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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
430/444

26-10 色変えの魔法を・・・

「お待ちしておりました、リチャード様」


微笑みを浮かべておじい様と話しているのは、王都の邸にいるはずのコモナー執事長です。


「待たせたかのう」

「いいえ。想定の範囲内です」


どうやら最初からここで待ち合わせていたようです。お兄様たちも馬車から降りてきておじい様のそばへと行きました。


「お爺様、もしかして化けるんですか」

「ああ、そのつもりじゃ」


オスカーお兄様がワクワクした声で問いかけて、おじい様はニヤリ笑いで返事をしました。

・・・って、ばける?


「さあ、セリアテス様、こちらにいらしてください」


サラエさんに連れられて、荷馬車のほうへ行きました。そこで着替えをさせられました。この服は・・・商人、ではなくて一般の人の服装みたいです。でも先ほど見送りに来てくれた人たちが来ていたものよりも、上等なような気がします。髪も二本のおさげに編み込まれました。


着替えが終わり外に出ると、お母様とお父様、お兄様も一般の方と同じ様な服装に着替えていました。もちろんお母様の髪形も一般の方々がしているような髪型です。


「ほお~。セリアテスは何を着ても可愛いのう」


おじい様が褒めてくれました。が、おじい様とおばあ様は服を着替えていません。


「あの、おじい様?」

「セリアテス、よく聞くんじゃ。ここからわしらは三隊に別れて進むことになる。セリアテスはユーリックが率いる商人に扮する隊で移動じゃな」

「それは・・・」


これは、まさか。


「セリアテスも察したと思うが、これから先も街に寄れば、先ほどのようなことが起こるじゃろう。セリアテスは療養のために領地に向かうのじゃ。あやつらにつき合う義理はないのじゃよ」

「でも、私がいないと困ることになりませんか」

「それは大丈夫じゃ」


おじい様が視線を向けた先を見れば、やはり王都の邸にいるはずのマリベルとポールがいました。マリベルは貴族の令嬢が身に着けるようなドレス姿です。ポールも貴族の令息が着るような服装をしています。


「でも、髪の色でバレてしまいますよ」

「それも大丈夫じゃよ」


おじい様はそう言うと、マリベルを手招きしました。マリベルは私たちのそばに・・・いいえ、私の前に立ちました。それから左腕を出すと、嵌めていた腕輪を触りながら言いました。


鏡像(ミラージュ)


腕輪についている魔石が光ました。でも、それだけです。マリベルの姿が変わったわけではありません。が、もう一度マリベルが呪文を言いました。


「発動」

「えっ?」


その言葉と共にマリベルの姿が変わりました。まるで鏡を見ているようです。そこには()が立っていました。


鏡像(ミラージュ)

「発動」


その声に振り向けば、ミルフォードお兄様が二人、向かい合わせに立っています。・・・ではなくて変化をしたポールですね。


お父様とお母様の前にもイアン料理長とクリスさんが立っていました。そして同じように姿を変えました。


「すごい。このような道具があるのですね」

「まあのう。じゃがこれで終わりではないぞ。ヴィクトール、セリアテスに教えてやれ」


そばに控えていたオットマー先生が私の前に来ました。


「セリアテス様、今から色変えの魔法をお教えいたします」

「それって、ランベルク様たちが行った魔法ですか」

「はい。これはなりたい色を思い浮かべて、変えたいものに触れるのです」

「ランベルク様達はそのようなことはしていませんでしたよね」

「はい。ですが彼らは慣れておりますから、手を当てなくても出来たのですよ」

「あっ、そうですよね。最初は対象がわかった方がいいですよね」


私はそう言って頷きました。そしてまずはオットマー先生が見本を見せてくれました。オットマー先生は髪に手を触れると、そこから藍色の髪が金色の髪へと変わっていきます。

・・・失礼かもしれないですけど、金髪はオットマー先生に似合っていませんね。


「とりあえず、一番私から一番遠い色にしてみました」


あっ、そう云うことでしたか。


「セリアテス様もやってみてください」


そう言われて、私はおさげ髪を触りました。視線をお父様たちへと向けます。


色を変える・・・どうしようかな。お父様たちとお揃いのハニーブロンドでは、変えた意味がないよね。お母様の濃いブロンドも駄目・・・だよね。おばあ様のような小豆色にしてみようかな。ううん、それだったら。


私は決めると、邸で見た肖像画を思い出しながら、色よ変われと念じました。いつの間にか目を閉じていたようで、「まあ」というお母様の声で目をあけました。お母様は懐かしそうに私のことを見つめています。


「昔のセリアに戻ったみたいだね。それなら、僕も合わせないと」


ミルフォードお兄様はそう言うと、自分の髪を触りました。


「親子なのだから、揃えるのは有りだな」


お父様はそう言うと、お母様と頷き合って色変えの魔法を使いました。そうしてミルクチョコレートのような茶色い髪の一家の出来上がりです。


「うふふっ。そうして同じ色になさると、ミリアリア叔母様とセリアテスはそっくりですわね」


クラーラお姉様が嬉しそうに言いました。お母様は嬉しそうに笑い返しました。カテリア伯母様たちも微笑んで見つめています。


私も嬉しくて、笑ってしまいました。



430話。


前話のあとがきで書いた伏線の場所がどこかわかりましたか?

『従兄話 オスカー6 王都からの脱出について思うこと』です。

あの時の王都脱出でいろいろしていたことが、ここに繋がります。


あの時のセリアちゃんは2歳、でした。

小さかったので覚えていないのですよ。

だからオスカーと爺様の会話に驚いていました。


次は閑話を挟みます。


ここまでお読みいただきましてありがとうございます。

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