26-1 領地へ・・・行く日の朝
おはようございます。本日も快晴みたいです。旅行日和ですね。11月17日の朝ですよ~。
私は早起きも早起きの、4時30分に目が覚めてしまいました。まだまだ暗いですね。今から着替えたら早すぎるかな~。
コホン
すみません。領地に行けることが嬉しくてはしゃいでいます。その自覚があります。
えーと、まずは落ち着かないと。深呼吸を~、スー、ハー。スー、ハー。
よし、落ち着いたかな。さすがに早すぎるから、もう少し寝た方がいいかしら?
それじゃあ、目を瞑って、体を楽にして休んでいましょう。
・・・ ・・・ ・・・
眠ったつもりはなかったのですが、あのあと、眠ってしまったようでした。
次に目が覚めたのは、誰かが部屋に入ってきた気配がしたからです。
案の定、サラエさんが声を掛けてきました。
いつもの時間に起こしに来てくれたようです。
着替え・・・今朝は運動は無しなので・・・って、あれ?
昨夜は私、自分の部屋で眠ってないですよね。
なんで、サラエさんが起こしに来てくれたのでしょう?
「・・・テス、セリアテスってば」
「クラーラ・・・お姉様?」
「よく眠っているところを起こしてごめんなさいね。でも、そろそろ起きないと、出発する時間に間に合わなくなるわ」
私はガバリと体を起こしました。ベッドから降りて私を起こしてくれていたクラーラお姉様と目を合わせました。お姉様の目は笑みをたたえて私のことを見ています。
どうやら楽しみにし過ぎて、早起きをした夢を見たようでした。
子供か、私?
・・・子供でした。
「おはようございます、お姉様。すぐに支度を・・・」
「ああ、大丈夫だから、慌てないのよ。私たちは部屋に戻って、それから着替えをするのだからね」
お姉様の言葉に「はい」と返事をして、ベッドから降りました。部屋の入口の方へ向かうと、お兄様たちが揃って待っていてくれたみたいです。
「おはよう、セリアテス。よく眠れたかい」
「おはようございます、ローラントお兄様。はい、よく眠れました」
「おはよう、セリアテス、今日は一緒の馬車で移動できると思うと、楽しみだよ」
「おはようございます、オスカーお兄様。はい、私もです」
「おはよう、セリア。じゃあ、一緒に母屋の方に戻ろうか」
「おはようございます、ミルフォードお兄様」
ミルフォードお兄様が手を差し伸べてきたので、私もその手を握りました。
私とお兄様が来賓館から戻ってきたところで、お母様とお父様に会ってしまいました。
「おはよう、ミルフォード、セリアテス。昨夜も、クラーラたちと一緒に眠ったのかい」
「おはようございます、父上。ええ、みんなと、最後の夜を楽しみました」
「おはようございます、お父様。そうなのです。お兄様たちとも一緒のお部屋で眠りました」
私も、お兄様に続いて、昨夜のことを話しました。
「おはよう、ミルフォード、セリアテス。そう、楽しかったのかしら」
「おはようございます、母上。ええ、と言いたいのですが、僕は割合すぐに眠ってしまって・・・」
「おはようございます、お母様。私もです。ですが、私がお兄様たちと一緒のお部屋で眠りたいと言ったので、オスカーお兄様とミルフォードお兄様が一つのベッドに眠ることになってしまったの。私もクラーラお姉様と一緒のベッドに眠ることになりましたし。今日は移動しなければいけないのに、お姉様たちが休めなかったのではないかと、私、心配です」
「大丈夫だよ。セリアも僕たちも子供だもの。二人で一つのベッドを使ったとしても、余裕だよ」
「本当ですか、お兄様。寝苦しくはなかったですか」
「うん、大丈夫だって。それよりも、僕らも早く着替えにいこう。父上、母上。それでは後ほど、食堂で」
「ええ、そうね」
お母様が笑顔で後でと階下へと歩き出そうとしたら、静かだったお父様が突然聞いてきました。
「ちょっと、待ちなさい。な・・・昨夜は、セリアも一緒の部屋とは、どういうことだ、ミルフォード」
「あなた、子供たちは支度がありますのよ。そのことは後で訊けばいいでしょう」
「いやミリー、由々しき事態だろう。セリアがいとことはいえ、男と同室で寝たのだぞ」
「ですから、子供同士の微笑ましい話ではありませんか。あなたも大概にいたしませんと、セリアに嫌われますわよ」
呆れたことを言いだしたお父様を、お母様が引っ張って行ってくださったので、私とお兄様は自分の部屋へと向かいました。
「お父様って・・・」
「ハハッ、仕方がないよ。セリアのことが本当に可愛くて仕方がないんだからさ」
思わず呟きが漏れてしまったら、お兄様がお父様のことをフォローするように言いました。
「嬉しいですけど、私の年齢を考えてほしいです」
「まあ、父親の性だと思って、受け入れてあげてよ」
「それでは、私が年頃になって恋をしたらどうなってしまうのか、いまから心配です」
ムンと、力を入れて言えば、なぜかお兄様は立ち止まってしまいました。訝しく思いながらも私も止まり、お兄様のことを見上げました。
「セリアテスは恋をしているの?」
「違います、お兄様。先の話です。年頃になってと言いましたよね」
「ああ。そう、だったね。・・・なんか、年頃のセリアだなんて、想像つかないよ」
お兄様の言葉に「私もです」と返しました。年頃と言いましたが、それは何歳くらいなのでしょうか?
「ねえ、セリアは・・・」
お兄様は何かを言いかけて、言葉を止めてしまいました。小首をかしげて見上げると、お兄様の綺麗なエメラルド色の瞳と目が合いました。思わず綺麗だなーと見惚れてしまった私の耳に、小声で呟くようなお兄様の声が聞こえました。
「セリアは、好きな人はいないの?」
420話。