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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第1章 セリアテスと記憶喪失と王宮の人々
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1日目の2 まだ……混乱中……・?

 お兄様に優しく頭を撫でられているうちに、少し落ち着いてきました。

 ワアワアと泣いていた声も、すすり泣きに変わりました。

 気持ちが落ち着いてきたのか自分の泣き声だけでなく、廊下を歩いてくる人の話し声が聞こえてきました。

 いくら扉が開いているとはいえ、少し大きな声で話しているようです。


 そして、扉から誰かが入ってきました。


「セリア。無事か?」


 入ってきたのは30代前半くらいの美麗な男女とメイドさんです。

 メイドさんは先ほど公爵を呼びに行った人でした。

 それでは、この人達が公爵夫妻なのでしょう。

 なぜか、部屋に入りながら声をあげた男の人と一緒に来た女の人は私を見ると、お兄様の時と同じに固まってしまいました。


(このかおは……しらない

 ううん

 しっている

 そう

 このひとたちは……)


 私は女の人の顔を見つめていたら、また涙が溢れてきました。


「お、おかあしゃま・・・」


 自然と言葉が口をついて出ました。

 その言葉と共にお兄様にしがみついていた手を離し、お母様に手を伸ばします。

 私の様子にはじかれたようにお母様が動き、そばにやってきました。

 お兄様は私の身体を支えてくれて、お母様がそばに来たら入れ替わるように場所を譲りました。

 私がお母様にしがみついたら、お母様も一瞬ビクッと体を震わせました。

 そしておずおずと私を抱きしめました。


「おかあしゃま?」


 もう一度呼びかけると、


「セリア!」


 と一言言ってギュッと胸に抱きしめてくれました。

 そして、お母様も泣き出してしまわれました。

 お母様のぬくもりに包まれてやっと安心できたと思っていたら、お父様の戸惑った声が聞こえてきました。


「ミルフォード、これは一体……」

「父上、セリアは目覚めたときに知らない所にいたので、混乱したようです。私が部屋に入った時に私の顔を見て安心したのか、泣き出してしまいました」


 お兄様の説明に納得したのか、一つ頷いて私の方に近づいてきます。

 でも、何となく浮かない顔をしていました。

 お母様の左肩に右手を置き(振り返ってお父様の顔を見た、涙に濡れたお母様のまなざしに軽く頷きます)左手を私の頭に置き優しく撫でてくれました。


「おとうしゃま」


 お父様に呼びかけましたら、何かを言おうと口を開きかけた状態でまた固まってしまいました。


「おとうしゃま?」


 もう一度お父様にも呼びかけますと、ビクッと体を震わせたあと、私の頭を優しく撫でてくれます。

 そうしてとびっきり優しい笑顔で話しかけてくれました。


「何だい、セリア」

「あのね……ここ、いやなの。……ウウッ……おうち、かえるの~」


 お母様に抱かれて安心して止まりかけた涙は、お父様の優しい声に目が覚めた時のことを思い出して、私はまた泣き出してしまいました。

 お父様とお母様は目を見交わすと、頷きあい動き出しました。


「わかったわ、セリア。すぐに家に帰りましょうね」


 また、お母様は私をギュッと抱きしめてくれました。

 お父様は扉の外にいた誰かに馬車の用意を言いつけています。

 お兄様はどこからか大きなショールを持ってきました。


「母上、これでいかがでしょうか?」

「ええっ、これならいいでしょう」

「セリア、すぐ帰ろうな」


 私は大きなショールに包まれるとお父様に抱き上げられました。

 そして、もう用はないとばかりにみんなして部屋を出て行こうとしました。


 慌てたのはメイドさん達です。

 私が目を覚ましたと思ったら、いきなり帰ると言い出したのですから。


「お待ちください、公爵様。お嬢様はお目覚めになられたとはいえ、7日間も眠っておいでだったのです。高熱も出ておいででした。医者にお見せにならなくてはいけません」


 お父様はメイドさんを一瞥しました。



3話目です。思ったより早く書けました。

読んでくださりありがとうございました。

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