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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
407/444

25-10 アグニスタ様の真の目的・・・とは?

落ち込んだ私の頭に誰かの手が乗りました。見上げると、おじい様がそばに来ていて、私の頭を撫でていました。


「セリアテスは悪くない。と、言うたのが分かったじゃろ」

「ですが、私のせいですよね。おじい様がアグニスタ様の思惑を読み切れなかったのは」


私が見上げながら言うと、おじい様は目を細めて、先ほどのように私を抱き上げてきました。


「セリアテスのせいではないぞ。カテリアが言うたように、わしでも畏怖の念を持っておるのじゃからな」

「畏怖の念ですか?」

「ああ、そうじゃ。やはりの、フォンテインは特別なのじゃよ」


おじい様は私を抱いたまま、私が座っていた椅子に腰かけました。今度は横向きにおじい様の膝に座ったので、再度おじい様を見上げました。


「おじい様、アグニスタ様の真の(・・)思惑とは、なんだったのですか?」

「・・・ほんにのう、セリアテスは聡いのう。気づかんでくれると、よかったのじゃがのう」

「隠しておきたいことですか? それでしたら、聞くつもりはありませんが・・・」

「いやいや。今更隠したところで意味はないんじゃ。ただの、領地にいる間くらい、そういうことは忘れて過ごさせたかっただけじゃ。・・・ところでの、どこでセリアテスは気づいたのじゃ?」

「先ほどお姉様が『最後の部分はフォングラム公爵家への牽制でもあった』と言いましたので。アグニスタ様の言葉は、おじい様が先ほど言ったように『様々なことを教えるように』と、言っていたと思いました。でも、それでは伯母様がわざと話を逸らそうとしたことや、お姉様が言われたことと、矛盾が生じると思ったのです」


私の視界の端に、まずいという顔をしたお姉様と、眉を寄せている伯母様の顔が見えました。


「それにおじい様もカテリア伯母様と『最後の手段が使えなくなった』と、話していたじゃないですか。あの言葉を言ったということは、それが有効手段であったということではないのですか。それが出来なくなってしまったのは」


言い募ろうとした私はぎゅうとおじい様に抱きしめられて言葉を止めました。


「こりゃこりゃ。そんなに思い詰めるでないわ。いいか、セリアテス。ほんにの、大したことではないんじゃよ。エリザ王妃が言うた『王家とフォングラム公爵家を入れ替える』というのは、意味をなさないんじゃ」

「意味がない・・・のですか?」

「ああ、そうじゃ。リドカインの捨て台詞の『王家の婚姻云々』は、例えわしらがリングスタットの王家になったとしても、セリアテスの婚姻は他の王家にとって、牽制にも抑止にもならんと言うたのじゃよ。それどころか、王家と変わったほうが、聖王家に優先権が発生すると暗に匂わせおったんじゃ」

「・・・なんで聖王家に優先権が発生するのでしょうか?」

「それはセリアテスが『聖王家を特別なもの』と認めたからじゃ。あやつのことだから、セリアテスの言葉を良いように解釈したじゃろう」


私はおじい様の服をぎゅっと握りしめました。顔からまた血の気が引いてしまったと思います。それと共に悔しさから、涙がせり上がってきました。

そんな私の頭を、またおじい様は優しく撫でてきました。


「心配せんでもええぞ、セリアテス。さすがにの、リドカインはやり過ぎじゃ。きっと女神様も今頃は、自分の言葉を聞かなかったリドカインに、直接説教をしていることだろう。だからの、あとのことは女神様に」


不意におじい様は黙り込んでしまいました。不自然なところで言葉が切れましたし、どうしたのだろうとおじい様のことを見上げました。


おじい様は目を見開いていました。


「いや、まさか・・・。だが、変に執拗にしておったし・・・。そうであれば・・・。ああ、そうじゃ。もっとはっきりとした言葉を引き出せたはずじゃ。じゃが・・・」


何やら、ぶつぶつと要領の得ない言葉を言っています。


「お父様、どうなさいましたの?」

「父上、何かお気づきになられたのですか」

「リチャード様、リドカイン殿の言動の意味に気づかれたのですか?」

「リチャード、一人で納得してないで頂戴!」


おじい様は伯母様、お父様、ジーク伯父様、おばあ様に聞かれて、一度私を見てからおばあ様へと視線を向けました。


「わしらは根本から間違えていたのかもしれんぞ」

「どういうことかしら? リドカイン様はセリアテスの、愛し子としての言葉が欲しかったのではないの?」

「わしも先ほどまではそう思っておった。だがの、思い返してみると、あやつは最初から慇懃無礼な態度を取り続けておったじゃろ。さりげなく見せながら強引に話の流れを持っていっておった。そしてセリアテスから聖王家を肯定する言葉を引き出したことで、帰って行ったじゃろ」

「ええ、そうね」

「セリアテスから愛し子の言葉を引き出すつもりなら、捨て台詞はいらんかっただろうの」

「そうね。余計な一言だったわ。で、それが何に繋がるというの?」

「ああ、捨て台詞のせいでわしら・・・は、いいとして、セリアテスを悩ますことになっただろう。それにわしらは深読みをして、セリアテスにいろいろ話してしまったではないか」

「それが目的で捨て台詞を残したのではないの、お父様」


カテリア伯母様がおじい様とおばあ様の会話に割り込みました。


「確かにそれもあっただろうが、このことを知れば一番怒るのは誰になると思う?」

「それは・・・まさか! いえ、そんなことがあるの? 女神様から御叱りでもいいから、直接言葉をかけてもらいたいから、あのような態度をしたというの?」

「わしも、馬鹿なと思うたが、それが一番可能性が高いのじゃよ」



406話。

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