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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
419/444

25-20 お別れの前にけじめを・・・

お父様とおじい様が項垂れる様子を見ていたジーク伯父様は、ハッと我に返ると聞いてきました。


「あっ、えっと、セリアテス。私たちは一緒で構わないよな」

「ジークフリート伯父様。危険を回避するためにも別の宿屋のほうが宜しいのではないですか」

「いや、でも、その、私たちはサンフェリス国の・・・」

「でも、今回は外交でいらっしゃったわけではないですよね。私のためにいらしてくださったことには感謝いたしますが、優秀な護衛の方々がいらっしゃるのに、わざわざ同じ宿屋にする必要はないと思います」


私の言葉にお父様たちと同じように項垂れるジーク伯父様。


「「私はいいわよね」」


カテリア伯母様とおばあ様の声が重なりました。


「もちろん駄目に決まっているよね、セリアテス」

「オスカー、あなたは黙っていなさい」


カテリア伯母様がオスカーお兄様を睨みましたけど、お兄様は涼しい顔です。


「いいえ、お母様。駄目ですわ。・・・というよりも、一言セリアテスに謝ればよろしいでしょう。セリアテスも許すはずよ」

「セルジアスのことを許してないでしょう」

「それは別ものですわ。セルジアス叔父様がミリアリア叔母様の様子ばかりを窺うのですもの。セリアテスだって、許しを与えたく無くなりますわ」


私の言葉に、お父様が気まずげに視線を外しました。・・・まあ、いいのですけど。お母様のご機嫌を損ねたくないのはわかりますから。私もお父様たちが仲が良い方が嬉しいです。・・・でも、もう少しいいかな。


「あっ! そうです。私、お姉様やお兄様たちとも、一緒に馬車の中でお話しがしたいです」

「私も一緒に行きたいわ。では、お父様たちの馬車にはお爺様たちがお乗りになればいいわね」

「それはいいね。ミリアリア叔母上、楽しい旅にしましょうね」


悪乗りした私にお姉様、ローラントお兄様も乗ってくれます。お父様は尚更落ち込まれてしまいました。


「フフッ、そろそろ折れたらいかがですの。それとも、女神様にまたお叱りを受けたいのですか。ああ、そうなのね。女神様のお叱りに快感を得てしまいましたのね。いやだわ。親族がそんな性癖をもっているなんて」


クラーラお姉様、もしかして怒っておられます? 追撃のお言葉が・・・。


情けない表情で顔を見合わせたおじい様たちは、お父様から順番に私へと謝ってきました。私はニッコリ笑顔を返しました。今度こそホッとした顔をしたおじい様たちです。・・・でも、私、許すとは言っていませんよ。


「でも、やはり明日は、お父様、おじい様、おばあ様とは、別の馬車がいいです」


そう言った私の言葉にガクリと項垂れてしまった、お父様たちでした。



さて、部屋に戻り、お風呂に入って、夜着に着替えました。今日のパジャマ・・・ではなくて、ネグリジェです。枕とウサギのぬいぐるみを持って移動します。コンコン


「誰かな?」


部屋の中から返事があったので、扉を開けました。


「「「セリアテス!」」」


案の定、お兄様たちは一緒の部屋に居ました。


「お邪魔しまーす」


部屋の中に入ってきた私に、お兄様たちは慌てています。


「どうしたの、セリア。クラーラと一緒に寝るんじゃないの」

「私、今日はお兄様たちと一緒に寝たいです。駄目ですか」


枕とウサギのぬいぐるみを抱きしめて、お兄様たちのことをじっと見つめます。


「駄目・・・って」


ミルフォードお兄様が絶句なさいました。ローラントお兄様が両手を広げました。


「おいで、セリアテス」

「ローラントお兄様」


ポスンとぬいぐるみごと、お兄様の腕の中へとダイブした私。お兄様は私を受けとめて抱きあげると、ベッドへと腰かけました。


「それで、本当はどうしたんだい」


どうやら、ローラントお兄様には私の気持ちはバレているようです。ストンとお兄様の膝から降りて、お兄様たちと向かい合います。


「ローラントお兄様、オスカーお兄様、ミルフォードお兄様。今日は本当にありがとうございました」


ペコリと頭を下げて顔を上げますと、照れた顔をしたお兄様たちがいました。


「私は何もしてないよ」

「そうだね。いいところはすべてオスカーに持っていかれたもの」

「何を言っているのさ、兄上もミルも。僕たち子どもの勝利でしょ」


謙遜? し合うお兄様たちに、私は笑みを浮かべて言いました。


「クラーラお姉様も含めて、お兄様方が私のことを考えて行動してくださったことを、嬉しく思います。本当に感謝しております」

「あら。私のことも忘れていないのね」


声が聞こえた方を振り向くと、クラーラお姉様が扉を開けて入ってくるところでした。


「姉上、どうして」

「セリアテスがこちらに向かうと侍女から連絡が来たのに、一向に姿を現さないのですもの。どこに行ったのかと、探しに来たのよ」


クラーラお姉様は私のそばへくると、頭を撫でてくれました。


「感謝なんてしなくていいのよ。あなたは大切な私の従妹なのだから」

「それでもです。お姉様たちは私のために隣国から来てくださいました。このひと月の間、お姉様、お兄様たちには一杯甘えさせていただきました。もう少しご一緒出来るのですけど、この館では最後の夜になります。なので、感謝を伝えたいと思いました。本当にありがとうございました」


もう一度、今度は深くお辞儀をしました。本来なら、片足を後ろに引いて腰を落とす淑女の礼をすべきなのでしょうけど、私は彼女がしていたように、腰を折るお辞儀をしたのです。


顔を上げると、微笑んで見つめているお兄様たちがいたのでした。



418話。


ひとまず11月16日話は終わりです。

次は閑話で・・・誰話になるのかな?


そして、いよいよ領地話へと進みます。

領地でもあれやこれやが起こるのだろうな~。


まだまだ続きますので、よろしければお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。



記録として(2020.8.15)

ブックマーク2700件超えました。

ありがとうございます。

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