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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
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26-4 領地へ・・・すんなり出発は出来ません その1

階段下でミルフォードお兄様と立ち止まって話していましたら、執事のアロンさんが来ました。遅いことを気にした誰かに言われたのでしょう。促されて私たちは食堂へと行きました。


「おはよう、ミルフォード、セリアテス。今日も可愛いのう」

「おはようございます、お爺様」


お爺様へお兄様が返事を返しましたが、私は小さな声で「おはようございます、おじい様、おばあ様」と言いました。おじい様は何か言いたそうにしましたが、私は気づかない振りをしてお母様のそばへと行きました。


「お母様」

「どうかしたの、セリアテス」


お母様が屈みこむようにして、聞いてきました。


「あの、私は・・・」


言いかけて、言葉を止めてしまいました。


「いえ、何でもないです。それよりジーク伯父さまたちはこちらにいらっしゃらないのですか」

「ええ、キャバリエ家の皆様は、今朝はあちらで朝食を食べられるそうよ。もう少し準備が整わないと、連絡が来たわ」

「それでしたら・・・お母様の隣で食べてもいいですか」

「ええ。それでは席につきましょうか」


そして、右隣をお母様、左隣はお兄様が座りました。お父様とおじい様が恨めしそうに私のことを見ましたけど、無視しちゃいました。


朝食を済ますと、一度部屋に戻ってから玄関ホールに下りました。オットマー先生がいつもよりラフな格好で来ていました。ラフというか・・・ローブを着ていないオットマー先生の姿は新鮮です。


「セリアテス様、おはようございます。今日はいい日ですよ」

「おはようございます、オットマー先生。ご一緒していただけて、嬉しいです」


挨拶が終わると、私たちは外へと出ました。外には馬車が何台も停まっていました。


「セリアテス様はこちらの馬車にお乗りくださいませ」


私はコモナー執事長の言葉に頷きました。お母様ににこりと笑いかけて一緒にと言おうとしたら、そばに来たおばあ様に小声で囁かれました。


「セリアテス、ミリアリアと一緒に馬車に乗るのは止めてくれないかしら」

「どうしてですか、おばあ様」

「セルジアスが鬱陶しいのよ。そんな状態で同じ馬車に乗りたくないわ。それでなくても昨夜から気落ちしているのよ。そこまで追い打ちを掛けなくてもいいのではないかしら」


おばあ様は後ろのおじい様たちに視線を投げかけながら言いました。おじい様たちは期待を込めて、私たちのほうを見ています。これって、おばあ様が説得してくださると思っているのですよね。


「えーと、おばあ様はそれでいいのですか」

「ええ。もともと私は領地に行くまでの間、馬車に乗る人を入れ替えることを提案するつもりでいたのよ。いくら旅程を5日に短くしても、毎日同じ顔では飽きるでしょう。せっかく馬車も何台かあるのだしね」

「それでは今日はお兄様たちと一緒に移動していいのですか」


私の言葉におばあ様はニコリと笑いました。


「今日はと言うことは、セリアテスも同じ考えだったのね」

「えーと・・・はい。せっかくなのでジーク伯父さま、カテリア伯母様とも、一緒の馬車でお話をしたいと思っていました」

「そう。では、次の休憩の時にはセリアテスの機嫌も直っていると、思っていいのね」


私は視線を逸らしながら答えました。


「おじい様とお父様・・・に、やりすぎたでしょうか」

「たまにはいいのではないかしら。リチャードは相変わらず自分の思い通りに事を運ばせようとするものねえ。リチャードも引退した身だと、控えてもらいたわ。それに、もともとは仕事にかまけて、セリアテスとどう接していいのかわからなくなったセルジアスが悪かったのよ。今更『溺愛しています』と、見せつけられても笑うしかないわ。どうして我が子ながら不器用に育ったのかしらね。あの二人を見て育ったにしては、ミルフォードもセリアテスも良い子に育ったわね。これはミリアイリアの功績が大きいのでしょうね」

「お義母様、私は何もしていませんわ。それどころか、私のほうこそ子供たちとどう接していいのか迷って、冷たい態度でいましたの。それなのに二人共、私のことを慕ってくれて・・・」


お母様がしんみりと言い、目元を潤ませてしまいました。


「あら、ごめんなさいね、ミリアリア。あなたを思い悩ませるつもりはなかったのよ。私もあなたが悩んでいることを知りながら、助言を与えることもしなくて。下手に祖父母がそばにいて子供たちを甘やかして、親との溝を深くするよりはと、領地に引っ込んだのだけど、どうやら悪手だったようね。それに、私とあなたも会話が足りなかったと反省しているわ。・・・そうだわ、王都を出た最初の休憩で、私とあなたとカテリアで、一緒の馬車に乗りましょう。邪魔な男共から離れて、お話をしましょうね」

「お義母様」


いいな~。女性同士の会話は楽しそうです。


「おばあ様、私とクラーラお姉様は除外ですか」

「あらあら、セリアテスも一緒に話をしたいの」

「お父様たち抜きというのが、魅力的です!」


勢い込んで言いましたら、おばあ様は「おほほ」と声をあげて笑いました。


「まあまあ、それでは休憩後を楽しみにしているわね。そうそう、男共のことは任せておきなさいね」


おばあ様は機嫌よくそう言うと、おじい様たちのほうへとお母様と行ってしまいました。


「そっかー、セリアは僕たちより、女性同士のほうがいいのかー」


何故か・・・ミルフォードお兄様が気落ちしてしまったのでした。



423話。


さあ、やっと領地へと出発です。

でもサブタイトルのとおり、すんなりと出発できそうにないでしょう。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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