9-2 ゴムが欲しい!からの・・・あれ?
こんな素敵アイテムは手に入れなければ!
それでは、どこで購入できるか訊きましょう。
「私も欲しいわ。どこで購入すればいいのかしら」
「いえ、これは、お嬢様がお使いになるようなものではございませんから」
「なんで、おかしいわ。誰が使ってもいいはずよ」
「いえ、お使いになられるときれいな御髪が傷んでしまいます」
「そんなことはないはずよ」
「いいえ。前例がございますので」
おかしいわ。髪の毛をゴムで縛ったからって傷むはずがないわ。
もし、傷んだのだとしたら、すごくきつく縛ったか、お手入れの仕方が悪かったのよ。
そうおもい言ってみましたがわかってくれません。
それでもゴムが欲しい私は、いろいろとサラエさんに言ってみました。
「何を騒いでるの、セリアテス」
戻ってくるのが遅かったからか、おばあさまが居間から顔をのぞかせました。
「おばあさま。私、ゴムが欲しいのです。購入先を教えてほしいとサラエさんに言ったのですが、私が使うものではないと、教えていただけません」
「とにかく落ち着きなさい。部屋に入って座ってから話を聞くわね」
仕方なく部屋に入り、椅子に座ります。
「それで、ゴムが欲しいとか言っていたけど、髪を縛るのに使いたいの」
「いいえ、違います。服を改良したいのです。だから、かなり長いものがほしいのですが。えっと、長さの単位はなにかしら。ああ、それから、お兄様の小さくなった服をいただくわけにはまいりませんか。あ、でも、これも紐で縛るのかしら。紐だとやっぱり動きにくいわよね。ボタンを何とか手に入れないと。でも、作るしかないのかな。糸玉じゃだめかしら。あー服の形状をみないと改良のしようがないかな。ホックなら簡単に作れるかしら。ファスナーは・・・難しいわよね。ダッフルコートみたいな引っかけるタイプなら簡単かしら。それから、エプロンがあるといいわよね。割烹着タイプもすてがたいし。それと・・・」
途中から、自分の思考に入り込んでつぶやきに変わっていました。
思いつくまま言葉を並べていきます。
「セリアテス!」
突然耳元で大きな声がしました。
私はハッと顔を上げました。
皆が私を見ています。
私の顔から血の気が引いていくのがわかります。
(どうしよう。やっちゃったわ。聞かれてたわよね。いいわけできないわ)
「セリア、そんな顔をしないで。大丈夫よ。「彼女」に言われたことを思い出したのよね」
お母様が微笑みながら言ってくれました。
そういえば、彼女の言葉を思い出したら教えてほしいと、王妃様に言われてました。
「はい、お母様」
「服にかかわることなのね。何をどうしたいのか教えてくれるかしら」
お母様の言葉に勇気をもらいました。
「あの、お母様。今着ている服もそうですが、とても不便です」
「不便?」
「後ろで止めるので一人で着替えが出来ません」
「普通はそうじゃの」
「それですと、有事の際にすぐに行動ができません」
「有事?」
「それに魔物と戦うときにドレスでは、動きを阻害されます」
「魔物と戦う?」
「乗馬をするときもドレスですか」
「ええ、女性は鞍に横向きに座るわね」
「それでは、馬を疾走させたら振り落とされてしまうかもしれません」
「何を言っているの、セリア?女性は馬を疾走させたりしないものよ。乗馬をするのは嗜みよ」
この世界の常識にクラクラしてきました。
何と言おうか迷い、黙ってしまいました。
「セリアテス、聞いてもいいかのう。なぜ、セリアテスは魔物と戦うなどということを思ったのじゃ。魔物と戦うのは男の仕事じゃろう」
おじいさまが聞いてきました。
やはり、そういう考え方でしたか。
「おじいさま、魔物と戦うのに男も女もないと思います。それよりも貴族の義務の方が大切です」
「貴族の義務かの」
「はい。自分の領地で魔物の被害が出た場合、退治するのは領主の義務ですよね」
「まあ、そうじゃのう」
「その時領主も討伐に参加しますよね」
「規模にもよるがのう」
「魔物の規模が大きくて手が足りなくて、それなのに領主がいなくて、でもその家族がいた場合は、代わりに討伐に参加しないのですか」
「いや、そのために領主は軍をもっているんじゃ。領主がいなくても何とかできるようにのう」
「一つ確認ですが、貴族は魔力量が多いのですよね」
「ああ」
「貴族は学園で魔法を習うのですよね」
「そうじゃ」
「女性もですよね」
「・・・何がいいたいのじゃ」
「では、女性はなんのために魔法を習うのですか。民を守るためではないのですか。女性では領主代行になれないのですか。女性は守るべき者ですか。女性が守ってはいけないのですか。戦う手段を持つ者がそれを行使しないのは怠惰ではないのですか」
おもわずまくし立ててしまいました。
86話です。
またまた、おかしいです。
ゴムを手に入れて服を改造するだけのはずだったんです。
どうしてこうなった?
プロットでは、意識改革はもう少しあとなんだけど。
ボタンの話もそれより後、なんだけどなぁ~。
まあ、いいか。
ストーリーが大幅に崩れなければ。
ね!
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございます。
では、次話で。




