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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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26-17 ポールの記憶・・・?

ぎっと音がしそうな勢いで・・・いえ、目に力を入れてコモナー執事長のことを睨むポール。コモナー執事長は「ふむっ」と、顎に手を当てて考えだしました。


「ポールはさっきから何を言っているのかい。その言い方では君が、この中で一番セリアテスのことを理解していると言っているようではないか」


お父様が声のトーンを抑え気味にして言いました。顔も表情を消していますけど、不機嫌なのが丸わかりです。そんなお父様の様子を気に留める様子もなく、ポールは軽く返しました。


「セルジアス様、ちゃんと僕は、僕が一番セリアテス様のことを理解していると言っているんですけど。さっきの言い方じゃ、解りませんでした?」

「なんだと!」

「セルジアス!」


激昂しかけたお父様をおじい様が止めました。そのままポールに話しかけようとしましたが、今度は執事長がおじい様を止めました。


「お待ちください、リチャード様。ええ、これはポールにそう言われても仕方がないですね。どうやら私でさえ気がついていないことに、ポールは気がついているようですから」


そう言うと、ポールに向かい合いました。


「どうやら長い話になりそうですね。私共も、座ってもよろしいでしょうか」

「いいえ。僕は長話をするつもりはありません。なので、このままでいいです」


えーと、はい。宿の貴賓用の部屋なので応接室がありますが、それほど広い部屋ではないですし、椅子などもそんなにないので、ほとんどの人が立っています。・・・私は座らされていますけど。


本当は私がポールと話したかったのですが、おじい様たちはそれを許してくれませんでした。なので執事長が詰問することになったのです。


「ポール、聞きたいことがいくつもあるのですが」

「わかっていますけど、今は旅の途中です。いくら魔法で遮断しているとはいえ、こんなことを詳しくここで話すことはできません」


シレっとした顔で言うポール。たぶん・・・正論ですね。


大人たちは困ったように顔を見合わせています。ポールは邪気がない笑みを浮かべると続けて言いました。


「一応言っておきますけど、僕はフォングラム家の皆様を怒らせるつもりはありません。ただ事実として、僕の記憶はセリアテス様の助けとなります。それは解っていただきたいです」


みんなの視線はポールから私へと移ってきました。私はコクコクと顔を上下させました。


私はあのゲームを知っているらしいポールに、話を聞きたいのです。私は正確には覚えていないのですが、ポールは詳しく知っているようなのです。ポールが言うように、きっと私を助けてくれることでしょう。


「先ほどの呪文のような言葉か。あれがセリアテスの助けになる証しかのう」


おじい様が呟くように言いました。


「呪文のような言葉とは、なんでしょうか」


あの時いなかった執事長が聞いてきました。


「魔法学園クルセイダー 恋も魔法もあなたと共に」

「ああ、女性向けのゲームですか」


ポールがゲーム名を言えば、執事長は納得したように頷きながら呟きました。


・・・って、ちょっと待ってください。執事長もあのゲームを知っていたのですか? それにしては私が前にゲームの内容をちょこっと話した時にリアクションがなかったと思うのですけど?


私の疑問が顔に出ていたのか、執事長は苦笑を浮かべて言いました。


「セリアテス様、ゲーム名は聞いたことがあったのですが、さすがにやったことのないものでは、解るものではないですよ。それよりもポールが知っているということは、ポールは前は女性でしたか」

「僕の前世は女性じゃないですよ。年の離れた妹と兄のところの姪が、そういうゲームにはまっていたんです。それにゲームを家でするとうるさいからと、僕のところでやっていたんで、見るつもりはないのに見せられてました」

「おやおや、それはそれは。ということは一人暮らしをしていたのですか」

「ええ。生憎と仕事のせいで彼女が出来ても振られまくってましたからね。妹も姪も来やすかったんだと思います」


納得し合う執事長とポール。男同士で判り合ってずるいです。


「えーと、話が逸れたけど、詳しく話すとなると、本当に時間が足りないです。なのでさっき言った執事長が気がついていないことについて話したいけど、いいでしょうか?」

「ですが、それではリチャード様たちが納得しませんよ」

「そう言われても、これ以上長話になると、セリアテス様の体調に影響が出ますよ」


ポールの指摘にみんなは私のことを見て頷きました。えーと・・・反論は出来そうにないです。はい。


「では執事長、先に質問なのですが、執事長はいつから前世の記憶に気がつきましたか」

「生まれた時からと言いたいのですが、物心ついてからと答えた方が合っているのでしょうね」

「そうでしょうね。僕も生まれた当時からなんとなく違和感というか変な感じはしていたけど、それを明確に言葉にすることは出来なかったです。で、あんまり明かしたくないんだけど、僕は僕と執事長意外にも前世の記憶持ちを何人か知っています。彼らにも確かめたけど、みんな生まれた時から前世の記憶をもっていたと言っていっていました」

「ポールが知っている全員ですか?」

「そう。そして、それがセリアテス様が女神様に愛し子と言われた原因なんだと思う」



437話。

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