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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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26-13 宿屋に着きました・・・

休憩地を出てから馬車は順調に進んでいきました。馬車の中ではお父様たちと仲良くお話をしました。


・・・というか、お父様は私が口をきいてくれたと、とてもうれしそうです。あのまま膝の上から下ろしてもらえません。お母様とお兄様から呆れた視線を向けられても、お父様はどこ吹く風という感じです。


私はというと、その状態に甘んじていました。


いえ、膝の上から下りようとしたんですよ。でも、下りようとした時にちょうど馬車が小石に乗り上げたのか、大きく揺れたんです。バランスを崩しかけた私をお父様は難なく抱きとめて・・・って、幼女を抱きとめるなんて大人からすれば簡単なことですよね。でも「馬車が動いている間は危ないから」と、膝の上に抱きなおされてしまったのでした。



休憩地を出てからは何事もなく進んで行きました。


今夜泊まる予定の宿に着いて、想定していたことが起こりました。それは、私たち商隊が泊まることを断られそうになったのです。そこに先に着いていたおじい様たちが姿を現して、コモナー執事長に話しかけてきました。


「そこにいるのはリーデン商会の、ランズベルクではないか。先日は茶葉を届けてもらえて助かったわい」

「これはリチャード様。数日ぶりでございます。お役に立てまして、光栄にございます」


コモナー執事長は恭しく頭を下げました。おじい様は鷹揚に頷きました。それから、私たちと宿の主の様子を見て眉を顰めました。


「ところで何かあったのかのう」

「いえ、フォングラム様、些末なことでございますれば、どうぞお部屋にてご寛ぎください」


宿の主は額に汗を浮かべながら返事をしました。


「お前には聞いとらんわ。ランズベルク、どうしたのじゃ」


コモナー執事長は宿の主を見てから、ためらうようなそぶりで言いました。


「そのですね、今宵の宿を予約していたのですが、断られてしまいまして・・・」

「なんじゃと。主よ、どういうことじゃ」

「あの、そ、それは・・・」


言い淀む宿の主。そこに可愛らしい女の子の声が聞こえてきました。


「おじい様、こちらにいらっしゃったのですか」

「おお、セリアテス。部屋で休んでいたのではなかったのかい」

「おじい様がいらっしゃらないので探していました。・・・それに、そろそろジーク伯父さまたちがお着きになられるのではないかと思って」


はにかみながら言いながらセリアテス(・・・・・)様が、そばに来て私たちのことを見つめてきました。


「ジークフリート殿は、まだみえておらんようじゃの。わしらが出発してから、少し間を開けてから向こうを出たからの。じゃが、そろそろ着くだろうの」


おじい様は優しい眼差しでセリアテス様に言いました。


「そうですか。・・・それで、あの、この方々はおじい様のお知り合いの方々ですか」

「ああ、そうじゃ。フォングブルクに本拠地があるリーデン商会の者たちでの、この前紅茶を届けてくれたのじゃよ」

「まあ、そうでしたの。ええっと、もしかして、今宵はこちらの宿にお泊りですか」


セリアテス様は目を輝かせて聞いてきました。コモナー執事長は笑みを浮かべて「いえ、それが」と言いかけました。


「もちろんお泊りでございます」


遮るように大きな声を出したのは宿屋の主です。揉み手をしながらにこやかに言葉を続けました。


「すぐにお部屋にご案内をいたします。先ずは手続きをこちらにて」


執事長を連れて宿屋の主はカウンターのほうへと行ってしまいました。残された私たちは、その様子を苦笑交じりに見ていましたが、おじい様がお父様へと話しかけました。


「君はランズベルクの息子かい。顔を合わすのは初めてだな」

「はい。ジアス・ランズベルクと申します。この数年は勉強を兼ねて国外を回っておりました」

「ほうほう、それはのう。そう言えばリーデン商会は王都のリングスフォルトに、店を出す予定じゃと言っておったのう」

「はい。会頭より命じられまして、出店するのに良さそうな場所を見に参りましたが、やはり王都ですね。良い立地場所にはすぐに空きそうなところはございませんでした。すぐに店が出せそうなところは、少し治安に不安がある場所でして、戻ってから相談することにいたしました」

「そうかの。ふむ。フォングラム領の特産となりそうな紅茶を商うのじゃろ。わしらとしても、あまり貴族が足を運びにくいところは困るのう。そうじゃ。領地から戻ってからでよければ、わしらも探して見ることにしよう」

「ご領主様がたに、そのようなご迷惑をおかけするわけにはまいりません」

「迷惑ではないぞ。我が領の発展のためじゃ。それに尽力してくれておるリーデン商会に、報いたいと思うておるだけじゃよ。それにのう、すぐにはわしらも動けんぞ。早くて年が変わってからじゃ。まあ、それでよければということじゃよ。ところでの、そちらはそなたの奥方と子供かの」


おじい様はお父様から一歩下がって立つ私たちへと目を向けました。


「はい。妻のアリアと、息子のカイセルに、娘のテスニアにございます」

「見たところわしの孫たちと歳が近く見えるの。テスニア嬢や、いくつじゃ」

「7歳で・・・ございます」



433話。


セリアちゃんたちの偽名。

聞きなれない名前にするよりも、本名の一部を使ったほうが間違えにくいかと、こうなりました。

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