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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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26-19 ポールの話に・・・翻弄される?

ポールの言葉は今まで考えたこともないことでした。

いえ、そもそも私は、これまでなぜ記憶を失くすことになったのかを、考えたことはなかったのです。

なので、ポールが示した話はあり得ることだと思ったのです。


尊敬の念を込めてポールを見つめたら、ポールと目が合いました。ポールはじっと私のことを見つめてきます。

そして眉根を寄せたと思ったら・・・。


「あっ、たんま。いまのなし」

「「「はっ?」」」


ポールの言葉にお父様とおじい様、それからジーク伯父さまが声をそろえてあげられました。そのお父様たちのことをポールは残念そうな顔で見詰めてから、私に言いました。


「というかさ、駄目でしょ、セリアテス様。そう簡単に信じちゃ」

「えっ? あ、あの?」


私は混乱して何を言っていいのかわからなくなりました。きょときょとと部屋の中にいる人たちを見まわしました。お父様たちも困惑して、何を言っていいのか困っているようです。

その様子をじーっと見ていたポールは今度はおじい様へと顔を向けました。


「ほら~。どうしてくれんですか、リチャード様。僕らをセリアテス様のそばに居させてくれなかった弊害が出ているじゃないですか」

「弊害じゃと?」


おじい様も困惑した顔のまま聞き返しました。


「そうですよ。本当ならセリアテス様から信頼してもらって、こんな似非(えせ)話なんか笑い飛ばしてもらうはずだったのに」

「似非話?」

「そうですよ。一見筋が通っているように聞こえたかもしれませんけど、矛盾ありまくりの与太話です。信じるに値しない話なのに、僕の言葉を鵜呑みにしちゃってんですよ。これが弊害じゃなくてなんだというんですか!」


語気を強く言いしめて、おじい様のことをじっと見つめるポール。おじい様は・・・いいえ、おじい様だけでなく部屋に居る他の人たちも、ポールが何を言いたいのかわからないようです。もっと困惑した様子で、黙ってポールのことを見つめていますから。


私もポールが何を言いたいのかわからなくて、おじい様たちと同じように困惑とした視線を向けています。そこにポンと手を打ち合わせる音が響きました。


「ああ、そういうことでしたか」


手を打ち合わせたのはコモナー執事長です。


「ええ、これは確かにリチャード様が悪いです。・・・いえ、私を含めたフォングラム公爵家の者たちが悪いですね」

「どういうことじゃ、ユーリック」


おじい様は一人だけ納得をされた執事長に不愉快そうな顔で聞きました。


「ヒントは先ほどからポールが言っていますけどね。それとポールが前世の記憶持ちだと分かった時のセリアテス様のご様子が答えですよ」

「だからなんだ。はっきり言わんか。時間をかける余裕はないだろう」


はっきりと答えない執事長におじい様は苛立たしい声をあげました。その様子に肩を竦めた執事長は笑みを引っ込めて口元を引き締めてから口を開きました。


「皆様、ポールが言いたいのは、前世の記憶持ちにより、セリアテス様が篭絡される可能性があるということです」

「はっ。何を言いだすのかと思えば。そのような怪しい者をわしらがセリアテスに近づけるとでも思っているのか」


おじい様は不快げに言いました。


「いえ、その件に関しましては、(わたくし)も近づけないようにするために、知力を尽くします。ですが、何事においても絶対ということはありません。何らかの形でセリアテス様に接触を持ち、ゲームの内容を知っていると囁いてセリアテス様の関心を得、そのうちにセリアテス様のおそばに居るようになり、セリアテス様に甘言を(ろう)して操ろうとしてくるかもしれません」

「何を言うのだ。セリアテスにそのような者は近づけんと言っているだろう」

「ですからリチャード様、私共が近づけないように気をつけていたとしても、絶対はないのです。そしてセリアテス様に注意を促しておいたとしても、ゲームの内容のことを言われたら、無視することは不可能なのです」

「そんな怪しいことを言うやつを信用できるか!」

「リチャード様、よくお考え下さい。私共にとって怪しい内容でも、セリアテス様にとっては真実まこととして知る内容(・・・・)なのですよ。セリアテス様が是と言えば、おそばに寄ることを拒否できないでしょう。本当にようございました。ポールがいてくれて」


執事長は頷きながらポールのことを見つめました。おじい様たちはまだ釈然としない顔をしています。


「執事長なら解ってくれると思いました。・・・ということで、とりあえず明日に響くと困るので、もう休みしましょう」


ポールはホッとしたのか肩の力を抜くように、大げさな身振りで肩を持ち上げて落としました。そして立ち上がりながら「解除」と言いました。


そうなのです。この瞬間まで、ポールはお兄様の姿のままでした。なので解除と言った途端に、ポール本来の姿へと戻りました。


「それじゃあ失礼させていただきます」


ポールは扉の前まで歩いて行くとこちらへと一礼して部屋から出て行こうとしました。


「こら、待たんかポール。まだ話は終わってないだろう」

「嫌ですよ、待ちません。僕は話をしないとは言っていないですからね。ただ、セリアテス様のため(・・・・・・・・・)にも、今日はもう休んだ方がいいと言っているんです」


ポールはキリッとした顔で言いました。


439話

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話からポールの台詞がくどい [一言] 中途半端なところで更新が開きすぎてて、だいぶ前から遡らないと内容が思い出せない。
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