25-2 領地に行く前に・・・
今日の昼食会には、ジークフリート伯父さま一家・・・キャバリエ公爵家としての、最後の外交です。伯父さま一家とお父様、おじい様、おばあ様が参加をしています。
本来ならお母様も参加するべきなのでしょうが、私を置いていけないと参加を取りやめました。そうなると、お兄様も昼食会に参加する理由がないからと、王宮に行くのもやめたのです。
なので、お家でのんびり中です。
それから、フィリナ・・・えー、スクワーレ伯爵家は、昨日のうちに自宅へと帰りました。昼食をみんなで食べてから・・・でした。本当は夕食までと言ったのですが、私の体調のことや領地へ向かう準備などがあるだろうということで、昼食後に帰られたのでした。
それから・・・昨夜は、アルンスト侯爵家、ルートーガー公爵家を招いての晩餐会でした。・・・いえ、夕食会です。晩餐会といえるようなドレスアップはしていないので。みんな、キャバリエ公爵家がサンフェリス国に帰ってしまうのを、残念がっていました。
アマリアちゃんとギルベルト君も、クラーラお姉様、ローランドお兄様、オスカーお兄様と別れることを、寂しがっていました。二人は泊まりたそうにしていましたが、両親にたしなめられて、帰って行きました。
そして、今夜は我が家での、お別れ会です。
・・・いや、でも、これってやる意味あります?
フォングラム家の領地まで一緒に行くんですよ。その後も、数日領地で一緒に過ごすことが決まっています。
お別れ会をするのなら、その時でいいのではないでしょうか?
でも、我が家に勤める方たちが楽しそうに準備をしているので、言えないですよね。
そんなことを思いながらも、お母様とお兄様とのんびりとしていました。
・・・大事なことなので、もう一度言います。お母様たちものんびりと過ごしました。
はあ~、相変わらず過保護なお母様に、甘える以外のあれこれを禁止されたのですもの。もう二人の間に座って、甘えるしかないじゃないですかー!
そこに昼食会が終わったのか、お父様たちが帰ってきたみたいです。馬のいななきと馬車が止まった音がしましたから。応接室で待っていると、執事のアロンさんが私への来客が来たと言いにきました。お母様が険しい顔で、「予定にない方ですので、お帰り頂くように」とおっしゃいました。
「ミリー、どなたが来たのか、聞いてからでもいいのではないかい」
お父様が応接室に入りながら言いました。そのままお母様のそばに寄り「ただいま」と、頬にキスをしています。お母様も最近は慣れたのか、照れもせずに受け入れていらっしゃいますね。
「それに、セリアへの来客だよ。セリアが決めるべきだろう」
「でも、あなた」
お母様は続けて何かを言おうとしましたが、お父様の表情から私へと視線を向けて、・・・見つめてきました。というか、オロオロしているのが手に取るようにわかるのですけど。顔は無表情ですけど・・・。
「ええっと、セリア・・・」
あっ! 言葉に詰まってしまい、少し涙目になりかかっています。お父様へと視線を向けて・・・お父様が息を飲んだのが分かりました。お父様の手が上がるのを横目に見て、私は言いました。
「どなたがいらしたのですか、お父様」
お父様は一瞬固まり・・・いえ、動きを止めてから、口元に笑みを浮かべて私のほうを向きました。
「セリアが会いたくないと思ったら、会わなくていいから」
連れてきた・・・いえ、うちに訪ねるのを許可しておいて、それはないのではないでしょうか。少し呆れを込めた視線を向けたら、狼狽えています。
「あ、いや、その、領地にセリアが行く前に、話をしたいと言われて・・・。フォンテインの大使がいらっしゃっているんだ」
「そうですか。お会いするのはこちらでよろしいのでしょうか」
「ああ、ここで構わない」
アロンさんがすぐに案内をしてきてくれました。フォンテインの大使は私が立ち上がって迎えましたら、ホッとした表情をなさいました。それから、恭しく頭を下げ、顔を上げてから言いました。
「セリアテス様、ご尊顔を拝謁する栄誉をお与えいただきまして、恐悦至極にございます。私はリングスタット国の駐在大使をしております、フォンテインのリドカイン・セベシュ・アグニスタと申します。今まで名乗りもせずにいたご無礼をお許しください」
そう言うと、再度頭を下げられました。
「えっ、えっと・・・頭をお上げください、アグニスタ様」
私はアグニスタ様の言葉に、瞬きを繰り返しました。丁寧なのはいいのですけど・・・する相手を間違えている気がします。
「こりゃ、リドカイン。セリアテスを混乱させるでないわ。丁寧すぎるのも嫌味じゃと、言うただろう」
「何をおっしゃいますか、リチャード様。最初の挨拶は大切だと言われたのは、リチャード様ではありませんか。それにこれまで、挨拶をさせて頂けませんでした。それならば丁寧にするのが、当たり前でしょう」
えーと・・・まさか13日に名乗りを遮って、言わせなかったことがこのように返ってくるとは思いませんでした。
あのことをあてこすられているのかと思って身構えましたが、次の言葉で違うとわかりました。
「大体、リチャード様もセルジアス殿も、私に厳しすぎませんか。前だって侮った彼らの仲介をしようとしただけなのに、『味方をするのであれば容赦はしない』と、脅しましたし。こちらだってしたくてしているわけではないんですよ。第1聖王家の立場として仲介しようとしただけです!」
398話。




