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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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26-16 ポール・・・の、正体?

おじい様はポールから言われた言葉に、一瞬呆けた顔をしました。


「配慮? なんじゃ」

「リチャード様は判っておられませんよね。僕とマリベルが本邸に来てから、セリアテス様とどれだけ過ごすことが出来たのかを。確かに僕らの役目はセリアテス様が学園に入られてからが本番です。でも、もうセリアテス様つきとなると、紹介されたのですよ。それならば、もう少しセリアテス様のおそばで過ごしてもいいではないですか。というか、もう専属侍女と護衛として王宮へ連れて行ってくれても良かったじゃないですか。そうすれば役に立たなかった王子たちよりは、ましな働きをしましたよ」


私は黙って聞いていますけど、頭の中ではクエスチョンマークが飛んでいます。


えーと、ポールはフォングラム公爵家(うち)の使用人ですよね。その雇い主にこんな言い方をしてもいいのでしょうか?

それに王子たちのことを悪く言っては不敬罪で捕まってしまうのではないでしょうか?


いえ、それ以前にポールはおじい様に何を言いたいのでしょうか?


「じゃがの、セリアテスが女神様の愛し子とはいえ、慣例を曲げるわけにはいかんじゃろ」

「そこは女神様の御威光でも、リチャード様のごり押しでもいいですから認めさせてくださいよ。何のためにもう(・・)本邸に来たのかわからないじゃないですか。それに、リチャード様たちは判っていないです」

「何をじゃ?」

「セリアテス様のことです」

「わしらのどこがセリアテスのことを解っていないと言うんじゃ」


おじい様は不快そうに眉を寄せると、ポールのことを睨みつけました。ですがポールは不敵に笑い返しました。


「全然、解っていないじゃないですか。そんなだからセリアテス様は王宮で倒れられたのです」


ポールの言葉におじい様だけでなくお父様、お母様、おばあ様までも、眉を寄せて私と視線が合わないように逸らしてしまいました。


その様子を見てポールは心持ち声を落としてブツブツと呟きだしました。


「本当は黙っていようと思ったんだよな~。絶対言えば面倒なことになるのは判り切っているし……。執事長ならフォローしてくれるかと思ったけど、あれを知らないんじゃ、フォローのしようもないよなー。あーあ、なんでここに生まれちゃったかなー」

「お前は何が言いたいんじゃ、ポール」


声を落としてはいたけど、しっかりと内容が聞こえるように呟いていたので、その内容を聞いていたおじい様は不審に思ったようです。


おじい様の問いかけに、ポールはおじい様の顔をじっと見つめてから、視線を私へと向けました。


「魔法学園クルセイダー 恋も魔法もあなたと共に」


そう言って、黙るポール。


「はっ? なんじゃ、それは」


おじい様の戸惑った声が聞こえましたが、私はそんなことに構っていられません。

ソファーから立ち上がると、ポールへと近づいて行きました。


「まさか・・・ポール?」


震える声で問いかけると、ポールはニヤリと不敵に笑いました。


「はい、セリアテス様」

「記憶があるの」

「ええ、残念ながら物心ついた時からありますね」


ポールの前に立ち、その目を見つめます。


「彼女と同じ世界の?」

「このゲーム名を知っているということは、ビンゴだったということですね」

「じゃあ、じゃあ・・・」

「えーと、とりあえずはこれかな? もう、一人で悩まないでくださいね。セリアテス様」


気がつくと私はポールと手を握りしめあって、涙を流していたのでした。



ええっと、あれから時間が経ちまして、今は夜・・・です。


あの後、私が泣き出したことで、おじい様たちは困惑してしまいました。

そこにジーク伯父さまたちが到着して、部屋へと入ってきました。泣いている私を見たクラーラお姉様が、私をポールから引きはがし、ポールはローラントお兄さんとオスカーお兄様に詰問されることになったのです。

それで、そうなったことで正気に戻った(というと語弊があるけど)おじい様たちにも、ポールは詰め寄られました。

なぜか、ポールはおじい様たちの質問に答えようとせず、イアンとクルスの説教を終えたコモナー執事長が部屋に戻ってくるまで不貞腐れた態度でいました。


執事長はおじい様から話を聞き、ポールに詰問しようとしましたが、そこに夕食の支度が出来たと宿の者が知らせに来て・・・。


とりあえず、みんなの姿を戻すことはせずに、変装したまま食事を取ることにして、食べ終わってから話の続きをということになりました。


で、いまはその、ポールへの詰問をしています。詰問をしているのはもちろん執事長です。


「ポール、どうして記憶があることを隠していたのですか」

「さっきほど言いましたけど、面倒なことになるからに決まっているじゃないですか。それでなくても諜報部門に移れってうるさかったし」

「ポール、それは今言うことではないでしょう」

「いいえ、関係があるから言ってます」


ポールが不満たらたらに言葉を返して執事長のことを睨みつけました。


「大体、僕が記憶持ちなことを隠していたからって、文句を言われる筋合いはないですよね」

「ええ、そうですね。ですが先ほどの発言とは関りがないと思いますが」

「だから、関係があるんですってば! というか執事長も記憶持ちでしょ。それならなんでセリアテス様が置かれている立場についてわからないかな~?」



436話

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