
女性陣が強いです。
男性陣が言葉を挟めません。
別に家庭で尻に敷かれてるわけではないからね。
ただ、二人が口と頭の回転が速いだけだから。
あと、黙っているのが苦手・・・ではないか。
時と場合はわかっているものね。
それでは、次話で。




