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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
401/444

25-4 外交に関するお話・・・

「えーと?」


何ででしょう。理解が出来ていません。お父様が暴言を言われて、それに対して大使館を撤収してきた・・・んですよね。それが何で関税の話になるのでしょうか?


「すみません。政治が絡む話は分かりにくいですよね」

「はい、・・・あっ、すみません」

「いえいえ。そうですね、国同士のことを簡単に言いますと、『互いに認め合って何かあった時には力を合わせましょう。そのためにも条約を決めて便宜を図りましょう』という約束が出来ているのが、国交があるということです」

「はい・・・(う~ん、でも微妙に意味が違うような気もするけど?)」

「そして、お互いの国で自国民が揉め事を起こしたり、巻き込まれた時に対処するために、大使館が置かれます」

「はあ・・・(そうなんだ)」

「その大使館を撤収するということは、交渉が決裂したことを示し、お互いの国が交わした条約も効力を失ったことになります」

「・・・あー、そういうことなのですね」


そうか。お父様が大使館を引き払ったということは、その国と結んでいた条約・・・関税や通行税もでしょうか? 優遇する必要はないというわけですね。


あっ、でも商人の方にとっては大問題ですよね。


私はアグニスタ様の顔をじっと見つめました。アグニスタ様は微笑むと続きを話してくれました。


「セルジアス殿に失礼を働いた国は、商人の訴えにギョッとしたようですが、『それならば他の国を通ればよい』と布告を出したそうです。ですが、これが国の首を絞めることになりました」


アグニスタ様は笑みを深めました。


「というのも、リングスタット国は、今から20年ほど前に国内の街道を整備されました。周辺諸国は整備された街道を見て、リングスタット国に攻め込みやすくなったと思ったようです。ですが、それは逆でした。整備された街道は通りやすく、それと共に宿場街も整備され、騎士が街道を巡回するようになり、安全性が高まったのです。そうなりますと、街道沿いで野盗などがのさばることも無くなりました。商人などは危険が多い周辺諸国より、リングスタット国を抜けて行こうと考えるようになり、実際にそうする商人が増えていました。商人も馬鹿ではないので、自国がやらかしたことを知ると、他国へと本拠地を移すことにする者が出てきました。そう、他国に本拠地を置く商人の関税などは変わっていないと知りましたからね」


ニコッと笑って「失礼します」と紅茶を口に含まれた、アグニスタ様。


「次々に国から商会の本店が消えていくことに気がついたその国は、やっとかなりまずい事態になったと気がつきました。まだリングスタットに大使館は置いていたので、そこからリングスタット国と交渉をしようとしたのですが、王宮の対応は冷たいものでした。それにその頃にはリングスタット国と友好的な国からも冷たい対応をされるようになったといいます。とうとう聖王家に泣きつくしかなくなったというわけなのでした」


もう一度紅茶を口に含まれたアグニスタ様。


「自業自得と放っておきたかったのですが、さすがにそれをするわけにはいきませんでしたからね。まあ、貸しを作ったことで牛耳りやすくなったので、良しとしました。・・・と、当時に担当した者が言っていました」


ニコニコとアグニスタ様はおっしゃいました。


「アグニスタ様が、なさったのではないのですか」

「いいえ。私はその頃はまだ外交には関わっておりませんでしたから」


おじい様からお父様へと仕事が引き継がれたのが、確かミルフォードお兄様が生まれてからだと聞きました。そうしますと今から10年から7、8年前くらいの話になるのでしょうか?

アグニスタ様はお父様より年上に見えます。けど、まだ30代だと思うのです。そういえばランベルク様の兄だと言っていましたし、ランベルク様は王弟とも言っていましたね。

そうなると、アグニスタ様も王族?

というか、おじい様とも親しげでしたよね。いつどこで、知り合ったのでしょうか?


考え込んだ私に柔らかな声がかかりました。


「どうかなさいましたか、セリアテス様。気になることがおありでしたら、何でもお聞きください」

「えーと、アグニスタ様はおじい様とお知り合いみたいですが、どこで知り合ったのかと思いまして・・・」

「ああ、そのことですか。それはリチャード様が我が国にいらっしゃったときですよ。小生意気な王子に世間というものを教えてくださいました」

「はい?」


思わずアグニスタ様とおじい様のことを交互に見てしまいました。おじい様はアグニスタ様を睨んでいましたが、私がおじい様のことを見たことに気付くと、視線を外してしまいました。


「ククッ」

「アグニスタ様?」


笑い声にアグニスタ様のことを見ましたら、口元を覆って笑っています。


「いや、失礼。リチャード様も孫の前では好々爺となるのかと思うと、おかしくて」


そう言って、また口元を覆ってククッと笑っていました。


「リドカイン様!」


おじい様が低い声でアグニスタ様の名を呼びました。アグニスタ様は笑うのをやめて真顔に戻りました。が、すぐにまた笑いだしてしまいました。


だって、おじい様の低い声に驚いて、おじい様のことを凝視した私の顔を見て、おじい様は怖い顔をすぐに和らげたのですもの。ね。



400話。

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