24-15 魔法対剣技?
近衛の方と侍女の方の証言に、私はパチパチと瞬きを繰り返しました。ええっと、神々しく? 体が輝いた・・・って、どういうこと?
「ほお~、セリアテスの体が輝いたのか。・・・そうか、そうか。やはり加護によるもののようじゃな」
おじい様は納得したように頷かれました。他の方も頷いていらっしゃいますね。
確かにそれでしたら、分かります。意識して魔法を使ったわけではないので、私には魔法がわからなかったのですから。・・・ですけど、それではどうやってこの加護による魔法を解いたらいいのでしょうか。
「おじい様、どうすればこの魔法が解けますか?」
「そうさのう、セリアテスが『範囲5メートル以内に近づくな』と言うたのなら、『そばに近づくことを許します』か『範囲魔法を解きます』と言えばいいのではないかの」
おじい様の言葉が正解かどうかわかりませんが、試してみることにしましょう。
「ランベルク様に掛けた範囲魔法を解きます」
そう言って、じっとランベルク様のことを見つめました。ランベルク様は神妙な顔をして足を一歩、前に出しました。何かに邪魔をされることもなく前に進めました。また一歩、一歩と歩いて、私のすぐそばまで来たのです。
ほっとした顔をしたランベルク様の目が潤みました。すぐに俯いたのですが床に水滴がポタポタと落ちたのです。
「ありがとうございました」
そう言うと、ランベルク様は床に伏せて、平伏なさったのでした。
さて、移動をしました。今居る場所は騎士団の鍛錬場です。そこにみんなで移動してきました。
が、ここに来る前にひと騒動がありました。
起こしたのは・・・私です。だってね、まさかランベルク様に加護による魔法を使ったとは思わなかったのですもの。
だからランベルク様は、私が泣き止みそうになった時に話しかけていたのですよ。
でも、私の周りにいたクラーラお姉様たちに妨害されて、そのことを告げられなかったのです。
お姉様たちはランベルク様が一定の範囲から動けないことに気がついていたようですが、私に気付かせないようにしていました。
えーと、おじい様たちが気がついたのは、会議室に移動する時だそうです。引っ立てるようにランベルク様を歩かせていたのですが、私との距離が一定以上になると途端に動けなくなったそうなのです。最終的に私が会議室の入口近くにいたら、ランベルク様が会議室に入れなかったことで、なにやら魔法が使われたと思ったそうでした。
見たことも聞いたこともない魔法に、魔術師長の方々は困惑したそうです。オットマー先生でも、魔法の仕組みがわからないと困ったそうでした。
なのでそのことで、かーなーりー、ランベルク様に恐怖を与えたみたいです。だって、会議室までの移動の間に私に近づくと動けなくなったのですよ。会議室の中に私が入って姿が見えくなっても、半径5メートルに近寄れない。もしこの先、魔法の研究を始めることになった時に、私が急にそばに来てランベルク様が弾かれることになったとしたら・・・。うん。研究どころではないですものね。
ランベルク様は他の方に研究する立場を譲る気持ちはないそうなのですが、それでは困りますからこのままフォンテイン国に帰った場合、もう研究機関に参加できなくなってしまったことでしょう。
もうね、泣きながらそれを言われたら・・・私のほうが罪悪感、というのかしら? 申しわけない気持ちになってしまったのよ。
なので、ファラント様との対決はしなくていいと言ったのです。でも、それでは気が済まないとジーク伯父様がおっしゃいまして・・・。
結局、決闘ではなくてランベルク様が放った魔法を、ファラント様が剣で防ぐことになったのです。もちろん安全を考慮してファラント様には魔法障壁を施すことになっています。
ついでに聖王家の魔術師長たちに罰の一つとして、鍛錬場を囲う魔法障壁を張らせることになりました。これはエルハルト様もです。
エルハルト様はおじい様に説教されていました。曰く「お前まで他のやつらに混ざって何をしとるんじゃ!」です。
「伯父上、申しわけございません」
エルハルト様はおじい様に頭を下げて謝罪していました。・・・そっかー、本当に親戚なのですね。覚えていないこともあって、話を聞いたけど実感がなかったのです。
「そうか、そうか。それならば、セリアテスにわしの妹たちを会わせてやらんといかんのう」
私が実感がないことを伝えたら、おじい様が楽しそうに言ったのです。その意味を聞こうとした時に、準備が出来ました。
「これより魔法対剣技による、模擬試合を行う。ランベルク殿、ファラント殿、前へ」
エックハルト騎士団長が言いました。本当はアーマド叔父様が立ち合いをするはずでしたが、公平な行動を取れるかと危ぶまれて、エックハルト様の登場となりました。
緊張した顔で前に出るランベルク様。ファラント様は表情には出ていません。
「それでは構え!」
エックハルト様の言葉に、ランベルク様は詠唱をはじめました。魔力が形となり炎の塊ができていきます。ぐんぐんと大きくなる炎の玉。
「ほお~、すごいのう。さすがに聖王家というべきかの」
「ええ、弟は小さい頃から魔力が膨大でした。それゆえ、成長が危ぶまれたりいたしましたが、大きくなるにつれコントロールを身に着け、それと共に安定致したのです」
「だからといって、甘やかしすぎたのではないのかの」
「それは、返す言葉はございません」
私からお父様を挟んだ隣がおじい様で、その隣がフォンテインの大使です。お二人の会話を耳にしながら、私は対峙する二人をじっと見つめていたのでした。
390話。




