魔術師長話1 考察は間違っていない・・・はずだ
今日も夜になってフォングラム公爵ご息女セリアテス嬢の一日の様子の報告が始まった。
まず、部屋付き侍女の報告だ。
目が覚め、着替えをし、朝食を食べ、医師による診察。
昨日と違うことは、支えられながらも自分の足で隣の部屋まで行ったことだな。
あと、本当に体調が良くなってきたのだろう。歩く練習をしたいと言って、兄の手を借りて部屋の中を歩いたそうだ。だが、筋力が相当に落ちているのか、部屋を一周歩いただけで疲れていたようだ。
一休みしていると、王子たちがやってきた。
最初にカークライト王子がきて、次にシュナイダー王子、最後にアルフレッド王子が部屋に来たそうだ。
部屋付き侍女の話を聞いていて、昼間セリアテス嬢が言った言葉を思い出し吹き出しそうになってしまった。さすがに今とあの場で笑い出すわけにいかなかったから、腹に力を入れてこらえたが・・・。
だが、彼女が言った、王子達のことを「知らない人たち。言われた言葉が美辞麗句といいますか・・なんか口説き文句みたいでした」を聞いた宰相と大臣の何人かはこらえきれずに吹き出してしまっていたな。
王子達も・・・3人してほめたたえていたようだがなぁ~。セリアテス嬢がバランスを崩したのを支えたアルフレッド王子が一歩リードか。と、思ったが、王女達が来て見事に牽制されてしまったようだ。それどころか彼女は「知らない方との会話」と言っていたそうだから、眼中にないことがわかったな。
・・・おい。セルジアス、あからさまにホッとするんじゃない。
レイフォードも頭抱えようとするな。一応お前は国王なんだから。
それにしても、さすがはローザ王女。エリザ王妃に似て、いいタイミングで入ってくるよな。
そして、件のスクワーレ伯爵令嬢との、会話。
これは・・・やはり入れ替わりを疑わざるえないかもしれないな。
彼女らしくないという以前の問題だ。
いくらなんでも7歳であんな考え方はできないだろう。
いや、それよりもどこからあの考えに至ったかということだな。
この国の者にはあのようなことは考えつかないだろう。
皆、彼女の言葉に感心しているが、もう少し彼女の特異性に目を向けてほしいものだ。
ああ、違うな。一人だけ気が付いている者がいたな。
王宮医師のウルバーン。彼は若いのにいい目をしている。
こういう場では、発言するだけでも萎縮してしまうものだが、そんなこともなくしっかりと自分の意見を言っていた。
将来が楽しみな若者だ。
それにしても、彼女のスクワーレ伯爵令嬢にした提案はすばらしいものがあった。
スクワーレ伯爵令嬢の罪悪感を逆手にとって、一緒に勉強をしてほしいと願うとは。
スクワーレ伯爵令嬢は、今までの彼女の取り巻きと違って性質がよさそうだし、伯爵令嬢も手伝いということならセリアテス嬢のそばにいやすいだろう。
・・・だが、こんな気遣いも子供らしくないものだ。
ローザ王女が言った言葉にセルジアスが青い顔をしやがった。
おいおい、セリアテス嬢はまだ7歳だぞ。
争奪戦なんてまだまだ先の話だろう。「そうか、高い壁か・・・」なんて呟くなよ。
侍女が話す中で、私達が訪ねた部分は省略してもらい、辞去した後のことをきいた。
家に帰れると聞いてとても喜んでいたこと、部屋をどうするかと公爵夫人と話していたこと、夕食後すぐに寝てしまった。で、侍女の話は終わった。
次はウェルナー医師が話したが、診察の結果は昨日と変わらないこと、明日の診察で、状態が落ち着いているようなら、家に帰って大丈夫だろうと言っていた。
「本当に家に帰して大丈夫なのか」
「はい。体の方はもう大丈夫です。筋力の衰えについてはこれから少しづつ体を動かして取り戻すしかないのです。記憶の方もこれ以上王宮にいるよりもフォングラム公爵家に帰られたほうが、いろいろ思い出せるかもしれません」
陛下の言葉にウェルナー医師は即答した。
ウェルナー医師の言葉に何人か頷いている。
おいおい、何を言ってるんだ。人格が入れ替わっているかもしれない者を、野放しにするつもりか。
「お待ちください。私はセリアテス嬢を家に帰すことに反対です」
41話です。
読んでいただきありがとうございます。
楽しみにしてくださっていた方お待たせしました。
ですが、まだ、しばらくは毎日更新できないかもしれません。
時間を作って続きを書きたいと思いますが・・・。
活動報告に理由を書きますので気になる方は読んでください。
では次話で。