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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
417/444

25-18 確認は・・・大事です

再びジーク伯父様がイアソート様に詰め寄りました。今度は何故か、おじい様とお父様、カテリア伯母様までがイアソート様に詰め寄っています。


おかげで、私の前の圧が・・・。


ローラントお兄様が、私を抱き上げてソファーから離れさせてくださらなかったら、圧死・・・は冗談としても、本当に身動きが出来なくなっていたことでしょう。


クリスさんもソファーから立ち上がり、皆様に場所を譲っていました。


それで私はというと、お兄様たちと一緒に椅子に座っています。お兄様たちは呆れた視線をおじい様達へと向けていました。


「ところでセリアテス、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「なんでしょうか、オスカーお兄様」

「さっきのことなんだけど、なんでイアン料理長のことを父上に話したの」


オスカーお兄様は目を煌めかせて聞いてきました。・・・これって、悪戯を思いついた時の表情に似ていますけど、そんな面白いことはないですよ。


「えっと、その、私はイアン料理長はキャバリエ公爵領の出身者だと思ったのです」

「そういえばそう言っていたね。でも、どうしてそう思ったの?」

「料理長とお会いした時にイアン・キャバリエと名乗られたのです。てっきり庶民の方は家名など持たないから、住んでいる領地の名前を名乗られると思いました」


お兄様たちは顔を見合わせました。


「ああ、そういうことか」

「記憶がないって、こういうことなのね」


ローラントお兄様とクラーラお姉様が、解ったというように頷かれました。


「あのねセリア、確かに庶民には家名を持たない者もいるよ。でもさすがに住んでいる領主の家名を、そのまま名乗ったりしないんだよ」

「そうさ。それについては、イアソート伯父上が迂闊だった、だね。本来なら、キャバリエではなくて、キャベリッツもしくはバリアーズと名乗るのが、うちの領民には多いんだよ。領主館がある都市のキャバリアーズからもじって名乗っているのさ」


ミルフォードお兄様とオスカーお兄様が、教えてくれました。


「そういう決まりがあるのですね」

「決まりというわけではないよ。他にも自分が生まれた村の名前を名乗ることもあるしね」

「あっ、やはりそうなんですね」


私が相づち的に返事をしたら、お兄様たちはまた顔を見合わせました。


「これは、緊急ではないけど、領地に行くまでに教えておいた方がいいのではないかな」

「そうね。中途半端に偏った知識よね」

「えーと、ローラントお兄様、クラーラお姉様、何かまずいのでしょうか」

「いえ、まずい・・・というわけではないのだけど」


お姉様は言葉を濁されてしまいました。眉根を寄せて困ったように微笑みました。


「あっ、そう言えばミルフォード、ミルは何時から知っていたの?」

「えっ、僕? それはオスカーと一緒だよ」

「そうか。それじゃあ、ミリアリア叔母上。記憶を失くす前のセリアテスは知っていたんですよね。教えたのですか」


オスカーお兄様はミルフォードお兄様に確認してから、お母様へと問いかけました。この言い方ですと、ミルフォードお兄様は最近まで知らなくて、私は前から知っていたようです。


「教えたわけではないのよ。たまたまお義父様とイアソート様の会話を聞いてしまったセリアテスが、私に聞いてきたからだったのよ」

「あー、やっぱりそうか。セリアテスって、前から変に鋭いところがあったよね。叔母上もセリアテスにウルウルの目で見られて、誤魔化せなかったんでしょ」

「わかってくれるのかしら、オスカー様」

「叔母上、様はいらないですよ。ええ、分かりますよ。記憶を失くしたと云っても、セリアテスはセリアテスです。全然変わっていませんよね」


オスカーお兄様の言葉にクラーラお姉様がクスクスと笑いながら言いました。


「そうね。相変わらず真面目で、でもお茶目なところもあって、それから人の気持ちを(おもんばか)れる子だわ。ええ、本当に変わっていないのね」

「・・・ええ、知りたいことは答えを見つけるまで、放してくれなかったの。それなのに私の立場などを思って、我が儘は言わなくなってしまって・・・。それをセリアの成長と思って、寂しいけど一歩引いて見守ろうと思ったのよ」


お母様は少し遠い目をして、悲しそうに言いました。


「お母様は寂しかったのですか」

「ええ。・・・ああ、違うわ。私が悪かったのよ。他の子より早く大人になろうとするあなたに、どう接していいのかわからなくってしまったから。その気持ちを読んだセリアが、私と距離を置くようなことになったのは、私の自業自得なのよ。あなたを甘えさせてあげられなかったのは、私が悪かったのね」


記憶を失って目覚めた直後、家族との距離が遠い気がしていたのは、気のせいではなかったのよね。少しずつ距離をつめて、今では溺愛というくらいに甘やかされている・・・と思う。それでも、過去をなかったことにはできないから、このように思い出して後悔をするのだろう。


「お母様、私は・・・記憶を失くす前の私も、お母様のことが大好きです」


そうでなければ、お母様をお手本にして、小さな淑女(リトルレディ)と呼ばれるまでになるわけがないわ。



416話。


オスカー、さりげなく問題を投下しておいて、あとは放置かい。

・・・というか、オスカーに任せると、疑問をさっくり解決してくれるから、好き。

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