4-4 彼女のことを・・・(ぼかして)話します・・・?
「だって、・・・夢で見たこと・・・を言ったって・・信じて・・くれないと・・・お・・・おもったから」
まだ、泣いた影響でしゃくりあげた言い方になりそうなので、小さく息を整えながら言葉を紡いでいきます。
「夢を見たことを覚えていないといいませんでしたか」
「あの・・・時はこ・・混乱をして・・・いたの・・です」
なかなか息が整いません。まだ、涙もあふれてきます。
でも、いい時間稼ぎになっています。
頭がクリアーになってきました。
「ゆっくりでいいので話をしてくださいますか」
「はい。・・・実は、まだ・・・混乱というか・・・よくわかって・・い、いないというか」
言葉を止めて深呼吸しました。だんだん落ち着いてきました。
ウルバーン医師は黙って私を見ています。
ウェルナー医師も(あ、いることを忘れてたわ)気づかわしげに私を見ています。
「ゆ、夢の中に・・一人の女性が出て・・きたんです。・・・か、彼女は、・・・いろいろなことを・・・見せて・・・くれたんです」
もう一度深呼吸をしました。
「彼女が私に見せてくれたものは・・・たぶん・・・この世界の・・常識とは違うと、おもいます。・・・そして、その違いが・・・私の記憶を失わせたとおもいます」
「記憶を失わせたのですか。失くしたのでなく?」
「はい。・・・たぶん。・・・夢の中で、強い衝撃を受けたことは覚えているのですが・・・」
ウェルナー医師とウルバーン医師は顔を見合わせました。
「えーと、その、夢の内容を話せますか」
「すみません。・・・言葉にするのが、むずかしくて・・・。覚えていないわけではないのですが・・・。
でも、これだけは言えます。貴族的でない考え方の元は、彼女です」
「その女性は何と言っていたのですか」
「言っていたというか・・・見せられた世界といいますか・・・とても平和で平等な世界・・・でした」
「平等?」
「はい。その世界は、身分に差がない世界でした。・・・この世界のような序列はありません。・・・あ、一部ではありましたね。・・・でも、貴族社会の身分制度は無かったとおもいます」
ウェルナー医師もウルバーン医師も困惑した顔をしています。
うーん。どうしましょう。彼女自身のことに触れないように話すには、私はこの世界のことを知らなさすぎるよね。
「えー、セリアテス嬢。その女性はあなたに何か言ったことはありますか」
ウェルナー医師が聞いてきました。
言われたことって・・・あるわけないよね。
なので、首をかしげながら二人を見つめました。
「特に・・言われたことは・・ないです」
あれ、今回は二人とも頬が少し赤くなっているような・・・。
「えー・・・では、強い衝撃を受けたこととはなんですか?」
「・・・言わなくてはだめですか」
「・・・?言えないような内容ですか?」
「言えない・・・というか・・・とらえどころがないと・・・いいますか」
「良ければ、教えていただきたいです」
うーん。どうしましょう。
あっ、そうだ。ゲーム!そうよ、この世界があのゲームの世界か確認してみましょう。
「あの、この国には貴族の子弟が通う学校があるのですか?」
「学校ですか?ありますよ。初代国王陛下から名前をいただいた「ファランクルス学園」です」
「その学園に通うのに資格などありますか」
「資格ですか。一応12歳になったら入学しなくてはならない、だったかな」
「貴族以外も通うことができるのですか」
「はい。15歳からになりますが、試験に合格した者か、魔力量が平民にしては多い者、珍しい属性の魔法が使える者ですかね」
やはりゲームと同じようなものですね。
でも、学園名は違いますね。うーん、なんでしょう?
って、あれ。そういえば、お兄様は攻略対象じゃない?
そうよ。公爵家子息であって、侯爵家子息じゃないわ。
じゃあ、ここはゲームの世界じゃないの。
でも、セリアテス・クリスチーネ・フォングラムって名前は出てきたし・・・。
実はゲームでは侯爵家じゃなくて、公爵家だったとか?
浮かんだ考えに没頭して黙ってしまった私に、困惑した声が聞こえてきました。
「セリアテス嬢?どうかしましたか?」
「あっ、すみません。夢でみた学校と、名前が違っていたのですから」
「夢で見た?」
「あの、まだ、先の話なのですが、私が通っている時に・・・学園で事件が起こるのです。・・・ああ、違います。夢、夢です!夢の中で起こったことです」
言ってしまってから、焦りました。乙女ゲームの内容は言えませんよね。
私の言葉を聞いた二人は顔を見合わせるとどちらからともなく呟きました。
「未来視?」
「アラクラーダ様の神託?」
はい?なんのことでしょうか?
46話です。
いつも読んでくださりありがとうございます。
彼女のことを話しているんだけど・・・
何か勘違いされたかな?
と、いう回ですね。
うーん、今回のことのコメントは、次回のローザ様に任せようかな。
よし、そうしよう。
では、次話で。




