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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
433/444

26-12 商隊は・・・リーデン商会といいます

馬車にはコモナー執事長も乗り込んできました。


「リーデン商会、出発します」

「周りに配慮してくださいね」

「はっ!」


外から声がかかり執事長が返事をして、馬車が動き出しました。窓の外を見ると、荷馬車が五台ほど続いていました。


休憩地から街道へと戻って少し進んだところで、執事長がこの商人の隊について説明してくれました。


リーデン商会というのは、フォングラム公爵領を本拠地としている商会だそうです。我が家とも非常に懇意にしているそうです。今回のことで名前を借りたいと伝えたら、快く了承してもらえたといいます。

この商人の荷馬車たちですが、ソフィティア叔母様の親戚筋のカルニック商会と、スクワーレ伯爵家と関連があるシブラルク商会から、お借りしたといいます。実際にフォングラム公爵領までたどり着いたら、その後はそれぞれの商会の方々は、仕入れやお届けに向かうそうです。なので、荷馬車の御者や護衛の方々は、二つの商会に雇われた方々がいると言われました。


あまりに大事になっている気がして、眩暈がします。私の様子に気がついたお父様が私を膝の上へと抱き上げました。


「セリアテスが気にすることではないよ。リーデン商会もカルニック商会もシブラルク商会も、今回のことは利しかないからな」

「利、ですか」

「そうだ。リーデン商会はうちを本拠地としているが、王都に店を構えるほどの規模の商会ではない。だが此度のことで、我が領の紅茶を一手に扱うことになるし、女神様の愛し子との繋がりも出来た。かの商会にとっては良いことだ」

「でもお父様、良いことばかりではないですよね」

「もちろんそうだろう。だけど、それはこれより先に起こることだよ。まだ、セリアテスとの繋がりはどこにも知られていないのだ。先のことを案じる気持ちは分からなくもないが、そういうことは大人に任せておきなさい」


そう言われて、私は先走って考え過ぎていることに気がつきました。先ほどもおじい様、おばあ様に任せておきなさいと言われたというのに。


俯いてしまった私の頭にお父様の大きな手が乗りました。そのまま優しく撫でてくれます。


「やっと解ってくれたようだね。それにしてもセリアはいつからこんなに頑固になったのだろうね」

「わたし、頑固・・・ですか」

「頑固だよ」

「もしくは生真面目に考え過ぎかな」

「そうね。もう少し私たちを頼ってくれていいのに」


お父様の頑固発言を、お兄様とお母様にまで肯定されてしまい、私は眉を下げて俯いてしまいました。


「そこがセリアテス様の良いところですよ。さて、これからのことですが、この商隊の(おさ)は私ということになります」

「コモナー執事長が長ですか? ということはリーデン商会の会長一家が、私たちの役割ですか?」


コモナー執事長がうまい具合に説明へと戻りました。疑問に思ったことを言ってから、それは私の役目ではないと気がついて、慌ててお父様の顔を見上げました。お父様は微笑んで頷いてくれたので、失言ではないみたいです。


「いいえ。さすがにこれから先のことを考えますと、リーデン商会の会長一家を名乗るわけには参りません。ですので、私たちはリーデン商会の重役一家ということになります。そしてこの隊の目的ですが、王都に居たのは支店を出すための下調べのためと、領主であるフォングラム公爵家に届け物をするためということになっています。下調べも終わり王都を出ることになったら、偶然にも領主一家と同じ日になってしまっただけです。そして、先ほどの休憩地にてフォングラム公爵様から御声を掛けられて、行き先も同じということもあり、同行することになった、ということですね」


ニコリと笑うコモナー執事長。この建前なら、宿屋でおじい様たちと親しく話しても困らないですね。・・・というか、これって建前なのですよね。それとも真実がほとんどで、たまたまフォングラム領に戻ることから、今回のことに巻き込んだのでしょうか。判断がつかなくて「うーん」と呻ってしまいました。


「セリアテス様、難しく考えないでください。たまたま(・・・・)リーデン商会が王都に来ていたのを、少し(・・)引き留めてセリアテス様が領地に向かうのに合わせて、王都を出てもらっただけですからね」


やんわりと言うコモナー執事長。それでもところどころ引っかかるものがありましたが、気にするなということなので私も気にするのを止めることにしました。


「ええっと、わかりました。それではこの商隊にいる間は、コモナー執事長のことをおじい様とお呼びしていいですか」


そう言いましたら、何故か執事長は微妙な顔をなさいました。そして視線をお父様へと向けました。


「この場合は、おじい様よりおじいさんと呼んでいただいた方がいいのでしょうか」

「そうだが、口調を変えるのはセリアには難しくないか」

「そうですねえ。セルジアス様もその言い方ですし」

「いや、コモナー執事長も言い方を改めないと」

「そこはお任せください。臨機応変に変えますので」


お父様は疑わしそうな視線を執事長へと向けました。


「そうですね、それではこうしましょう。交渉事は私がいたしますので、皆様はなるべく言葉を発しないようにお願いいたします。何か話さなければならない時には、尊大な言い方にならないようにお気を付けくださいね」


執事長は圧を込めた笑みを浮かべて言いました。私たちは・・・お父様までも、ただコクコクと頷いたのでした。



432話。

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