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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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祖父話2 助かるとわかって・・・

輝きをなくした髪と白い顔のセリアテスを見て、本当にギリギリだったとわかった。

執事長のユーリックに指示を出す。


「ユーリック、セルジアスに連絡し呼び戻せ。アルンスト侯爵家とルートガー公爵家にも連絡し、すぐに来るように伝えてくれ」

「お待ちなさい」

「何を待てというのだ」

「気持ちはわかるけど、冷静になりなさい。リチャード」

「だが、一刻を争うんだぞ」

「わかっています。でも、このまま、皆を呼び寄せてはいらぬ邪推を生むわ。ユーリック、セルジアスにはキャバリエ公爵の警備についている者から連絡があったと伝えなさい。外交担当のあの子と連絡を取りたいと言ってきたと。アルンスト侯爵家とルートガー公爵家には茶葉が届いたから取りに来てほしいこと、私が会いたがっているとも伝えて。そのついでにアーマドとエグモントにも、キャバリエ公爵のことを伝えてほしいと言うのです。あの子達なら察してくれるはずよ」

「わかりました」


ユーリックがすぐに部屋を出て行った。

セリアテスの方を見ると、抱えたミルフォードがセリアテスの右手を握っている。

私が声をあげるより早くセレネが声を出した。


「やめなさい、ミルフォード」

「でも、おばあさま。早くしないとセリアが」

「わかっているわ。でも、焦っちゃだめよ。魔力をただ分け与えればいいのではないのよ。セリアテスが目を覚ました時に私達の姿を見て気付かれてはダメなのよ」


セレネの言葉に頭が冷えて冷静になる。

枯渇寸前の様子に焦り、魔力を分け与えることしか考えていなかった。

魔力を分け与えることは誰でもできる。

だが、実際に渡せる魔力は微々たるものだ。

たとえるなら、細い瓶の口にバケツで水をいれるようなものだろう。

それでも、今のセリアテスにはやらないよりましだろう。


「まずはセリアテスをベッドに寝かせましょう。それから一人づつセリアテスに魔力を分け与えましょう。あなたたちもセリアテスに魔力をあげてくれるかしら」


集まった使用人たちにセレネが頼む。

皆、顔色を悪くしながらも頷いている。


「まず、10名ついてきてくれるかしら。他の皆は仕事をしていてくれるかしら。では、行きましょう」


わしが抱き上げてセリアテスの部屋へと移動する。

ベッドに寝かせるとセリアテスの左手を握る。


「あなたもシールドを破るために魔力を相当使ったのだから無理をしちゃだめよ」


セレネの言うこともわかるが、わしのすべての魔力を渡しても助けて・・・?

なんだ?

魔力を注ぎこみながら信じられない思いでセリアテスを見つめた。

わしの表情を見ていたセレネが声をかけてきた。


「どうしたの。リチャード」

「セリアテスが」


続く言葉が出てこない。

セレネが私と変わるようにセリアテスの手を握る。

そして、驚愕の表情で告げてきた。


「これは・・・これなら、助かるわ」

「どういうことですの、お義母様」

「セリアテスに渡した魔力がほぼそのままいきわたっていくのよ」


セレネがミリアリアと場所を変わる。

ミリアリアも手を握りセリアテスに魔力を注いでいく。


「まあ!」


ミリアリアも気付いて驚きの声をあげた。

魔力を注がれたセリアテスは髪に輝きが戻ってきていた。

白かった顔も頬に少し赤みが差したとおもう。


誰からともなく、ホゥ~ッとため息が漏れた。


「皆、無理をしない程度にセリアテスに魔力を分けてね」


セレネの言葉に右と左に分かれて、一人づつセリアテスの手を握っていく。

魔力を注ぐにつれ、顔色の良くなるセリアテスに安堵した顔をする。

それぞれの負担にならないように注意しながら、一人、また一人とセリアテスに魔力を注いでもらう。

もっと注ごうとしてくれる者を止めることの方が、大変だった。

終わった者と入れ違いに別の者が部屋に入ってくる。


廊下を走ってくる足音が聞こえた。

部屋に入ってきたのは、セルジアスとアーマドだった。

少し遅れてエグモントも入ってきた。


「これは一体、何があったのですか」


また、複数の足音が聞こえてきた。

ソフィティア、シュレイン、アマリア、ウルリーケ、ビアンカ、ギルベルトも到着したようだ。


「お義父様、これはどういうことですの。魔力を分け与えるなんて、何故、こんなことになっておりますの」


ソフィティアが噛みつくように言ってきた。


「皆、よく来てくれた。すまないが皆にもセリアテスに魔力を分けてほしい。何があったのか話すから」


そして、わしは、今日起こったことを皆に話した。

ソフィティアとウルリーケは子供たちに聞かせたくなさそうだったが、子供たちを含めて皆に話したのだ。

話を聞くうちに皆の顔色も悪くなった。


その間にも皆からセリアテスに魔力が注がれる。

まだ、幼いアマリアとギルベルトもセリアテスに魔力を分けてくれた。


わしの話が終わると、皆一切に溜め息をついた。


「話は分かりました。これは不測の事態だったと」

「まあ、そうじゃが、悪いのはわしじゃな」

「ええ、そうですね」

「・・・もう少しやさしく出来んのか、お前は」

「子供じゃあるまいし、じじいにやさしくしてどうしろと」

「仮にもお前の親じゃぞ」

「ならば、親らしいことをしてください」


セルジアスの言葉にわしは少し救われた気分になったのだった。



95話です。


・・・・・・・


いや、・・・ばかり打っても仕方ないんだけどね。

まあ、危機を脱してよかったよね・・・


じゃないんだよ。

逆にもっと大変な事態になろうとしてるんだよ。

・・・・・


どうも、ここのところ、眉間にしわが寄ってしょうがないです。

なので、さっさと次話に・・・

次話に・・・


筆が進まないです。

スランプではなくて、ピッタリくる言葉が出てこないだけで・・・。


あっ、補足!

よくある設定ですが、魔力は他の人に渡すことができます。

ただ、渡せるのは注いだ魔力の1割から2割程度です。

その人の魔力の残量は髪の輝きを見ればわかります。


なので、セリアちゃんは本当に危ないところでした。

じい様がセルジアスを呼び戻し、アルンスト侯爵家とルートガー公爵家を呼んだのは高魔力保持者だからです。

ですが、セリアちゃんへの魔力変換率が8割から9割近くあり、大事にならずにすみました。


こんなところかな?


ここまで読んでいただきありがとうございました。

では、次話で。


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