26-9 王都を出て最初の街・・・
何やかやとありましたが、無事(?)王都を出発しました。門の外にも人が多くいたことには驚きました。
姿を見せるべきか迷いましたが、馬車は止まらずに進んでいくので、私はそのまま乗っていました。
門から離れ、人の姿もまばらになった辺りで、クラーラお姉様が言いました。
「セリアテス、疲れていないかしら。出発前から余計な心労を味わったのですもの。私にもたれて休んでいいのよ」
「ありがとうございます、お姉様。私は大丈夫です」
ニコリと笑えば、お姉様は優しく頭を撫でてくれました。
馬車の旅は順調に進んでいるようです。街道は整備されていて、馬車も余裕ですれ違うことが出来ますし、歩く方のために歩道も馬車道と並行して整備されています。歩道のそばにはある程度の間隔をおいて、果物が成る木が植えられています。多いのはリンゴの木とミカンの木だそうです。ちゃんと季節ごとに成る木を、順番に配置されているそうです。この果物は旅人のためのもので、いつでもとって食べていいそうなのです。
街道の整備はスクワーレ伯爵の先代・・・つまりフィリナのおじい様が指揮して整えたと、教えてもらいました。フィリナのおじい様は、戸籍のことを含めてもすごい方だったのですね。
私たちは一度川のそばで休憩をしました。そこで約束通りおばあ様とお母様、カテリア伯母様とクラーラお姉様と一緒の馬車へと乗り換えました。
うふふっ。女子トーク~。
お父様とおじい様、それからジーク伯父様まで、すごく・・・えっと、そのね、忠犬が飼い主を見上げるような目で見てきましたけど、おばあ様と伯母様の一睨みで何も言わずに自分たちの馬車へと乗られたのよ。
お兄様たちも少し残念そうでしたが、「またあとでね」と私が言ったら、「そうだね。あとで」と言って、馬車に乗り込んでいかれました。
そうして、昼食を取る予定の街へと着きました。
えーと、予想はしていたのですが、やはり『愛し子』の出迎えに、すごい人が集まっていました。先に通達が出ていたからか、町の警備の方々(?)が人混みを捌いてくれています。
食事処は貸し切りでした。
・・・貸し切りです。
えっと、この街の町長・・・でいいのかな? 何故か町の有力者と思わしき人たちが、挨拶にみえられました。
それも次々と。
これでは(家族が)落ち着いて食事が出来ません。
愛し子としては相手をしないわけにいかないのでしょうと、挨拶を受けていたのですが、一人一人が長いです。私に知己を得たいのは解るけど・・・わ・か・る・け・ど! 断っちゃダメかな~?
「いい加減にしてくれないか。我らは旅の途中だ。旅程は決まっているのに、余計なことで遅れそうだ」
「本当ですこと。ねえ、リングスタットは、何時からこんなに質が落ちたのかしら?」
ジーク伯父様が怒気を込めて言えば、カテリア伯母様も冷気を纏わせた視線を挨拶をしている方々へと向けました。町の有力者たちはその伯父様たちの様子に震え上がりました。顔色を無くして立ちつくす彼らに、おじい様がとどめを刺しました。
「お前たちは女神様の意向を聞いていないのか。愛し子を煩わせるとは・・・のう」
おじい様。そのタメは何ですか? 有力者の方々はもごもごと謝罪して、逃げて行ってしまったではないですか。
その後は美味しい料理を味わいました。食後のデザートに新鮮なフルーツの盛り合わせがでてきて、嬉しかったです。
えっと、もちろんこのお店だけで護衛の方々全員は入れませんので、いくつかのお店に分散して食事を取ったようです。私たちが食事を終えて外に出ると、護衛の方々も騎馬と共に配置についていらっしゃいました。
えーと、馬車は先ほどと同じで私はおばあ様たちと女子馬車に乗りました。お父様たちの視線が・・・気にはなりましたけど、女子トークの続きです。先ほどはカテリア伯母様がジーク伯父さまとどのように出会ったのかを聞いていたところなのです。ジーク伯父様がカテリア伯母様に告白する寸前で、この街に着いてしまったので、続きが気になって仕方がないのです。
というわけで、レッツ 女子トーク~!
さて、また休憩のために馬車を止めることになるようです。街道を外れて、川岸へと向かうようなので。
今の時間も盛り上がりました。伯母様の後はお姉様の恋バナです。ファラント様といつに出会ったとか、ファラント様がお姉様のために腕を磨き、王国一の騎士と呼ばれるようになったのかを、臨場感たっぷりに話してくれました。
出会いがお姉様が5歳でファラント様が12歳だったそうです。そこからお姉様だけのために、体を鍛えたなんて。若干ロリコンの気を疑わなくもないですが、今のお姉様は16歳。ファラント様も23歳です。恋愛するのにおかしくない年齢です。
うわ~。14歳のお姉様にファラント様が花の茎を輪にして、指輪のように指に通したですか~。もちろんファラント様は跪いて、お姉様の手を持ったのですね。そして左手の薬指に~。
キャー! ステキ~!!
・・・コホン。
つい、興奮してしまいました。
休憩場所に着いて馬車を降りた私は、他にも数台の馬車が止まっていることに気がつきました。馬車から降りたおじい様がその一団のほうに向かい、リーダーと思わしき方に話しかけたのを見て、私はあ然としたのでした。
428話。
ふっふっふっ
やっと伏線の一つを回収~!
いや、何がとか、どこかは気にしないでくださいな。
日時が進むのが亀ですが、それでも物語は進みだしました。
セリアちゃんのテンションも上がってきてます。
楽しい旅&領地での日々になるといいな~。




