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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
432/444

26-11 再、出発!

そして変装が終わり集まった私たちに、おじい様が言いました。


「先ほども言うたが、ここよりわしらは三隊に別れて移動することになる。まずはセリアテス(・・・・・)を守護するフォングラム家の隊じゃな。アーマドと神官方にはこの隊に付いてもらうがよろしいか」

「もちろんだ、親父」

「親父と言うなと言うたじゃろ、馬鹿者」


アーマド叔父様が軽く返事をしましたら、おじい様が叔父様を睨みつけました。・・・確かに他の方の目もありますものね。叔父様らしいと言えばらしいのですが、TPOはわきまえてほしいです。・・・って、TPOってなんでしたっけ?


おじい様は叔父様を一睨みした後、ガリハ神官へと目を向けました。


「はい。神官長からも旅の間はフォングラム公爵家の指示に従うようにと言われております」


うやうやしく頭を下げる、神官たち。おじい様は頷いてから目を私へと向けてきました。


「セリアテスももう解っておるじゃろうが、セリアテスたちはこのあと今夜の宿まで、商人一家に扮してもらう。大丈夫じゃ、家長はユーリックが引き受けるからの。何かあっても交渉はすべてユーリックが行うから、安心しておるんじゃぞ」


おじい様は目を私からカテリア伯母様へと向けました。


「最後の隊はキャバリエ家一行じゃ。街道を行く順番も、いま言った通りじゃ。良いな」

「ええ、否やはありませんわ、お父様」


カテリア伯母様は艶然と笑いました。


「姉上、うちの隊から数名護衛に回すが良いか」

「あら。アーマドの隊はセリアテスのための隊でしょう」

「姉上、解っていらっしゃるのに、その言い方はないだろう」

「あなたも身内だけとはいえ、もう少し取り繕った言い方をしなさい。無礼者がセリアテスのそばにいるのは、許さなくてよ」

「もちろん分かっておりますよ、キャバリエ公爵夫人」

「もう。まあ、いいわ。それより、こちらに護衛を回す必要はないわよ」

「そういうわけには参りません。サンフェリス王家の方々をお守りすることは、ひいてはセリアテスを守ることに繋がりますから」

「そう、分かっているのならいいわ」


なにやら、色々と含んだ姉弟の会話です。二人の話が終わったとみて、おじい様が再度口を開きました。


「それでは準備が出来次第、出発をする」


その言葉を合図にみんなはそれぞれの馬車へと歩き出しました。私もお母様に促されて一歩踏み出したのですが、すぐに踵を返しておじい様のそばへと行きました。


「おじい様、おばあ様」

「どうしたんじゃ、セリアテス」


おじい様は驚いたように少し目を見開きました。


「あの・・・ずっと、このままということなのですか」

「ずっとということはないぞ。領地に着くまでの5日間だけじゃよ」

「でも・・・それでは、おじい様たちは」


私は両手をぎゅっと握りしめました。


私の中には後悔の気持ちが沸き上がっていました。おじい様は・・・私のことを第一に考えてくれています。このひと月、私のために・・・いろいろしてくれていたのです。私が倒れたと、わざわざ領地から急いで来てくれたのです。


それなのに、私は昨日も今朝もおじい様たちに冷たく接してしまいました。


「気にすることはないのよ、セリアテス。この人も可愛い孫にするべき態度じゃないことをしたと、わかっているのだから」

「でも、おばあ様」


おばあ様は私をそっと抱きしめました。


「私たちのことを案じてくれてありがとう。でも、今宵の宿は予定通りに同じところになるから、そこでまた会いましょうね」

「でも、でも、おばあ様たちも、変装なさってご一緒に」

「それは出来ないわ。というよりも、リチャードと私はそのままのほうが都合がいいのよ。これから先どこの町でも、リチャードに強く出れる者はいないの。だから、わかってね」

「おばあ様」


おばあ様にギュウッと抱きついたら、頭に大きな手が乗ったので、顔を上げました。おじい様が私の頭を撫でてくれます。


「セリアテスや、お前はこれから療養のために領地に行くのじゃ。勝手に騒いでおる者たちのために、気を使うことはないんじゃよ。煩わしいことはわしらに任せて、旅を楽しんで欲しいんじゃ」

「でも・・・私はおじい様たちとも、一緒の馬車で行きたいです」


おじい様の顔を見上げてそう言ったら、おじい様とおばあ様は顔を見合わせてから、楽しそうに笑いだしました。


「まあ、まあ。それでは、これから先は一日ごとに入れ替えるしかないかしらね」

「そうじゃな。ちいーとばかし、面倒じゃったが、そんな楽しみがあるのなら、頑張るとするかの」

「張り切り過ぎて、回復不能に追い込まないでくださいね」

「わかっとるわい。それじゃあの、セリアテス。今宵の宿でまた会おう」


おじい様とおばあ様に優しく背を押されて、私はお父様たちのところへと戻りました。お父様とお母様とお兄様は、私が戻るのを同じ場所で待っていてくれました。


「セリアテス様、こちらの馬車にお乗りください」


荷馬車のそばに立っていたコモナー執事長に促されて、装飾が少ない・・・ではなくて、商人が使うような質素な馬車へと乗り込みました。ですが、見た目と違い座り心地のいい座席です。色目も地味にしていますが、王侯貴族が使うのに適した風合いがあります。


これはもしや、お忍び用の馬車なのでしょうか?



431話。


さあ、領地へ向けて再出発です。

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