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月光の姫と信望者たち  作者: 山之上 舞花
第3章 魔法と領地ともろもろと
394/444

24-18 意識はあるけど・・・皆様の会話を黙って聞いています

「わかっておるわい。だからあの場にいたものに、箝口令を敷いたじゃろ。ある意味聖王家の者が集まっとったのはよかったのかもしれんな」


おじい様の声に苦いものが混じっている感じです。

先程からエルハルト様と話していますけど、何を言っておられるのかしら?


「状況はわかりました。本当にあなた方は何をなさっていらっしゃったのですか。まさか聖王家に連なる者が女神様の意向を無視するようなことをなさるとは」


レオポルド神官長? 神殿に戻られたのではないですか?


「神殿に戻りましたら、女神様から『すぐに王宮に戻りなさい!』と言われた時には、何事かと思いましたよ。このような事態になると判っていれば、早々に王宮を辞するのではありませんでしたね」


女神様? 女神様もこのことを知っていらっしゃるの?


「女神様が聖王家に対する扱いを変えることになっても、致し方なしですね」


しばらくは重い沈黙が続きました。


「ところでリチャード様、この先の予定はどうなさいますか」


ジーク伯父さまがおじい様に聞きました。


「どうするも何も、変更はないわい」


息を飲む他の方々。


「それは!」

「おまちください。セリアテス様はしばらく動かされないほうがよろしいでしょう」

「そうです。領地に行かれるなど、移動はご負担になられます」

「うるさい!」


おじい様が一喝しました。しばらく伺うような気配がしてから、声のトーンを落としておじい様が話しだしました。


「良いか。そもそもセリアテスの心に負担をかけたのはお前達だろう。ただでさえ記憶を失くして不安に思っていたのに、女神様に『愛し子』と言われてしまった。真面目なセリアテスはわからないながらも、愛し子として相応しくあろうといろいろ考えて、正しくあろうと心がけるようになった。聞かれたことには真摯に考えて、答えを導き出していた。それでもその答えが間違っているのではないかと、気にかけていた。わしらが気づかないうちに、言えずに溜めこんでおったのだろう。ランベルクの怪我は切っ掛けになったのかもしれんが、そこまでセリアテスの心を追い詰めたのはわしを含めたお前らだ」


おじい様は深く息を吐き出しました。


「もともとは体調が少しでも良くなったら領地へ連れて行き、療養をさせるつもりでおったのじゃ。それが女神様に愛し子と言われてしまったので、先延ばしにしていたに過ぎん。こんなことなら、わしが領地に連れて行っておけばと後悔しかないの」

「そうですね、父上のおっしゃる通りです。セリアテス可愛さに、父上に託せなかった私のミスでもあります」


お父様も後悔を滲ませた声で言いました。


「ですが、セリアテス様は我が国の・・・いいえ、世界の希望となられたのです。そんな方を王都から、警護を付けずに出すなど」

「お前は何を言うておる?」


大臣・・・の、どなたかが言った言葉に、おじい様は低い声で言いました。


「えっ、はっ? あの・・・」

「女神様も言うていただろう。セリアテスは子供だと。子供に多大な負担をかけて、倒れるどころか命が危うい事態まで引き起こしたのじゃ。それ相応の罰を覚悟せねばならんじゃろうな」


またも重い沈黙です。


「それほどの負担になっておりましたの?」


王妃様が小さな声で問いました。おじい様はまた深く息を吐き出しました。


「お前たちは・・・セリアテスの身になって考えてみよ。先ほども言ったがの、記憶を失くして困惑しているところに、女神様に『愛し子』と言われたのじゃよ。相応しくあろう、相応しくあろうと、気を張った毎日だったじゃろ。大体の、セリアテスが毎日のように王宮に来る必要はなかったではないか」

「えっ? セリアは王宮に来るのを嫌がっていたのですか」


ローザ様がうろたえる様に言いました。


「嫌がってはおらんかったぞ。ローザ王女と会えることは喜んどった。じゃがの、王宮に来れば人の目に晒されるのじゃ。お前たちは気がついとったか? セリアテスを見る時の自分の目を。そなたは『希望』と言うたな。だがの、そのような目でずっと見られておったらどうじゃ。期待に応えようと無理をし続けるじゃろう。それが積み重なってセリアテスは余裕をなくし、このような事態になったのじゃな」


また、しばらく沈黙が続きました。


「お爺様、それでは領地へと行ったら、もう王都に戻さないおつもりですか」


ローラントお兄様がおじい様に聞きました。


「いや、セリアテスのことじゃ、年が変わる時に神殿に行くと約束をしておったからの。約束を果たすために戻ると言うじゃろ」

「領地ではどうしますか?」


ミルフォードお兄様が聞きました。


「女神様のことも王都のことも、忘れて過ごさせるさ。女神様は子供らしく過ごされることを望んでいるからの。短い期間じゃが、自然と触れ合わせるのもいいかもしれんの」

「それって、森の中で迷子になったりしないかな」

「あー、ありうるかも。最近はなんにでも興味を示すもの。珍しくなくても可愛い花が咲いていたら、そばに寄って行きそうだね」


オスカーお兄様、何の心配をしていますか? ミルフォードお兄様までひどいです。


でも、お二人の言葉で、緊張をはらんだ空気が少し緩んだようです。



393話。

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