表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
54/444

王女と王女と伯爵令嬢 不安な一夜 1

~ ローザ王女 ~


はあー、眠れない。

これで何度目の寝がえりかしら。


眠るのを諦めた私はベッドに起き上がった。

サイドテーブルに置いてある水を飲むとため息がでてきた。


一応ベッドに横になり、今日の出来事を思い返してみる。

いえ、この10日程のことね。思い返すのは。

ううん。もっと前からかしら。


私とセリアが初めてあったのは、お互いが3歳の時だったわ。

母と仲がいいフォングラム公爵夫人がセリアを連れて王宮にきたのよね。

私は一目見て彼女のことが気に入ったわ。

夫人に似たかわいい顔立ち。王族に物怖じしない態度。

でも、ちゃんと礼儀はわきまえていたわね。


口さがない連中は、貴族にしては魔力量の少ない彼女のことを、悪し様に言っていたのは知っていたわ。

そんなことは気にならないくらい、私達は仲良くなったの。


一度だけ、セリアを疑って、ひどく怒られたことがあったわね。

あれは5歳の時。私主催のお茶会を開いたの。

招待したのは5歳~7歳までの伯爵家以上の令嬢方、21人。

その付き添いとして学園に通う前の、8~12歳の姉が参加したのよね。

結果として38人が参加することになったのだったわね。


私が開く初めてのお茶会ということで、お兄様達が心配して参加したことも大きかったと思うわ。

あと、特別にセリアの兄、ミルフォードも参加したの・・・いえ、参加してもらったのよね。


そのせいで、散々だったわ。

主催者の私に挨拶をした後は、みんなお兄様達の方に行ってしまったの。

最初私は主催者として気を張っていて気が付かなかったのね。


途中で、お手洗いに行った私は、聞きたくもない話を聞いてしまったのよ。

話していたのは11、12歳の令嬢5人。

彼女達はアルフレッドお兄様が目当てで付き添ってきたと言っていたわ。

でなければ5歳の小娘が開いたお茶会になんて来たくなかったとも言っていたの。


私は会場に戻って気付いたわ。

お兄様達に群がる令嬢達に。

滑稽で笑い出したくなったわ。

でも、主催者の立場から、自分からぶち壊すわけにはいかないもの。

にこやかに笑って最後までやり通したわ。


お茶会が終わって、セリアが気づかわしげにそばに来てくれたのだけど、私は彼女にひどい言葉をぶつけてしまったのよね。

セリアはただ、ねぎらいにきてくれただけだったのに。

ショックを受けた顔で帰っていったわ。


そのあと、私は後悔でいっぱいになったの。

セリアはあの子達とは違う。私の友達よ。

なんで、あんな子達と同列に扱うような言葉を言ってしまったのかしら。って。

ううん。判っていたわ。

私はセリアを疑ったの。

もしかしたら、セリアは・・・セリアもお兄様達が目当てで私のそばにいてくれるんじゃないかって、思ってしまったのね。

もう、セリアは私の所に来てくれないかもしれない・・・。


そう思ったら、悲しくて苦しくて、ベッドの中で泣いていたの。

そうしたら・・・そうしたらね。セリアが来てくれたの。

家に着く前に戻ってきてくれたの。

泣いてる私に驚いていたけど、私の言葉の意味を聞いてきたのね。

私は答えずになんで戻ってきたの、って聞いたら、「気まずいまま明日を迎えたくないの」と言ったわ。


その言葉を聞いてセリアに抱きついて泣いてしまったわ。

私を抱きしめながら、セリアは「嫌なことを後回しにすると余計気まずくなる」とか「勘違いはほどほどに」とか、いろいろ言っていたけど、聞こえないの。聞こえないと言ったら聞こえないんだから。


ひとしきり泣いて落ち着いた私にセリアは何があったのか聞いてきたわ。

私は自分が見たこと聞いたことを話して、セリアのことを疑ったことを話したの。


・・・こわかったわ。セリアって、本当に公爵の娘なのね。


まず、「私達は友達だ」と言われたわ。

お母様たちのようになるのが夢で、もうなっていると思っていたのに、ローザ王女様は違うのねと、言われてしまったわ。

私も同じ気持ちだと伝えたら、とてもきれいな笑顔を見せてくれたの。

お兄様達のことは何とも思っていないとも言っていたの。

爵位から結婚の可能性はあるかもしれないけど、今はそれより私との友情を深めたいと言われたわ。


しばらく友情を確かめ合った後、「ところでローザ王女様に不快な思いをさせた方たちはどこのご令嬢かしら」と、とてもいい笑顔で聞いてきたの。

本能が告げたわ。

これは、やばいやつよね。

名前がわからないからで通そうとしたんだけど、詰め寄られて言ってしまったの。


・・・そのあとのことは、わからないわ。

噂で彼女たちが国外の貴族との婚約がきまったとか聞いたけど・・・ええ、私は知らないわ。

本当に知らないのよ。


それから、セリアは私のことをローザ様と呼んでくれるようになったのよね。


はぁ~。昔のことを思い出すと溜め息しかでてこないわ。

セリアは忘れてしまったわ。

忘れたくなかったとおもうのだけど・・・。


容姿が変わったことはいいわ。

でも・・・神子疑惑はどうなるのかしら。

お父様達は何も教えてくれなかったけど・・・。


ううん。私は何があってもセリアの味方よ。

絶対セリアが嫌がることから守って見せるんだから。



53話です。


思っていたよりも長くなってしまったので、2話に分かれます。

今話はローザ王女さまです。


こんなことがあったんですね。

どうりで、セリアちゃんに過保護ぎみに接しているなと思ったのよね。


では、続けて次話を投稿しますので、しばらくお待ちください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ